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2021年08月27日

有名人のコンサートがあると

ある日のこと、六本木の某ホテルのレストランで朝食を食べていた。ここには素敵な屋外のテラス席もある。広いオープンデッキは緑にあふれていて、白のパラソルが並び、開放的で人気のエリアだ。
この日は、このテラスの一角に、いわゆる有名人のご夫婦がいた。男性の方は「仮面ノリダー」の主人公だったあの某氏(古いヒントでゴメン)で、女性は、その奥さん(あの女優さん)だ。さすがに美人女優さんは、さりげない笑顔が素敵で、輝いているように見えた(笑)。僕の地元の片田舎なら、周囲はちょっとざわつくのだろうが、さすがに六本木だ、有名人がいようがいまいが、周囲の温度が変わることはない。彼らは軽やかにコーヒーを楽しみ談笑していた。かっこいいなぁ。
日経新聞「私の履歴書」に、ホリプロ創業者の某氏が登場していた。もちろん一人の起業家が悪戦苦闘してきたビジネスストーリーが書かれているのだが、舞台となる「ゲーノーカイの裏話」は、どれも面白かった。で、今回は何のハナシかと言えば、そんなゲーノージンなど「有名人」たちとの、ある日のニアミスの話を書いてみようと思う。もちろん大昔の話ばかりだ。

ソートー若い頃、まだ片町で深夜まで働いていた頃のことだ。その店は、当時の片町にしては健全な店で、けっこうな繁盛店だった。むろん酒も売っていたが、老若男女が焼き魚とか刺身に、ごはん味噌汁を付けて食事するような店だった。まぁ一番の特徴は朝4時まで営業していたことだろうか。ある意味で特殊な立地だから、深夜になると客層が一変した。片町で働く人たちがシゴト帰りに食事に立ち寄ったり、深夜まで遊ぶツワモノ(特殊な業界人や遊び人たち)などが集まる時間帯だ。
接客を担当するホール従業員の大半は、学生アルバイトだった。ホールにはいつも7~8人の大学生が、素人っぽく働いていた。それが健全な雰囲気の理由だと思う。学生たちは週に2~3日しかシフトインしないのだが、みんな、おなか一杯「まかない」を食べていたっけ。
3年生の後期になると、学業や卒論、就活が忙しくなりシフトから外れていくのが普通のことだった。ところが、ある日だけ「この日に働かせてもらえませんか」と、打診されることがたびたびあった。しかも深夜帯の希望だ。それは「コンサートの日」の特徴だった。金沢でコンサートがある日には、特定の芸能人やミュージシャンたちが、しばしば深夜に来店するからだ。そのアーティストの大ファンだったりすると、どうしても会いたくなるようだ。

健全な店を自認していたから、偉い人だってペーペーだって、お客様はビョードーだ(笑)。だから芸能人とはいえ「特別扱いしない」というルールを徹底していた。従業員がファンであれば、あえて接客させない、だからサインをもらうのもご法度、特別な料理も断るし、席の希望にも応えない。ある意味で無視して、一般の人と全く同じに楽しんでもらうのだ。実際のところ、コンサートだけでなく、ホントにたくさんの有名人が来店していたのだが、そんな感じだったから、ほとんど記憶にない。だから思い出すのは面倒くさい人のことばかりだ(笑)。
関白宣言を歌う某さんの場合、しゃべりが上手で楽しい人なのだが、言葉巧みにメニューにないものを頼んでくる。確か半熟卵のハムエッグを作ってくれと言われ、僕は意固地になって断った記憶がある(笑)。ひょうきん族や漫才ブームの頃の芸人某は、少し酔ったふりをしながら盛んにボケやツッコミをしてくるのだが、こっちが反応しないままだったので静かに帰っていった(笑)。
当初は従業員たちしか知らなかったのに、そのうちコンサートの日は芸能人が来ると知られるようになり、追っかけ?のファンなどは、店の前で網を張ったり、出待ちするようになった。なかには店内に乱入してサインを求めるファンもいて、その対応も大変だった記憶がある。そういえば、取り巻きの(もしかするとファンの)女性たちを引き連れて、行儀悪くしているグループもあった。その女性の中には当時の有名女優(変装していた)もいたから、今なら文春砲の餌食だったはずだ。

もちろん素晴らしい人も多くいた。そんな人は存在感があって独特のオーラを放つ、だからカリスマというのだろう。春夏秋冬を熱唱し、コンサートではギターを投げるという彼は、イメージとは違い、とても紳士的でカッコよかった。
大学に7年通って、ようやく卒業が決まったバイトのMくんが、どうしても出勤して彼の接客をしたいと熱望するので、卒業記念にと対応させたことがある。珍しく僕は、そのカリスマに事情を話してサインをしてもらった。渡したそのサインを胸に抱いたMくんは泣いていた(笑)。
熱烈なファンの心理はいまだに分からないが、彼にとっては宝物のような出来事なのだろう。その芸能人は、いまでは立派な好々爺なのだが、あの時はカリスマアーティストとして、惚れ惚れするほど魅力的だった。最近は、雑誌記者のカメラも心配だろうし、〇〇警察のスマホも気になることだろう。金沢に来た有名人の彼らは、どこで楽しむのだろうか。そう考えると大変な職業なんだね。

その店を離れてからは、もちろん有名人との接点はない。とはいえ後年、冒頭のエピソードのように、それなりのホテルや旅館に滞在すると、そこで有名人とニアミスすることが、しばしばある。最後にそんなオマケのお話。
10数年前のある日、有名ホテルのエレベーターホールで、病気で辞任した元首相に出会った(1回目の辞任のあとだ)。取り巻きもSPも連れずに、彼は一人エレベーターを待っていた。なんとなく寂しそうに思えた(笑)。お大事に、と声を掛けるべきだったのかな。
某人気女優が八重山の離島のリゾートホテルでのお忍び旅行をスクープされた。後日、それは僕が泊まったホテルで、しかも翌日のことと知り、なぜかとても残念に思ったことがある。知ってれば、もう一泊したのになぁ。
ある夜の遅い時刻、地元温泉の、その旅館の大浴場にNYヤンキースのM選手がいた、デカかった、と甥っ子が言うので、翌朝、長い朝風呂をして待ち伏せしてみたのだが、彼とは会えなかった(笑)。有名人は、大浴場に入りたくても、深夜しかダメなのか、かわいそうに思った。
いまなら世の中の人は、ほぼ全員がマスク姿になったから、もう目立たなくて便利なのかなぁ、まぁ別の世界のどうでもいい話だな。

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