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2025年04月04日

フィクションのはずなんだけど

この小説は上下2冊の文庫本だった。事前情報などはまったく知らないまま、初めて手に取った小説だ。まぁいつものように表紙の帯広告にまんまとつられて選んだ。一種のジャケ買いということだ。

その帯広告には「ダ・ヴィンチ・コード」を凌ぐ衝撃の名著、と書いてある。ふ~ん、そうなのかぁ。僕にとっては興味を持つのに十分だった。ダンブラウン著作の一連のシリーズ作品は、原作も映画もともに面白くて、当時ハマっていたからだ。
カトリックにおける異説とか聖杯伝説とか、いわばキリスト教世界のタブーに触れた作品で、当時は(ヒットした分だけ)その作品への批判や論争が巻き起こった。僕の興味もむしろそんな「知らない世界」の方にあった気がする。
さて、本作のハナシだ。タイトルにあるアマテラスは日本神話のそれだし、伊勢神宮内宮に祀られている皇祖神だから皇室とのゆかりも強い。小説とはいえその設定がとても気になってしまった。
しかも最初のページをめくったあたりに「この小説における神名、神社、祭祀、宝物、文献、伝承、遺物、遺跡に関する記述は、すべて事実にもとづいている」と書かれている。これはダ・ヴィンチ・コードとほぼ同じ手法だから、おいおいタブーのハナシかよ、と思いながら読み始めた。

ちなみに冒頭には主人公をはじめとした登場人物の一覧表が挟まれているのだが、その前頁は日本神話の神々の系図(イザナギ・イザナミから始まるアレ)だったりする。まぁこのページ(神様)も登場人物と言えるのかもしれない。
そしてプロローグは大嘗祭(だいじょうさい)の描写と解説だ。新天皇が即位する際にしか行われない特別な宮中祭祀らしく、静かにそして厳かに描写される。いきなり皇室がでてきたから、まだ本編は始まらないのに、ちょっと「ぞくっ」ときた。
本編は一種の歴史ミステリーかな。ニューヨーク在住の日本人の青年が主人公だ。ある日、父親(長い歴史を持つ神社の宮司)が一人のユダヤ教徒と一緒に殺害される事件が起こる。残されたメモ(暗号)の謎を解くために彼は日本へ向かう。
犯人側の暗躍をはじめ、たくさんの苦難があるのだが、手掛かりを求めて日本の神社を巡り、数々の謎を解明していくストーリーかな。
ユダヤと日本の神事の妙な共通点とか、DNAハプログループのことだとか、GHQの陰謀とか、上巻に出てくる広範囲のプロットだけで、もうお腹いっぱいになる笑。フィクションだと分かっていても心がちょっと騒いでしまう。

そして下巻では謎が順に解明していく。終盤にかけて日本神話の謎、アマテラスをはじめとする神々の謎にまつわるハナシがたくさん出てくる。そもそも日本神話に興味はないから、僕にとっては、とても難解だった。
文章を読むのが精一杯で、謎の解明手順は全く理解不能、まぁそんな感じだった。神の分身(荒魂・和魂・・・)?、神の同時存在の法則?、神様の諱(いみな)?・・・何だそれ。作者には申し訳ないのだが、小説(エンターテイメント)としては全く楽しめないまま読了した笑。
ところがその後、作者のあとがきを読んで、ちょっと視点が変わった。実は作者はプロの小説家ではなく、いわゆる研究者なのだ。彼が研究し、たどり着いた「説」を世に示したくなり、その方法論として、学術論文ではなく「小説」を選んだようだ。
そういえば、あの岸〇首相が夏休みに読んだ本として紹介されたようだから、それなりの反響があったのかもしれない。あぁ、TVドラマでも神様が次々に登場して活躍するやつもあったなぁ笑。

僕は常々思うのですが・・・(映像の中の久能整くんが持論を話し始めるシーンをパクるみたいだが)日本人はなぜ神社へ向かうのだろう。こんな僕だって、初詣もそうだし人生の節目では神社(僕の場合は白山比咩神社)へと、さも当たり前に行くのだが、その根拠を尋ねられると答えに困る。
傍目からは信仰のように見える行為だが、本人にはさほどの感覚はない。ただ知る限りの礼儀は守るし、感謝の気持ちやささやかな願いは欠かさない。ただただ、ありきたりの、当たり前のことを、自然にやっている。なぜなんだろうなぁ。
本作を読むと様々なことが疑問として浮かぶ。そもそも日本神話は単なる伝承やお伽話ではない気もする。国づくりのための国策として編さんされたのではないか、そんなことさえ考えてしまう。各地の神社は人々へ何かを浸透させるための場所ってことかな。

しばらくして、この小説を再び最初から読みなおした(2度読みするのは珍しい)。ストーリーはともかく、日本の有名な神社とその祭祀、そして伝承、日ユ道祖論とアミシャブ、古事記(学術研究としての日本神話)、神社と秦氏(はたうじ)・・・要するに本作に出てきた「諸説」のことを、今度はあれこれ調べながら読んでいく。
知的好奇心を掻き立てられたのかな。一時的だが猛烈に興味を持ってしまったのだ。まさかこんな年齢になって、日本神話や神社のことに興味を持つとは思わなかった。
ちなみに白山比咩神社に祀られている神様は誰なのか、何柱なのかも知らなかったから調べてみることにした。あぁそうなのかと知らないことが分かるのはあんがい楽しい。そして興味のエネルギーはどんどん強くなって、知識の沼にはまっていくんだと思う笑。
そんな僕は、もう一度伊勢神宮へ行きたくなったし、出雲大社や諏訪大社、そして物語のキーになる丹後の籠(この)神社を訪ねてみたくなった笑。でも度を超すのはよくないから、熱が冷めた頃、軽いレジャー気分の旅がいいかな。

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