ホテルの時間「3通のアンケート」
僕の夏休みのときのハナシだ。長めの旅から帰ると、いきなり現実が待っていた笑。それはたぶん誰もが同じだ。僕の場合は溜まった仕事だし、家内にとっては荷物の整理や、さっそく食事の支度などが始まる。翌日から仕事に向かうのは彼女も同じだ。
たった数日遊んできただけなのだが、僕のPC側のメールボックスには、ため息が出るほど多くの着信表示がある笑。不在日数からすれば当然なのだが、どっと疲れを感じてしまう。まずは開いて優先順位をつけよう、まぁこれが現実だ。
大昔の典型的な老夫婦なら、渋いお茶を飲みながら「やっぱりわが家が一番だな」などとつぶやくのかもしれないが、今はそんなことはない。現代の旅は、そもそも非日常の楽しさとか解放感を求める訳だから、もう少し居たかったなぁ、帰りたくないなぁ、という感じだ。
翌日、普通に戻ったメールボックスに、宿泊したホテルからのメールが届いていた。まぁサンキューメールなのだが、そこに「お客様アンケート」の依頼が書いてある。アンケート用の専用サイトへアクセスして、設問に答えていくものだ。まぁどこでもやっているあれだ。
今回利用した施設(その運営会社)の場合は、けっこう詳細な設問が並んでいて、読んでチェックボックスを選ぶだけでも、それなりに時間がかかる。僕は、自分のシゴトへの参考になるという理由で、マジに立ち向かう笑。ちなみに、利用客にとっては「アンケート」でも、先方にとっては「顧客満足度調査」という、れっきとしたマーケティング手法だ。
この日は、3通のアンケートに回答した。今回の旅で泊まったホテル3か所は、どれも同じ運営会社の施設だからだ。実はこの運営会社は、その顧客満足度マーケティングの優秀さが有名で、業界内では参考にするケースもよくあるほどだ(まぁ教科書みたいなことかな)。
僕の体験で言えば、もう20年以上前から継続しているから、おそらく膨大なデータや事例が、社内に蓄積されているはずだ。そして実際に再度利用する際に、その見事な出来や改善に驚くことになる。
たしかに素人目で見ても、ここのマーケティングは巧みだ。行ってみたい場所、見てみたい景色、食べてみたい商品、やってみたいアクティビティー・・・。しかも施設の立地、つまり「根ざす地域」の魅力を十二分に引き出している。
一方で、それなりの価額の部屋に泊まっても、冷蔵庫の中は空っぽだし、アメニティーは最低限のものしかない。どこかの外資系ホテルの無料アメニティーの豪華さを支持する層からは批判が絶えないかもしれないが、調査に基づけば、大多数の満足には関係ない、という判断だと思う。
それとは真逆のこと(魅力的なモノやコト)に手間とコストを割く。たとえば24時間、誰でも使えるカフェやライブラリー(まぁ図書館とか茶の間ルームかな)、館内での体験イベント、近隣の絶景、近所の飲食施設の紹介や持ち込みの推奨・・・、まぁ上げるときりがない。
今回は三世代ファミリー客として利用したのだが、若い家族にとっては、コインランドリーや子供向けのサービスや企画がこんなに支持されるとは知らなかった。ちょっと特徴的なビュッフェを、朝も夜も上手に使いこなす様を見ていると、もう旅の常識が変わったんだと、つくづく思う。
たとえば下の写真は「キッズスタジオ」といって、子どもたちが自ら作ったオリジナルスイーツをパパやママと一緒に食べて楽しむものだ。パティシエ姿のキッズたちがとてもかわいい。
さて、アンケートのことだが、チェックインからアウトまでのサービスやアクティビティー、客室細部や館内施設の評価を求めるものだ。まぁ5段階評価でチェックを入れる。アプローチも設問文章もとても丁寧なので、回答者は真面目に回答することになる、そんなことも上手だ。
アンケートの設問は、まぁ一種のノウハウだから、ここでは詳しく書けない。ただ言えることは、世の中の「口コミ」にあるような「悪いこと」を見つけて修正する、ということ以上に「何を良いと評価されているのか」の方に重点がある気がする。まぁ僕も利用客として回答していくと「褒めたくなること」がたくさん出てくる笑。
そしてもうひとつは「どんな人」に良い(悪い)と言われたのか、という点かもしれない。これがポイントだと思う。単に年齢や性別ではないのは間違いない。まぁそんな設問もある。なるほどなぁ、と感心している笑。
とかく、オジサンオバサンは、悪いことを指摘したくなるのかもしれない。回答内容を使って、それを改善するのは当たり前だと思う。まぁそれはその通りなのだが、そんな欠点を改善しても、それが「満足する」「感動する」ことにはならない。顧客満足というのは「バッテンが少ないこと」とは違うのだ。この会社はそれが分かっているのだと思う。
さて、こんな僕は、この翌月も小さな旅に出た。泊まったのは東京なのだが、これまた同じブランドのカジュアルなホテルで、前回の東京のときもここを使っている。つまりリピート客だ。そんなに魅力的なのか?、と問われると返事に困るのだが、僕たち老夫婦の気軽な旅には、ちょうどいいサイズ、ちょうどいい空気感なんだと思う。
アンケート項目は大切なことばかりなのだが、一番大事なのは、利用客が満足して、こうやってリピートするということかもしれない。つまりたぶん、今の僕のお気に入りなんだと思う。ごくフツーなんだけどなぁ笑。