みんながハマってる
あの日は、月に一度のGさんとの打ち合わせの日だから、金曜日だったと思う。この日は二人の反省会で、短い時間だったが、けっこう濃密な議論をしていた。そんな打ち合わせが終わった帰り道、いつものように野々市新庄の大型書店Mに向かった。そこで文庫本や雑誌を物色するのが、いつものパターンだ。
なぜかこの日の駐車場は、思いのほか混んでいて空きがない。時刻がいつもより早いからだろうか。誘導看板に沿って進んだら、遠くの第4駐車場に停めるハメになった。本を探すだけなのに、けっこう歩かなければならない(笑)。
入り口から見ると、右手と左手に大きな通路があって奥まで続いている。とても広い書店だ。手前には新刊、そして文庫本、その奥には専門書や児童書、マンガなどのコーナーもあって、店内にはたくさんの本棚が並んでいる。まず先に、左手の雑誌コーナーに向かった。月刊誌が出そろっている頃なので、物色しながらの立ち読みが楽しい。そして、文庫本のコーナーへ向かったときに、異変に気付いた。
本棚と本棚のあいだの通路に、いつもよりたくさんの人がいるのだ。これでは、本を探すのが面倒だなぁ・・・。と思ったら、どうやら、その人たちはみんな、レジに向かって会計待ちをしているのだ。それは異常な長さの行列になっていた(笑)。レジカウンターでは、3~4か所の窓口にスタッフがいるのだが、それでも追いつかないほどの大行列のようだ(笑)。もちろん僕は、本を買うのはあきらめた。
自宅に戻って、ニュースで知った。あれは鬼滅の刃の最終話?最終巻?に殺到した人の列で、野々市のことではなく全国的な現象だったようだ。そういえば、当日の日経新聞に、全15段(1ページ全部)を使っての鬼滅キャラクターの広告が掲載されていたのを思い出した。1億冊突破?の感謝らしくて、なんと4ページもある。ニュースによると、それは日経新聞だけではなく、全国紙の各紙ごとに、違うキャラクターの広告が掲載されているのだそうだ。全国のファンたちはコンビニに殺到して、新聞を買い集めているらしい。たまげた。
さっそく、手元の広告をスマホで撮影して、LINEで孫たちに送ることにした。孫たちはファンだから喜ぶだろうと思った。すると、即座にコメントが返ってきた。でも返信は、孫からではなく母親たち(つまり娘たち)からだ。なにやら、コメントには「熱」が込められている(笑)。もちろん速攻で本屋に並んでマンガは買ったよ、とか、ママチャリを飛ばして、コンビニをハシゴして新聞を集めたんだ、などと言っている(笑)。どうやら、孫というより母親たちの方がコアなファンなのかもしれない。まぁオタクってやつだ。テレビのニュースの話だと思っていたが、とても身近な出来事だったわけだ。まぁ僕たちジジババ以外は、みんなハマっているのだ。
最終話は、何度読んでも涙が出るのだそうだ。そう言えば、劇場版の映画も、何度も観に行くものらしい。IMAXなんとかっていう高品質のデカいスクリーン?のことも言ってたっけ(笑)。次は4DX?とか言っている。シートが動いたり風や水が出る?、まるで遊園地だなぁ。こんなファンのパワーによって、年末には、千と千尋の興行記録を簡単に抜いてしまったらしい。とはいえ、再びの外出自粛なので、いろいろな我慢が始まることだろう。
ちなみに、わが家の録画リストに、ある日の「とくだね」(フジテレビ)の録画がある。孫がテレビの取材映像に出演?するはず、と、娘から事前に聞いた馬鹿なジジババが記念にと録画したやつだ。劇場版の封切りの当日、新宿のシネコン?の前で、キャラクターを模した服装を全身にまとった孫たちに、取材カメラが殺到したようだ。そうなのだ、ハマっているのは、むしろコスチュームを作ったり買ったりする母親たち、ということなんだ。行くほどの興味もなかったのだが、こりゃぁ劇場版は観ておいた方がよさそうだな(笑)。テレビの特番を観たくらいでは、このノリについていけそうもないぞ。今度は孫ではなく、テンションの高い娘たちの顔が浮かんだ。でも、ちと気が重い。