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2023年03月03日

左車線をゆっくり走る日

北海道の若い女性たちは、真冬の凍結した危ない歩道を、ハイヒールを履いて、けっこう早足で歩く笑。東京キー局のテレビディレクターやカメラマンは、面白がってそんなシーンを全国ネットに載せるから、ご存じの方も多いと思う。
それはレアケースではなく、日常的なことだと認識している。ずいぶん昔だが、冬の札幌に通っていた僕の記憶にも、そんなシーンがたくさん残っている。それは車の運転も同じで、みんな見事な凍結路対応のテクニックを持っていた。それは、まぁまぁ雪国育ちの僕も驚く光景ばかりだった。自然の猛威は人間にはどうしようもないから、人間はそれに順応するのだ笑。
僕たちのような年齢の人には共通すると思うが、冬の凍結路でヒヤリとしたことは多いだろう。僕も、大事故にはならなかったが、スピンやスリップで「その一歩手前」は何度も経験した。真冬の8号線が雪で止まった時、まったく動けないまま、橋の上で3~4時間過ごしたこともある笑。
そんな「痛い目にあった経験」を重ねていくと、それなりに備えるようになる。いつもの通勤路の路面状況の想像は概ね当たるようになるし、複数の経路を使い分けたり(融雪設備の有無とか渋滞のことかな)、時間調整(まぁ早めるだけだけど)もするようになる。経験値だって、立派な順応なんだと思う。
とはいえ、人間にとっては「慣れてしまう」ことが一番危ない。毎年の雪の「降り始め」のころは慎重になるし、大雪なら大雪で(経験を思い出して)上手に対応する。でも、しばらくして、例えば「降って、でもすぐ溶けて」みたいな日が続くと、この緊張が途切れてしまうのだ。この日も、そんな感じだった。

しばらく雪は積もらなかった。天候は前日から崩れたが、積もるような感じもなかった。なのに朝になって、周囲が真っ白になっていることに驚いた。とはいえ積雪量はさほどでもない、などと少し慢心しながら車を走らせた。どうやら慢心していたのは僕だけではなく、融雪装置が作動してない道が多い(バルブを閉じたままなのかな)。屋根に雪を乗せたマイカーばかりだし、なにより道も混んでいる。自転車に乗るおじさんが狭い車道を平気で走ったりするから、追い越せずにイライラしたりする。こういう日の通勤路はやばい、と直感した。
案の定、往来の少ない4車線の道では事故車に遭遇した。おそらく圧雪状況でのスピンだ。分離帯の反対車線にはパトカーがいて、バンパーが外れた状態の、つまり正面衝突したような車が2台、転がっていた。反対車線の事故車を目で追ったわずかな間に、僕の前の車が急にブレーキを踏むからヒヤリとして、僕も強めにブレーキを踏んだ。今から思えば、事故で散乱した部品が反対車線まで飛んでいたのかもしれない。
しばらく走ると、今度は左のトラックが急に右車線(僕のすぐ前)に割り込んできた。路面は圧雪シャーベットなので、ちょっと緊張しながらのブレーキを踏む笑。どうやら、左の歩道に乗り上げたまま動けなくなった軽自動車が車線をふさいでいるからだった。誰もが慢心してるのかもしれない。
道に融雪はないのだが、天気はいいし、乗っているの四駆のSUV(家内の愛車)だから大丈夫そうなのだが、この先は左車線をゆっくり走った方がよさそうだ。怖いのはむしろ人間の方だ笑。

この日は引き続き午後も雪が降った。駐車場で雪を降ろして、仕事からの帰路はあえて8号線を選んだ。僕みたいな思考は誰もが同じなのか、8号線は大渋滞で、ゆっくりゆっくり進むしかない。夜になって、再び雪が降り始めたのだ。
御経塚の手前あたりだった。小さな警告音と同時に、メーター画面が「空気圧低下」という警告サインに切り替わった。ん?。と同時にテレビ画面にも「空気圧が低下したから、ゆっくり停車してね」と別のイラスト表示が出る笑。どちらも見たことのない画面だ。
すわ、パンクか?、とも思ったが、運転には違和感は全くなかったし、車も水平を保ったままフツーに走ってる。最近のクルマの警告は大げさなのかもなぁ。そんな、のん気な感じだったが、たまたま近くに正規ディーラーがあるから、そこに持ち込むことにした。
大正解だった。後輪がパンクしていたのだ笑。さすがは正規ディーラーだ。営業時間は終わっているのに、熱いコーヒーを出してくれたり、進捗を逐一教えてくれた。対応もさすがだ。待つ間のショールームには新車がずらりと並んでいて、ほぼEV車ばかりでちょっとそそられる笑。少しすると、点検している様子やパンク箇所、その修理プロセスの写真画像をタブレットで丁寧に説明してくれる。後輪のタイヤはペチャンコなのに僕は気づかなかったようだ。もしかすると、あの事故現場で何かを踏んでいたのかもしれない。丁寧な対応に礼を言いながら自宅へ向かった。
路面はすでに真っ白で、先行車の轍(わだち)も分からないほどのツルツル路面になっていた。今回は車の安全性能に助けられたのだが、老人が故障に気付かないまま(思い込みで)放置する可能性ってのがあるんだなぁ。パンク修理の直後だから、やっぱり左車線をゆっくり走ることにした笑。

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