そこに愛はあるんか
ヒトは時として「失言」してしまうことがある。まぁ僕の場合は人より多いかもしれない(笑)。概ね双方がエキサイトしたときに起るのだが、言い過ぎや失言は相手を傷つけ、周囲の他人も嫌な気分にさせる。すぐに気づくのだが、後の祭りだ。
しかし、たまに、全く逆の失言もある。不用意に発してしまうのは一緒だが、相手が大いに喜ぶやつだ。すぐに気づいて訂正しようとするのだが、すぐに言質を取られ「それ採用ね」と言いくるめられる(笑)。
ちょうど外出自粛のピークタイムで、することがなくなり、日頃やらないことなどを、遊び半分でやっていた頃のことだ。これから、土曜日の「晩めし」は俺が作ろうか、などと発言してしまった。すると、ここぞとばかりに言質を取られた。ということは、これからは晩ごはんの用意はしなくていいんだよね、と敵方は確認を急ぐ(笑)。おう、土曜日だけな、などと失言を上塗りする展開に持ち込まれた。敵は手ごわい。
少し前から、台所に立つことが増えていた。まぁ、男の遊びで料理やつまみを作っていたに過ぎない。大した出来ではないはずなのに、やたらと褒められるので、うかつにも信じてしまったのだ。作った料理への評価をもらうのだが、今日は80点とか、アイデアがいいから85点とか、けっこう高得点を連発して、その気になっていたかもしれない。今から思えば、敵方の戦略的な布石だったに違いない(笑)。
こうして、土曜日は「僕の番」になってしまった。しかし、こちら側の解釈とすれば、晩ごはんの準備をしないのなら、外食だっていいわけだ。と勝手な論陣を展開していた。とはいえ現実は厳しい。すでに自粛ムードは緩和してきたのだが、昼はともかく、夜は腰が重い。結局、外食という逃げ道は使えないまま、いまも土曜日の夜の「献立」に苦労している。味には自信がないから、アイデア勝負なのだが、そうそう楽しい発想は出てこない(笑)。
この日は、朝から天気が良かった。秋晴れの空は透き通っていて、気持ちよい土曜日になりそうだ。今日は庭で焚火でもしようか。「やきとり」もいいなぁ。小さなコンロで、串を焼きながら酒を飲むシーンが浮かんだ。秋らしく「焼き芋」も旨そうだ。買い物にでかけ、野菜を見ているうちに、メニューが固まった。今日は「野菜の豚巻き」にしよう。豚巻きのネギは適度に脂をまとって格別だし、エノキは定番だろう。冷蔵庫に眠るピーマンには、あの臭いブルーチーズと大葉を詰め込んでみようか。
日没が早いこともあって、今夜のディナーは16時開始だ(笑)。コンロの火力が弱かったり、炭火は強すぎたり、結局フライパンまで引っ張り出して悪戦苦闘だ。アイデア優先なのは今日も変わらない。結局、チーズと大葉の肉巻きピーマンは高得点をゲットしたが、一番人気は焼き芋だった。見つけた「紅いも」をアルミホイルでくるんで焚火に放り込んだだけだ。なんかフクザツな気分でもある(笑)。
そこに愛はあるんか?、とテレビの中でD地真央が叱るように言い放つ。当初は今野君だけに言っていたセリフなのに、今ではカメラ目線でやられるから、これは「俺に言ってるのかもな」などと思ったりしてしまう(笑)。週1回の晩ごはんだが、何かと考えさせられたりする。僕が料理に夢中で気づかないうちに、残りが冷蔵庫に入ったり、洗い物や後片付けが終わっていたりする。家内のフォローだ。やっぱり晩ごはんは、というより家事はどれも大変なのだ、と感謝することになる。
いや待て待て、もしかすると、これまた戦略的な布石なのかもしれない、やばいぞ(笑)。