散歩の足は「あかいくつ」で
冬の横浜散歩その5
ホテルの客室の窓から港を眺めていると、そこに「赤いバス」が止まった。港のバス停なのだ。乗り込むのは、さっきロビーで出会った若いご家族に似ている気がする。あのよちよち歩きのお子さんと観光に出かけるのだろうか。
このバスの名前は「あかいくつ」という。2005年に運航開始した横浜観光スポット周遊バスの愛称らしい。童謡「赤い靴」の舞台は横浜なのだそうだ。それが名前の由来なんだとか。
僕たちも今日は、これに乗ってみようと思う。散歩の必需品はスニーカーだから「あかいくつ」はその替りみたいなことかな。
もうクリスマスだというのに、市街の街路樹(イチョウ並木)は見事に色づいていて、県庁前あたりの古いビル街を華やかに彩っている。今年は遅いそうだが、横浜の紅葉(黄葉)は、いつもこの時期なのだそうだ。
横浜は、誰もが知っていて、一度は来たことがある街の代表格かもしれない。僕にもいくつかの記憶がある。10年前のあの日とか、20年前ほど前のあの日とか、ちゃんと泊った日のことは案外覚えている。さらに昔の、もう記憶も定かでないやつも・・・いくつかある。
このバスは、いわば観光用だから、乗客に優しい雰囲気がある。価格も1回220円だし、運転手さんが(まるでバスガイドのように)車窓の有名スポットをミニ解説してくれたりする。
この日の車内は、なにやらクリスマス仕様のようだ。つまりリースやオーナメントが飾られている。この飾り付けをしてくれたのは、市内の小学生たちなのだそうだ。だから手作りで、プロっぽくないのが味わいってことかな笑。
周遊バスだから車窓の景色は面白い。バスはのんびり中華街を抜け、港の見える丘公園へと向かっていく。丘へと登る坂道はとても狭くて、すれ違うのも難しそうだ。でもこのバスは上手に走っていく。
最初に下車したのは山下公園あたりだった。実は、ずいぶん大回りでやってきたことになる。さて、ここから今日の散歩を始めようと思う。
海側の公園やマリンタワーは来たことがあるはずだが、な~んにも覚えていない。でも港に浮かぶ「氷川丸」はさすがに素晴らしい姿だった。そしてあの「ホテルニューグランド」へ向かった。プリンアラモードやドリアを日本に初めて紹介した古~い老舗ホテルだ。
すごい行列でレストランには入れなかったが、館内や見事な中庭を見学して、散歩の1回戦は終了だ。
▲県庁前~港の見える丘~山下公園(アルバム)
再びあかいくつに乗って、今度は馬車道へ向かおうと思う。そのルートには、あの大さん橋や赤レンガ倉庫もある。どこも人気スポットばかりだから、このバスは結構便利なんだなぁ。
リニューアルした横浜大さん橋は、そもそも国際客船ターミナルだ。昔は「メリケン波止場」と呼ばれていた埠頭だし、童謡・赤い靴で女の子が船に乗っていった場所はここらしい。
桟橋という名前だが、まるでなだらかな丘のような感じかな。施設が地下に埋まっていて、地上部分が広いウッドデッキのような、つまり、とても先鋭的なデザインの施設だった。まぁ、とてもかっこいい。
▼馬車道~桜木町~ハンマーヘッド(アルバム)
そしてラストは、大昔の記憶の痕跡を探しながら、馬車道商店街を歩いた。あの「ガス灯」で有名なストリートだ。街はきれいに変貌していて昔の面影は全く見つからなかった。あの有名な喫茶店「馬車道十番館」は健在なのだが、ここに僕の記憶はない。
結局、桜木町まで足を伸ばし、出発地の横浜ハンマーヘッドへ戻ることにした。これで2回戦も終了だ。ちょっと疲れたから、そろそろランチでも食べて、帰路につく時間だ。
このレストランは、テラス席が有名らしい。料理スタイルは「カジュアル・アメリカン」かな。店内でクラフトビールを製造していて、それもウリらしい。まぁクラフトビールの本場はアメリカだからね。僕は大きなハンバーガーとダブルIPAを楽しむことにした。
この店も典型的だが、横浜には、海が似合うレストランが多いなぁ、そんな印象だ。若いカップルに似合いそうなイメージもあるが、シニアも楽しく遊べる。それはこの店だけではなく、横浜という街の魅力のひとつだと思う。
また10年経ったら来たくなるのだろうか。ふとそんなことを考えた。元気でいられれば、と条件が付いてしまうのがちょっと口惜しいかな。