美術館へのZ団おっさんぽ
忘年会2020昼のひとコマ
今年の紅葉はきれいだった(すでに過去形だが)。市街地を車で走るとき、フロント越しに見える街路樹や並木道が赤や黄色に染まるのは本当にきれいだと思う。特に今年は「桜」の並木までもが例年になく美しく感じていた。台風が少ないからとか、急に冷え込んだからとか、いろいろ言われているが、身の回りのすぐそばで、こんなに美しい「紅葉」を感じる年は珍しいと思う。もしかすると「弱った心」がそう思わせるのだろうか(笑)。
そんな秋の日の午後のこと、僕たちは金沢駅で待ち合わせて「晩秋のおっさんぽ」を楽しむことにした。今日は夕方まで美術館を巡るつもりだ。そんな柄にもないことを考えるから「バチが当たった」のかもしれない、天候はあいにくの雨だ。でもこればかりは仕方ない。今回は美術館なので「カメラ禁止」が多くて、撮影枚数は少ない。外も雨なので、片手に傘を持って撮影するのは思いのほか大変な作業だった(笑)。分散開催の忘年会2020の、僕たちの会場の開始時刻は18時だ。天候には恵まれないが、それまでの半日を、僕たちらしく遊んでみようと思う。
金沢建築館からダブル坂
最初に向かったのは、寺町にある「谷口吉郎・吉生記念・金沢建築館」だ。金沢出身の建築家・谷口吉郎さんの住まいがあったこの場所に、息子の吉生さんの設計で建築されたのだそうだ。建物そのものが一種の作品ともいえる。
開催していた企画展「日本を超えた日本建築」は見ごたえがあった。門外漢の僕でも知っている著名な日本の建築家たち8人の海外の建築物を、写真やコンペのプレゼン資料、そして精緻な模型などで紹介する企画展だった。ちょっとしびれた(笑)。僕個人的にはSANAA(建築ユニット)のやつが気に入ったのだが、K君は隈研吾さんの作品、I君は坂茂さんの作品だった。見ている3人の推しメンや作品がどれも違っていて面白かった。何となくだが性格が表れてる気がする。
企画展には、ここの設計者、谷口吉生さんの作品として、MoMA(ニューヨーク近代美術館)の資料や模型も展示されていた。圧倒的な迫力だった。世界的なコンペで勝ち抜くというのは、すごいことなのだろう。大満足の建築館を後にして、僕たちは次の鈴木大拙館まで、のんびり散歩することにした。寺町の狭い路地を歩いて、石伐坂(いしきりざか)、いわゆる通称「W坂」の階段を降りる。眼下の犀川や街並みがきれいで、何となく懐かしく思えた。そういえば、犀川大橋のアーチは、あんなにカッコいいんだ、などと見直してみたりした。
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鈴木大拙館から美術の小径
桜橋を渡って少し行った右手に、ピュイダムールという名前の、小さく古い洋菓子屋さんがある。僕の横を歩く「彼」にとって、この店には、ちょっとした因縁があって、そんな大昔の話で盛り上がったりしていた。
鈴木大拙館は、思いのほか人が多かったのだが、やはり静かだった。まぁ哲学者の館だから、騒がしくては意味がないかな(笑)。展示物には余計な解説などがなく「見る者が考える」ように作られているそうだ。哲学は深いのだ(笑)。たしかに、世俗にまみれた、こんな僕でも、水鏡に浮くように見える「思索棟」を前にすると、心洗われる感じがする。思索の部屋の縁台に腰掛けて、水盤越しに外を見ると、景色がまるで額縁に入った絵画のように見える。設計したのは、建築館と同じく、谷口吉生さんだ。前述のニューヨーク近代美術館とはうって変わって、ミニマルで、周囲の自然に溶け込んだ自然体の美しさがあると思う。
外の雨は少し強くなったようだ。3人で外周の回廊を進み、雨で濡れる石畳を歩いて、本多公園へと入っていった。ここから「美術の小径」を歩き、「歴史の小径」の狭い階段を右手に登ると、森の出口に目的地が見える。散歩の最後は、できたばかりの「国立工芸館」を楽しもうと思う。
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できたての国立工芸館
おさらいのように書くが、ここの正式名称は「東京国立近代美術館工芸館」というらしい。東京の北の丸公園にある近代美術館が「本館」で、金沢のここは「工芸館」として収蔵品の一部が移転されたのだそうだ。まぁ地元では名誉館長の中田ヒデのことばかり報道されるから、何が展示されるのか分からないのが本音のところだった。ちなみに東京の本館の設計者は谷口吉郎さんだ。何かと金沢に縁があるんだな。
この日の企画展は「素材・わざ・風土」の視点で、工芸の世界を観るというテーマらしい。入り口近くのブースには、大きなタッチパネルの案内板があって作品の情報を予習できたり、ダウンロードしたアプリで解説をしてくれたり、まぁ色々と現代風なのだ。
工芸の細かなジャンル(陶磁器、ガラス、漆工、木工、竹工、染織、人形、金工)ごとに、ブースが設置され、作品が展示されている。ここの収蔵品は明治以降のものばかりなのだそうだ。中でも、金沢出身の人間国宝、蒔絵師の村田権六さんのブースは圧巻だった。そこに村田さんの「仕事場」が再現され、使っていた道具なども展示されている。30分ほどの映像で観る「村田さんの手元の作業」には、ミクロの世界を操る神の手の凄みすら感じた。
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さあ、外はすっかり暗くなった。楽しく萌えた「おっさんぽ」は、ここで終了だ。そろそろ飲み会の時間だから、僕たちは待ち合わせの柿木畠に向かった。今夜の会場は「蕎麦屋」だ。今度は4人で軽く飲んで、最後に蕎麦で締める、そんな粋な大人の時間を目指しているのだが・・・さて、どうなるかな(笑)。
●最後に恒例の動画バージョン
金沢建築館 kanazawa-museum.jp/architecture/
鈴木大拙館 kanazawa-museum.jp/daisetz/
国立工芸館 momat.go.jp/cg/