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2025年05月16日

おいしいイタリアン「琉球ガストロノミヤ」

春の沖縄ホテル滞在記その5
今夜のディナーの予約まで、まだ少し時間がある。せっかくだからプールサイドで一杯やろうか、そんなハナシになった。
リゾートだから、お洒落なカップルなら「アペリティフを楽しもうか」などと言いながらスパークリングや白ワインを片手にカッコつけるのだろうが、僕たちにはそんなセリフもシーンも、もはや似合わないかな。
結局、注文したのはビールとジントニックだし、く~っと唸って飲んだら、できれば柿ピーが欲しいなぁ、などと思ってしまう笑。

さて、定刻になった。妙に重厚なドア(ホントに重いのだ)を開けて入ったのは、真っ白なテーブルクロスのファインダイニングだった。とはいえ、ドレスコードもなく、テーブルのセッティングなどはシンプルで少しカジュアルな感じかな。スタッフの対応も気さくで明るい。
きちんと折られたナフキンの上に、今日のお品書きがあるのだが、その冒頭にシェフからのメッセージが書いてあった。沖縄に広く息づく医食同源の教え「クスイムン」から着想を得た「琉球ガストロノミヤ」をテーマにしていて、春のメニューは「貝と海藻」なのだそうだ。
沖縄特有の食材をイタリア各地の調理法によって、健やかな美に導く独創的なコース料理に仕上げる・・・そんなコンセプトらしい。なるほど、けっこうマジなんだね。ありがちな沖縄イタリアンとは違うようだ。がぜん興味が湧いた。
ということで、今回はこの晩の料理とワインのハナシを書こうと思う。でもまぁ僕の料理のハナシは面倒臭くなるんだけど・・・笑。

小さな前菜/アーサと海ブドウ・クルマエビの冷前菜/テビチのコッパ・ディ・マイアーレ/サザエのリングイネ/カカオのパッパルデッレ猪のラグー/ミーバイのカルトッチョ/牛肉とシャコ貝・アーサのパン粉焼き/ジーマミとタンカンのパンナコッタ/サトウキビとパイナップルのババ・・・今夜はこんなストーリーらしい。
沖縄の食材とイタリアの調理法の組合せって、こんなことなんだね。そして順番は、海→山→海→山みたいな気もする。それにしても、ところどころにお手上げの単語がある、なんだ~これ?笑。
嬉しかったのはワインペアリングのコースが用意してあったことだ。渡されたリストを見てびっくりした。なんとグラス8杯の構成だった、こんなに多いのは見たことがない。
コースの主な料理は8品だから、それに個別に合わせるとすれば、ワインも8杯になるということらしい。ここのソムリエは几帳面なのかな?、ちょっと細かくやりすぎてる気もするが、いろいろ飲める訳だから嬉しいに決まっている。でも途中で、間違いなく酔いそうだ笑。もちろん家内は選ばないから、嬉しがるのは僕だけだ。

最初のグラスは「泡」、なんと大好きなフランチャコルタだった笑。イタリアを代表するスプマンテ(泡)だ。久しぶりだからちょっと嬉しい。一緒に出てきたアミューズ(和食なら付きだし)は軽く揚げた小さな沖縄野菜のスナックだった。浜辺のサンゴや貝殻みたいでかわいい。
さっそく乾杯して、今夜のディナーがスタートした。
お品書きの最初にある「小さな前菜」は、商品名とは裏腹に「大きなカゴ」で出てきた。今度は畑のイメージだろうか。紅芋のフリットとか、ヤギのサルシッシャ、ナーベラーのカポナータ、グルクンの何とか・・・、とても面白いし美味しい。
次の冷前菜はグラスにきれいに盛り付けられているのだが、これをグチャグチャに混ぜて食べる。これが美味しいのだ。口の中で色んな食材を探して、沖縄の海を味わう感じかな。
沖縄の食材名には馴染みがないやつもある。名前を聞いてもピンとこないのだが、説明を聞いてから食べると「なるほど~分かる分かる」そんな楽しさがある。ちなみにナーベラーは「へちま」、アーサは「あおさ海苔」だ。
▲▼前半の料理5皿(タップして右へ)

温前菜はテーブルの真横で仕上げる料理だった。ジジジと音を立てて美味しい香りが湧きたっていく。コッパ・ディ・マイアーレというのは豚肉のテリーヌ(のようなやつ)を指すらしい。今夜のやつはテビチを使うってことかな。焼いた表面がめちゃ旨い。
そしてパスタが2品つづく。まず1皿目はサザエを存分に楽しむリングイネだった。味はジェノベーゼだ。サザエの貝からそそぐソースは、海の命をいただくような演出かな。
2皿目のパスタは肉だ。こっちは濃厚な猪のラグーソースで、極広の麺と絡んで食べ応えがある。僕にとっては、今夜の1番かな。
魚料理のメインはミーバイの包み焼(蒸し焼き)だった。ミーバイは沖縄の高級魚だ。赤青黒といろんな種類があるらしいが美味しい白身魚だ。皿に乗せられた焼きたての大きな包み紙がどーんと運ばれてきた(カルトッチョ=包み焼)。
それを、サイドテーブルで切り開くと、昆布や島野菜と一緒に立派なミーバイが出てくる。さらにそれらをきれいに皿に盛りつけてサーブしてくれる。そろそろ酔いも回ってきたのだが、このシチリアの白ワインにぴったりなのだ。旨~い。
▲▼後半の料理5皿(タップして右へ)

ラストを締めくくる一皿は、牛肉とシャコ貝のグリルだった。家内は、もうお腹一杯だからと、自分のステーキを僕の皿に乗せてくる笑。僕ももう限界に近いのだが、美味しいから残さず食べ切った。
ペアリングだから、ワインは、次の料理の前にサーブされる。ワインの説明は、そのまま次の料理の説明につながる。そんな上手な構成なのだ。ダメなのは、楽しいから全部飲んでしまうことだ。そりゃぁ、こんな僕でも酔っぱらうよなぁ、もう半ばベロベロだ。
で、最後のデザートへと進んでいく(実は8杯目はデザートワインだ笑)。デザートはパンナコッタに始まり、珈琲の小菓子まで3種類だ。お腹いっぱいのはずの家内は、平気な顔で平らげていた。

酔い覚ましに、夜の散策路をゆっくり歩いて部屋に戻ることにした。照明は最低限だから道は薄暗い。千鳥足の僕は足元をみるのだが、家内は上を見上げて歩いて行く。「見てみ、星がきれいだよ」、満天の星空というやつだった。オリオン座の三ツ星まではっきり見えるし、反対側には北斗七星も輝いていた。
そうだった。沖縄できれいな星空を観たい、そんなことを毎回言ってたように思う。来たことがあっても星空に満足したことは一度もない。そんな小さな夢がようやく叶った夜になった。ホントにきれいなのだ。

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