どんぐりと蟹クリーム
コロナ系を除けば、去年は「熊の被害」のニュースが多かった。何年か前から見聞きするようになったが、去年は重傷者のニュースへとエスカレートした感じがする。ざっくり言えば「どんぐり」などの果実、つまりエサの不足が原因らしい。そういえば何年か前から畑を荒らす「猪のニュース」もあったな。鶴来とか山の方に向かうときの車の中では、いつもそんな話題に終始した。結局、ドローンでの追跡はうまくいったのだろうか(笑)。とはいえ、そんな地元ニュースは、猪から、熊へと主役が替わり、そして11月には解禁日を迎えた「蟹ニュース」の影に隠れていった。
最近の地元のニュースは、野菜のブランド化とか、特別な果物とか、地物ずわい蟹を高級ブランドにしようとするPRのようだ。たしかに猪肉や熊肉のブランド化は無理だろうけど(笑)。食いしん坊の僕にとっては冬は旨いもんだらけだ。でもやっぱりジビエより海産物かな。一般人には蟹のメニューの方が、そそられるのは間違いない。そんなわが家にとっても、蟹はもちろん「香箱蟹」の方だ。
そんな時期に外食に出かけると、和食に限らず、どんなレストランでも「蟹のメニュー」を売り始める。コースを頼めば、まず間違いなく蟹の一品が組み込まれている。特に香箱は、おでん屋さんや蕎麦うどん店でも、あれこれ始まる。長く生きてきたから、いろんな場所で食べてきた。その昔、片町の人気の中華料理店で食べた「香箱のもずくあんかけ」が絶品で、思い出すと今でも食べたくなるほど旨かった。
イタリアンには、そもそも蟹のクリームパスタ、というメニューがある。一年中売っているメニューだから、蟹は「わたり蟹」を使うのだが、その濃厚なトマトクリームのソースが人気だ。そんなイタリアンでも、この時期になると香箱のクリームパスタが期間限定で始まる。経験的な言い方しかできないが、この香箱パスタは、当たりはずれが多発するメニューの典型でもある。ある時は、とても臭い香箱パスタを食べてしまい失敗したこともある(笑)。高いメニューなので落胆も大きい。年に1度、この時期しか食べないわけだから、失敗したくないのが本音のところだ。だからいつも、注文しようかどうか迷う。
僕が好きなイタリアンの店がある。ここは安くて旨い。そして、ここの蟹のクリームパスタ(わたり蟹)は特に絶品だ。とても旨いので、ある年の年末オードブルを買うとき、このソースを無理に注文したことがある。もちろん通常は売ってないのだが、結局、そのソースと乾麺を一緒に包んでもらった。一方、この店で「香箱パスタ」を食べた記憶はない。きっと売価が高くなるから、やってないのだと思う。だから、このソースを買ってきて、自宅で香箱の内子や蟹身を追加すれば、それはそれは旨くて贅沢な香箱のパスタになるはずだ、だぶんそうだと勝手に想像している(笑)。
ある日のこと、この店のSNSに「どんぐり募集中」と書いてあるのを見つけた。詳しくは分からないが、来店客にも「どんぐり集め」を依頼して、それを「森の熊さん」に届けるボランティア活動のようだ。困っている熊さんを助けたいのだろう。
実は、このレストランの店名は、イタリア語で「熊」の意味だと思う。それはオーナー夫婦の苗字の一文字でもある。名前つながりのボランティアなのだろうか。でもまぁ、香箱より熊さんを大事にするのは、とてもいいことだと思う(笑)。今度行ったときには「どんぐり」の話題を振って、褒めてあげよう。でも香箱は再び禁漁期間に入ってしまったから、あのパスタソースを使っての実験は、来年に持ち越しだな。