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2025年06月06日

ムササビに会いにやってきた

ぶらり軽井沢散歩(後編)
今夜参加するネイチャーツアーは「空飛ぶムササビウオッチング」という名称だった。文字通り、森の中で暮らすムササビが空を飛ぶ(正しくは滑空する)ところを観察するツアーだ。場所は軽井沢野鳥の森(中軽井沢の山の中)、この日の開始時刻は17:45だった。
時刻が小刻みなのはムササビの習性によるものらしい。ムササビは日没からほぼ1時間後に、巣箱から外へ出て活動を始める。つまり当日の「日没時刻」がポイントだからだ。野生動物だって、あんがい規則正しく生きてるんだね。
GW期間とはいえ、この晩の気温は5℃、薄いダウンを着てきたが結構寒い。軽井沢の森の中はそんな感じだ。

ムササビは日本固有のリス科の哺乳類で体長は80センチほど、つまりイメージよりずいぶん大きな動物だった。そう聞くと誰もが驚くのは、しばしばモモンガ(体調20~30センチほど)と混同されるかららしい。
空を滑空して移動するのは同じだが、ムササビは「空飛ぶ座布団」と呼ばれ、その滑空距離も100mくらい。対してモモンガは「空飛ぶハンカチ」で滑空距離も短いらしい。僕は小学生の頃、近くの野田山で見たことがあるのだが、それはおそらくモモンガだったようだ。
ツアーの開始時刻からの30分は、スクリーンを使って、そんな細かなガイダンスが行われる。今夜のネイチャーガイドは自称「おーちゃん」。その呼び名の由来は、オーストラリア人で、大阪に8年住んでいて、本名がオー〇〇というから、らしい。ネイティブな英語はもちろんだが、なかなかおもろい外人さんガイドだ。
森の中にはムササビ専用の巣箱が何か所か設置されていて、そこにはカメラが仕込んであり、普段はムササビの生態を観察しているそうだ。巣箱は幹の上の方にあるのだが、カメラのお陰で、今日はどの巣箱にいるのかが分かる、そんな仕組みだ。

ここから森の中に入っていって、今日の巣箱の前に集合だ。ガイドは木の近くにタブレットPCをセットする。巣箱の中で丸まったムササビが、ゴロゴロ動いている様子を画面で見せてくれるのだ。どうやらオスらしい。
ちょうど日没から1時間ほど、まず巣箱から顔だけを出して、周囲をキョロキョロし始める。天敵の有無を確認しているのだ。ガイダンス通り、全員が音を殺して見守る。音だけではなく、スマホのライトはもちろん、動いたり、指を立てることさえ禁止だ。
安全を確認すると、ムササビ君は木のてっぺんあたりまでスルスル登っていく。ここからは僕たちも動いていいから、みんな立ち上がり、高い木のてっぺんを見上げる。
ムササビの姿は枝や幹で見づらくなるのだが、ガイドのおーちゃんが専用保護ライト(赤い光のライト)をムササビに当ててくれるから、速い動きについていける。
そして「さぁ飛びます」という合図と同時に、ムササビ君の滑空が始まる。お~、とみんなが小声で歓声を上げる。僕も音を出さないように拍手を送ったりする。

別の樹に跳んだムササビ君は、再びてっぺんまで登り、また滑空を披露してくれた。この日は、そんな滑空が3回連続で見学できた。とても運がいいらしい。
さらに幸運は重なって、クラブハウス近くの巣箱も観察できた。ここに居るのはメスのムササビちゃんで、巣箱には子供が2匹いるらしい。
そうこうするうちに、彼女も顔を出してキョロキョロし始める。そして上まで登り、今度は彼女が飛んだ。しかも長~い距離だった。どうやら今晩の僕たちはとってもラッキーだったようだ。
最後に、おーちゃんから「ムササビウオッチャー証明書」を受け取ってツアーは終了した。ちょうど2時間ほどの楽しいツアーだった。おーちゃんの締めの言葉は、このツアーが面白かったこと、そして野生動物を大事にすること、そのふたつを、お友達に伝えてね~、そんなことだった。
僕たちは、たぶん今夜の最年長だが、とても感動的な楽しさだった。だから誰かに話をしたくてしょうがない笑。

ピッキオ軽井沢自然体験アクティビティー picchio.co.jp
森の入り口には「ピッキオ」という看板が出ていて、その階段を上がるとケラ池がある。冬はスケート場になる場所だ。受付はそこのクラブハウスのような建物だ。てっきり施設の名前だと思っていたが(まぁ間違いという訳でもないが)、ピッキオは特定非営利法人の名称だった。
この森をフィールドにして、ツキノワグマなど野生動物の保護や人間との共生を目的に活動している集団だ。そのスタッフたちが、ここでいくつもの野外アクティビティーを実施しながら研究や保護活動をしている。

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