旅館での溜息「有名な温泉地で」
昭和オジサンの温泉はオシゴトの場だった
ババンバ・バンバンバン、で始まるドリフの歌が浮かんだ。でもタイトルが出てこなくて、何て歌だっけ?などと一瞬考えたりする(ジジイのアルアル)。ググったら歌詞が出てきた。タイトルは「いい湯だな(ビバノン・ロック)」というらしい。
歌詞には登別、草津、白浜、別府の4か所の温泉が出てくる。お化け番組の曲だから、どこも全国に知れ渡った温泉地ばかりだ。
ちなみに「いい湯だな」というのは、そもそもデュークエイセス(懐かしい)の楽曲で、僕が覚えているのは、ドリフのカバー版の方らしい。だから、出てくる温泉地は原曲と違うようだ。
原曲は、草津、伊香保、万座、水上になっているらしい。つまりこの歌は、そもそも「群馬県のご当地ソング」なのだそうだ。なるほど、そういうことか。などと、こんなどうでもいいことに時間を使ってしまう笑。

北は北海道から南は鹿児島まで、全国に名前がとどろくような有名な温泉地がたくさんある。まぁ現代なら「昭和の有名温泉」は古臭いと軽視されて、どこかの秘湯とか絶景とか、癒しや快適性などの「個性」が注目されるかなぁ。
テレビや雑誌を観ていて「そういえば、ここは行ったことがあるなぁ」と思い出す有名温泉地もあるのだが、それは概ね仕事がらみの、つまり何かの会合とか、勉強会とか、接待とかで訪れただけで、個人的に楽しんだ記憶は出てこない。
そうなのだ、昭和おじさんにとってはゴルフも温泉地も「オシゴトのセット」だった時代があるのだ。
そして出てくる記憶は、なぜか個人的な失敗のことばかりだ。で、今回はそんな「温泉地での失敗談」をいくつか告白しようと思う。

まずは、前述の「伊香保(群馬県)」だ。その日の僕は、某社の社員旅行に、外部の招待者として参加していた。つまり「お仕事」だ。
相手は大きな会社で、こっちは小さな会社、つまり大事な提携先になるはずだった某社の行事だった。まぁ表敬訪問という意味もあっただろうが(昭和だから)裸の付き合いをしましょう、みたいな感じかな。
ところが運悪く、僕は前日に怪我をした。とはいえドタキャンはあり得ないからと、参加するしかなかった。
その怪我は簡単に言えば打撲だが、その場所がいけない。下腹部のさらに下、つまり大事な場所の内出血で腫れもひどかった。時間もないから医者にも行けないし、湿布を何枚か重ねて覆うような状態だった。思い出すとドリフのコントのひとコマに似ている笑。
誘われた大浴場はもとより、風呂にも入れない。痛いから座っていられず、夜の大宴会(大事な客として上座の経営陣と並んでいた)を無表情で過ごし、誰よりも早く部屋に引き上げた。
怪我の場所が場所だったから、もちろん先方に言えるはずもない。で、先方の古参幹部を、無礼なやつと怒らせてしまったらしい笑。
後日、紆余曲折あって提携話は破談になるのだが、僕は「自分のせいかも」と思い込んでいた。だからこの事件のせいで、伊香保温泉にはいい思い出が何もない。

世間知らずの若い頃の僕はしばしばやらかした。たとえば「有馬温泉の高級宿」でも取引先の偉い人を怒らせたことがある。
先方の偉い人は僕よりかなり年長で、いわゆる温泉フリークの関西人だった。若い当方を大事にしようと、頑張ったんだろうと思う。あとから知ったことだが、その宿は有馬の有名な老舗で、料理やしつらえが素晴らしくて、なにより「金泉のかけ流し」が自慢の宿だった。
ところが当時の僕はイケイケの若造だから、高級宿には興味もないし、そもそも「有馬の金泉」の特殊性(先方の彼にとっては重要)とか、そもそも年長者の考えが理解できていなかったのだ。
まず、高速道路の事故渋滞で到着が大幅に遅れ、大事な夕食(一種の接待の場に似ている)をほぼパーにした。まぁアクシデントだからこれは仕方ない。翌日は早朝から一緒に移動するのだが、この晩は先方の部屋でそれなりの時刻までお酒のお付きを合いをした。
早朝の車中で会話を進めるうち、先方の偉い人の機嫌がどんどん悪くなっているのに気付いた。きっかけは金泉だ。なんと僕は大浴場を使ってなかった。つまり彼自慢の金泉のハナシが盛り上がらない笑。
まぁ大人の世界を知らないただの若造が、先方のおもてなしを理解せず、失礼な態度をとり続けたということだ。それ以来、温泉宿にまつわる「お仕事」には気を使うようになったのは間違いない。

このふたつの事件だけでなく、思い出すと、失敗はたくさん出てきた。たとえば箱根温泉は失敗の宝庫だ笑。箱根の目的は毎年開催される勉強会への参加のためなのだが、偉い人たちとの交流ばかりだから失敗談がとても多い。
温泉ではないが、京都南禅寺の老舗料理旅館の風呂での大失態も思い出した。どれもみんな若気の至りだと、笑うしかない。でもまぁ話が長くなるので、そんな話はまた別の機会に。









