旅館でのため息「ふふで、ふふふ」
秋の日光ぶらり旅その4
この宿は日本に7軒あるらしい。滞在してみた感想で言えば、とてもいい宿だった。概ね満足できたから、別の旅の機会に、その地に同じ宿があれば優先して使いたくなると思う。まぁそんな大事な旅が何回もある訳ではないのだが、ここは優雅な大人旅の宿ということかな。
雨の日光山内から戻ったとき、エントランスで迎えてくれた彼女は、車から降りた僕たちの「濡れた折畳み傘」を、いきなりわしづかみするように受け取った。何かと思ったら、預かって乾かして部屋まで持ってきてくれるらしい。なるほど、それは少し嬉しいかな。
別の若い男性スタッフが、泊る部屋の中までエスコートしてくれる。細かく丁寧なガイダンスだ。先導する彼はたびたび立ち止まって館内を説明する。ロビーがある建物から外へ出ると素敵な中庭で、その外廊下を右へ進むと3階建ての客室棟だ。反対の左手の外廊下は緑の木々に向かうようになっていて、やや下るように進むと露天風呂(大浴場)らしい。
外観や建物は現代的ですっきりしている。まぁクールな感じだ。その一方で客室の内装はシックで、一部に大正ロマン的なデザインを施してあるそうだ。大正ロマン?と聞くと少し違和感があるのだが、そういえばこの敷地は元御用邸の跡地の一部で、主に利用していたのは大正天皇だったらしいから、そんなモチーフになったのかもしれないな。
僕たちの客室は2階なのだが、窓から見えるのは日光の森の景色だ。そしてドアから外廊下に出ると、さっきの中庭が見下ろせる。そんな空間デザインはとてもよくできていた。そういえば部屋にある大きな風呂も天然かけ流しの温泉で、ちょっと贅沢な感じだ。
冷蔵庫の中にはカットフルーツの盛り合わせが入っていた。ウエルカムスイーツということだが、まぁやりすぎだ、こんなにたくさんは食べれない笑。
さて時刻は16時になったから、エスコートくんおすすめのフリードリンクが始まる。さっそくエントランス棟のラウンジへ向かうことにした。
ラウンジのテーブルやソファーはちょっと独特だ。すべての椅子の背もたれが異常に高い。ラウンジなのにプライベート感を保っているのかな。隣にも利用客がいるのだが、まったく気にならない。
庭側のテーブルからの眺めもよさそうだが、中央の暖炉を囲むソファー席に惹かれて座ることにした。大谷石(栃木で採掘される石材)のデザイン暖炉だ。まぁ薪ではなくエタノールの炎だから、インテリアかな。
お疲れの僕たちはソファー席にどさりと座って、暖炉で揺らぐ小さな炎を見ながら、おすすめのシャンパンを飲んでしまった(旨いからお替りした笑)。まぁ何杯飲んでも構わないのだが、そろそろ夕食の時刻だ。先にひと風呂浴びてこようと思う。
●この宿の館内写真アルバム5枚(タップして右へ)
夕食のテーブル席は、2人用だが珍しく横並びのレイアウトだった。形はカウンターと同じだが、全て個室だ。だから料理はカウンターの真ん前から提供される。なかなか面白い。
料理は、どれもアイデア豊かで、器も盛り付けも、味も秀逸だった。嬉しかったのはワインペアリング(コースに合わせた4グラス)が何種類も用意されていたことだ。今回は和食だから地酒がワングラスあるやつを選んだ。これで食事が一段と楽しくなった。
ちょっと面白かったのは、お品書きが「日光推し」ばっかりだったことかな。それがイヤなのではなく、素材名が日光〇〇というやつばかりで、思わず笑ってしまった。ちなみにデザート3種の名前も「三種の神器」だった。そんなに無理しなくてもねぇ笑。
良いレストランの共通項は、料理を提供するときの商品説明が丁寧なことだ。この晩の若い彼女は、それはもう一所懸命に説明してくれた。僕たちとの会話も笑顔でこなすから、とても楽しい時間が過ごせた。ご褒美にメダルをかけてあげたい笑。
●夕食の写真アルバム5枚(タップして右へ)
翌朝はまだ薄暗い時刻に眼がさめた。窓の外は朝もやの森なのだが、遠くの山々がすっきり見える。もしかすると今日は天気が良くなるかもしれない。
誰もいない大浴場を独り占めしてのんびりしていた。露天風呂は夜と違ってさわやかな風を感じる。幸せな朝ってことかな。ちょっと気分も良くなって、ふふふと笑みがこぼれる。まぁ「ふふで、ふふふ」だ笑。
さぁ~てと、湯船で立ち上がって背伸びしながら大きく深呼吸する。風呂上りに敷地を散歩してみようか。温泉宿の朝はこれがたまらない。
朝食は、一番奥の広い個室に案内された。アレコレ並んだ小さな料理もそうだが、炊き立ての土鍋ごはんが美味しい。昨日の夕食もそうだったが、商品説明はとても楽しい。今朝の彼は、卵の話に霧降高原の美しさを添えてくれた。
近くにそんな高原もあるのかぁ、まったく知らない別の日光の楽しさを教えてくれたのだ。また来てもいいかも、そんな無謀な考えも浮かんでしまった笑。
●朝の写真アルバム6枚(タップして右へ)
かけ流しの露天風呂はあるが、ここは温泉旅館ではない。機能は整っていて快適だが、ホテルでもない。旅館とホテルの「いいとこどり」を目指したような宿ということかな、ふふふ。