ソウルフードと森のティーソーダ
福井にも「片町」がある。やっぱり夜の街だ(笑)。その店は、この「福井の片町」にあるのだが、どちらかと言えば昼の店だ。店の名前はYーロッパ軒・総本店、福井のソウルフード「ソースカツ丼」の老舗であり「聖地」のような店だ。
11時に開店するというので、自宅を10時に出ることにした。僕の自宅からは北陸道を使えば1時間ほどのドライブ距離なのだが、駐車場に手間取って、着いたのは11時30分だった。やっぱりか、すでに行列ができていた。1階から3階まであって100席ほどの大型店だから、簡単に入れるかも、と思っていたが甘くなかった。どうやら開店直後に満席になったようだ、まぁ人気は今も変わらないのだろう。
10人ほどだった行列は、あっという間に増えていく。そして待つこと30分、ようやく入ることができた。しかも懐かしい1階の席だ。ギューギュー詰めだったはずのテーブルは半分くらいに間引きされていて、世相を感じることになる。これじゃぁすぐに満席になってしまうだろう。
30年ぶりにここのソースカツ丼をパクついた。食べたのはスペシャル丼という凄いやつで、トンカツ、メンチカツ、海老カツの3種が乗ったカツ丼だ。どんぶりのふたからカツが溢れている。久しぶりのソースの味は、切れがあってとても旨い。スペシャル丼だから、トンカツは1枚しか付いていないのだが、昔のように2枚、3枚と食べたくなってしまう。
ちなみに、ここではメンチカツ丼のことを「パリ丼」と呼ぶ。ヨーロッパとかパリとか、そんなベタな名前が老舗感になっている気もする。
店を出て、近くの足羽川の方へと軽く散歩してみた。川辺は見事な桜並木で、川の向こうに足羽山の緑が広がっている。開花亭という老舗料亭の敷地に、あの隈研吾さん設計の店が建っていた。このあたりの通りは整備されてきれいなのだが、この日の気温は35度で、散歩は早々に引き上げた。散歩するなら足羽山(あすわやま)だな。徒歩を車に変更して、足羽山の人気のカフェを目指すことにした。
とはいえ足羽山のことは、ほわんとした知識しかない。桜の名所で、福井市民の憩いの場で、山頂?あたりに公園や動物園があるとか、人気のカフェや飲食店が何軒かあって、今は若者たちの人気スポットだとか、そんな薄っぺらい知識だった。金沢で言えば卯辰山かなぁ、そんなイメージしかない。
ホントにこの道で間違いないのかぁ?、とカーナビを疑るほどの狭い道(何やら参道のようにも見える)を登っていった。幸いにも対向車はないから何とかなったが、着いたのはカフェではなく、山の途中の古くて狭い駐車場だった。ここが行き止まりらしい。ナビを信じて失敗したのかもしれない(笑)。木々に囲まれた坂道の遊歩道は静かで、緑が気持ちいい。途中の公的な施設?の職員の人にカフェへの道を訪ねて、再び炎天下の散歩が始まった。目指すのは「足羽〇デッキ」という人気のカフェだ。
そのカフェは、山頂近くの立派な神社?への階段の横にあった。ずいぶん古い建物のように見えるが、若い人たちが次々にやってくる。店内に入ると楽しい空間だった。山の斜面をうまく使っていて、3つのフロアやテラス席がある。あいにく、というより当たり前なのだろうが、満席らしい。炎天下の外のテラス席なら空いていると言うので、その炎天下を選ぶことにした(笑)。早く座って冷たいものが飲みたい。
誰もいないテラス席は、眺望がよいというより、むしろ森の緑の中にあって、気持ちいい。ときおり森を吹き抜ける風を感じて、ちょっと気分良くなる席だった。で、一番驚いたのは、メニューが絶品だったことだ。ピスタチオクリームが絶妙なパンケーキも、桃の香りと食感が見事なティーソーダも美味しかった。やっぱりドライブ旅の楽しみは旨いもん、なのだ。
帰り道は、登ってきた遊歩道を逆戻りする。途中の展望台から福井の市街地が見下ろせて、けっこう高い山なんだ、などと驚いていた。この遊歩道は「あじさいの道」という名前で、このエリアの様々な施設を回遊できるようになっているようだ。桜の時期もそうだろうが、先月くらいに来ていたら、きっときれいな「あじさい」を見れたのかもしれない。
さて、4時間ほどのドライブ旅はここで終了だ。若い頃ならもう一軒、福井名物の「辛味大根のおろし蕎麦」なんかも食べれたのかもしれないが、もうそんな胃袋は持っていない。蕎麦はまた別の機会だ。
ちなみに、あとで調べたら足羽山への山道は、やっぱり間違いだった。ちゃんとした道路が別にあった(笑)。いつか仲間とのドライブ旅が再開できたら、今度は間違えずに登れそうだ。そういえば、相棒のGさんは無類のトンカツ党のはずだ。パンケーキやティーソーダはともかく、ソースカツ丼には喰いつきそうな気がする(笑)。
このカフェ asuwayamadeck.jp