本の時間「好きなものは音楽、嫌いなものは渋滞」
最近、もしかすると僕はハレ男なのかも、と思うようになった。もちろんそんなことは偶然の産物なのだが、数えたら、今年の旅は例外なく天候に恵まれている。だから、雨の旅を想像すると少しだけ気が重くなる。事故とか災害とか「もしかしたら」を考えたりする・・・笑。
そんなことを妄想するのは、この小説2冊を読んだからだ。つまり、雨が降ると「千葉」がやってくる気がするのだ。小説の設定では、彼が人間世界に現れるときは、必ず雨になる。
本編の主人公は「死神」で、その名前は千葉という。調査部の一員として人間世界に派遣され、対象者を1週間にわたって観察して、「可」または「見送り」の判断をする。それが彼の任務だ。彼はごく自然に対象者の前にあらわれ、するりと寄り添いながら対象者と一緒に1週間を過ごす。
「可」となれば対象者は(予定通り)8日目に不慮の死を迎えるし「見送り」となれば天寿を全うするらしい。描かれるのはそんな1週間の日々だ。
下の写真の右側は短編集(実は古い作品)で、左側は長編(今回の新作)だ。千葉が判定する対象者は常に1人だが、その周囲に様々な人物が登場するから、短編集の各章も、今回の長編も、変化のある人間ドラマでとても楽しい。
死をめぐるストーリーなのに面白いのは、死神・千葉のキャラクターによるところが大きい。
人間界に出るときは、年齢や容姿が「情報部」によって仕事しやすいように設定されるらしい。ようするに一般人と何ら変わらない外見なのだ。だから対象者や周囲の人は、ちょっと変なやつくらいにしか思わないようだ。
概ねクールなのだが、もちろん人間ではないから、言うこともやることも「ズレて」いて、独特の愛すべき存在になっている。作者はほんとに上手だと思う。
彼は、ミュージックをこよなく愛している。仕事の合間にCDショップに寄って視聴に没頭する。でもこれは彼に限ったことではなく、死神に共通する特徴らしい。
一方で、渋滞は人間が生んだ最も醜いものと思っていて、大嫌いらしい。まぁこれも死神共通なのかな。僕も渋滞は嫌いだけどね。
今回は「設定」のことばかり書いているようにみえるだろうが、こんなことは本編の面白さのほんの一部で、ネタバレというより、むしろ死神の取説だと思って読んでいく方が分かりやすいと思う。
具体的なことを書くのはルール違反だが、物語の中には僕が大好きになったシーンがある。あの千葉がママチャリを漕いで淡々と走るシーンだ。何のことだか分からないと思うが、本作を、そして千葉を好きになってしまう要素が詰まっている。
2冊ともに、とても面白いから、興味を持ったなら是非読んでみてほしい。久々のおすすめ本だ。
さて僕は今度の週末に、ふたたび旅に出る予定だ。天気予報は晴マークが続いているし、なにより僕の身近にそんな変なやつらはまだ現れない。だから観察は始まっていない(と思う笑)。なので安心して旅に出ようと思う。ようするに僕はまだ不慮の事故で死ぬことはないようだ笑。でもまぁ1週間に限ってのことだけど・・・。