結婚式の二次会会場
Z団の新年会2022
当時のその店は、あのホテルの最上階にあった。ホテルのバーラウンジというやつだ。料理のことは覚えていないが、ピアノやジャズなんかの生演奏も行われていて、まだ20代の僕たちは、それなりのおしゃれをして使っていたと思う。窓際の席からは金沢駅前の夜景が見下ろせるデートスポット(表現が古いな)だったはずだ。でも僕たちがいつも座っていたのは、グループ用のブース席のほうだ。夜景の記憶はあまりない。
たしか背もたれの高いシートに囲まれた、円形(楕円かもしれない)の席で、10~12人くらいは楽に座れる席だったと思う。場合によっては、そこに規定人数より多くの友人たちを詰め込んで、楽しい時間を過ごしていた。それは、仲間たちの結婚式の2次会の思い出だ。仲間の結婚式が終わった夜、みんなが集まる2次会だけは「ここに集合」と決まっていた。だから仲間の人数分だけ、ここで何回もやったことになる。
残念だが、その店はもうない。というより、あのホテルそのものがなくなってしまった。そんな40年ほど昔のことを言い出したのは、仲間のY萩だった。こんどのZ団の新年会の会場を駅前で探すつもりだという会話になったとき、急に思い出したようだ。彼は自分のときの2次会の思い出を話し始めた。でもね、仲間の記憶はみんな同じなんだ。会場が同じだから、もう、どの記憶が誰の2次会だったのか分からない(笑)。ワイワイ騒いで、仲間の晴れの日を祝っていたなぁ、そんなことを僕も思い出していた。
この3年ほど、通称Z団の仲間が揃う忘年会は土曜日だったから、仕事のY萩は出席できない。だからこんどの新年会は、彼の希望や事情を優先することにしていた。ある意味で「主役」なのだ。水曜日だったのもそんな理由だ。今後のコロナのこともあるから、会えるときに会っておかないと(笑)。
幹事にとって会場選びというやつには、けっこう、それなりの気苦労がある。全員が満場一致で喜びそうな店ってのは、この世に存在しないからだ。だから、むしろ誰それさんの好きな店、の方がはるかに選びやすいものだ。なので、彼の思い出話に乗ることにした(笑)。新年会(の2次会)はどこかのホテルのBARで一杯やろう。特に彼の希望だ、という訳ではないのだが、昔の仲間たちと久しぶりのBARってのも悪くない。そもそも静かな場所だから、騒げるわけではないのだが、そんな大人時間もたまにはいいだろう。
ちなみにY萩は、富大のボウリング部だった。本人の当初の希望は、仲間の一人の「達人・某」とボウリング対決がしたい、ということだったのだが、うまく実現しなかった。なので昼の部はゴルフだ、と言っていたのだが、結局あの雪で中止したらしい(笑)。
夜の1次会は、駅前の居酒屋に集まった。以前に「昼の駐車場での宴会」という無茶なアイデアを実現してくれた店だ。遅れて参加するメンバーもいるから、そんな気軽な居酒屋が良かった。
この晩、予約のテーブルに案内されて驚いた。なぜか、例の「利き酒会のセット」がテーブルに並んでいる(笑)。話題の「酒米」の違いを楽しむ提案で、すでに6種類の日本酒が用意されていた。なんだこれ?とは思ったが、そんな店長の「たくらみ」に、素直に乗ることにした。もちろん面白いからだ。
好きなワインや地酒を持ち込んでも良いというので、甘えて2本持ち込んだのだが、乾杯から、いきなり利き酒が始まる訳だから、酔いが回るのも速かった。紅ずわいの酒蒸しが大鉢で出てきたり、能登ふぐの竜田揚げや、ふぐブツのおでんも楽しかった。この新年会のための特別料理のようだ。料理長にも感謝だなぁ。
それなりに飲んで食べたあと、ホテルN航金沢のBARへと繰り出した。当初は、Hセントリック14階のルーフトップバーを計画していたが、この時期は金土日だけの営業らしく、断念したのだった。実は、オープンエアの、つまり屋外のテラス席で酒が飲みたかった。まぁ、あの雪だから、どのみちクローズだったに違いないのだが(笑)。
さて、ハナシはN航29階のBAR「夜間飛行」だ。この4文字を見ると、僕たちの世代なら、あの深夜放送「ジェットストリーム」の、城達也さんのナレーションや、ミスターロンリーのストリングスなんかを思い出す(笑)。すると、この店がコンパクトだけど雰囲気がいいBARに思えてくる。案内された窓辺の席からは、眼下に金沢の夜景がパノラマのように広がる。雪をうっすらとまとった冬の夜景は素晴らしいのだが、座っているのはオッサンばかりで色気はない(笑)。
軽く飲むはずだったが、バーテンダーの手元には、いつしか僕たちが飲んだウイスキーの酒瓶が次々に並んでいった。まぁこれもZ団らしい光景なのだろう。
おそらくもう、仲間の結婚式ってことはありえない笑。だからホテルのBARでのその2次会はやってこない。とはいえ、金婚式ってのもあるから、そのときはまた、ここで再集合するのも悪くないかな。最短で75歳のときかぁ。常識的に考えれば無理な年齢かもしれない。むしろ誰かの「偲ぶ会」の方が現実的だろうか(笑)。まぁZ団の企みは、いつも常識とは違うところから始まるから、この企画、僕は結構マジなんだけどね。
追記
実は、この日の朝、東京27期の新年会の延期が発表された。幹事役の彼女はテレビの報道を横目に、きっとヤキモキしていたことだろう。準備の手間も大変だし、何より延期や中止の連絡は、ひときわ気が重くなるはずだ。お世話ありがとう。
予定日があと1~2週間ほど遅かったら、僕たちの新年会も中止していたかもしれない。そんなことを仲間が感じたのかどうかは不明だが、この晩、彼らから感謝の言葉をもらった。ちょっと照れるが素直に嬉しかった。