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2021年06月04日

今宵の月のように

朝から”あまたつ”が力説しているので、途中からテレビに目が行った。今夜は「スーパームーンの皆既月食」が見れるらしい。なんだそれ、よく分からない。
スーパーって言うくらいだから大きいやつかな。ああ、あれのことか、ときどき、どこかで見た「大きくて赤い月」のことのようだ。どこかで見た、とはいってもテレビやネットの画像のことだろう。昔は天体観察好きだった僕だが、年齢を重ねるとともに、そんな「少年の心」を失ってしまっている。
晴れた夜空にきれいな月を見上げることはある。いつも気付くのは僕ではなく横を歩く家内の方だ。形が「真ん丸」のように見えると「もしかしたら今日は満月なのかなぁ」と話したりすることもある。まぁ、このニュースは、そんな僕にとっては縁遠い話題になってしまった。

その日の午後、取引先との会議の休憩時間のことだ。珈琲を僕に渡してくれた女性社員から「O島さんは今夜のスーパームーン、見るんですか?」と声を掛けられた。「そ、そうだね、もちろん見るよ」と、半分社交辞令のような返事を無難に返すと、横の男性社員も「皆既月食は8時ぐらいからですよね」などと会話に加わってくる。そこから会話が続くのだが、何やらトレンド情報並みの扱いだ。
僕が、なかば見栄を張って会話しているのに比べて、若い彼らは自然に会話している。あまたつのお陰で話題に乗ることができたが、どうやら今夜は、僕も真面目に夜空を見上げなければならない。でないと来週の彼らとの会話に困ることになる(笑)。
そうか、7時前には月が欠け始めるらしい。僕はスマホでこっそり調べてみた。19分間?の皆既月食をうまく見れるのかどうか分からないが、とにかく「スーパームーン」は、見ておかないとね。暗くなり始めるころには外に出てみよう。

上の写真は、その晩に僕が撮った唯一のスーパームーンだ(笑)。正しくはスーパームーンが雲に隠れて、ぼわ~っと見えるピンボケ写真、ということかな。スーパームーンは赤く大きく見えるらしいが、そんな感じは分からない。スマホだからカメラの性能もあるが、僕の腕ではこれが限界だ。で、結局その晩は、厚い雲が切れることはなかった。もちろん皆既月食も無理だった。
その後、何日かのあいだ「大きな赤い月」の残像を狙い続けることにした。子供の頃の天体小僧が目を覚ましたのかもしれない。しかし、すでに満月ではないし赤いわけでもないはずだ。とはいえ東の空は、いつも雲が邪魔をする。
4日目の深夜、ふと思い立って庭に出た。もしかしたらと見上げた夜空の雲の切れ目に、ようやく月を見つけた。わずか4日ほどなのに、形はもう満月とは程遠い。もちろん赤くはないし、濁った白で輝きはない。そんなスーパームーンの残像の写真を撮ってみた。まぁ残像というほど美しくはないから、せいぜい残骸、という感じかな(笑)。天体小僧の追跡はこれで終了だ。もちろん読者に見せれるような写真じゃない。

「くだらねえとぉ、つぶやいてぇ、醒めたつらして歩くぅ、いつの日かぁ、輝くだろぅ・・・」なぜかエレファントカシマシの「今宵の月のように」の歌詞が浮かぶ。聴く者によっては、歌詞に出てくる「俺」に「自分の今」を重ねてしまうのかもしれない。長い人生で、あちこち寄り道する間に、心の目というやつは、濁ったり曇ったりしてしまうものかもしれない。満月ではなくても構わないから、もっときれいな月が観たくなった。

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