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2017年07月09日

修学旅行にまつわる小話「贈る言葉」

人間は嫌な記憶が消せるらしい。消そうと思えば消せるらしい。
当初、僕には「修学旅行の記憶」があまりなかった。どれも断片的な記憶で、つながりがないものばかりだった。第1回の同窓会を立ち上げようとしたとき、その壁にぶち当たった。楽しい思い出がなかったからだ。だが、友人たちと話すうちに、点と点がつながり、映像や匂いや味覚まで戻っていった。
大事な友人I本くんと初めて出会ったのは修学旅行の雨の宿だったし、後年、ある小説に影響を受けたのも、会津の記憶が戻っていたからだ。そして最近、もうひとつ先生から贈られたコトバを思い出した。
修学旅行の後、学校謹慎の処分を受け、日記を書いて毎日担任のT田先生に提出していた。毎日のことだったので比較的自由に身の回りの出来事を書いたと思う。先生は僕の日記に赤ペンでコメント返信を繰り返した。後日、進路相談の際にT田先生は妙なことを言い始めた。「キミは文系が向いている」というのだ。すでに理系へ進むことを決めていた時期だったから「キミの日記には表現センスがある」「たくさん本を読みなさい」というT田先生のコメントの的確さや重さに気付くことはなかった。
企画デザイン、コピー、ビジュアル・・・その後はシゴトとして「表現力」に立ち向かう人生だ。今になって、このホームページの採点と赤ペン添削を先生につけてもらいたい気もする。しかしこの原稿のきっかけが「謹慎」なのは、僕らしくて笑える話だ。当時と違って今は本をよく読んでますよ、先生。

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