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2019年03月01日

ホテルの時間「風が通るメインダイニング」

惜しまれながら閉館した
新幹線で那須塩原駅まで約1時間、さらに車で30分ほど田舎道を走る。業界では有名な二組のインテリアデザイナー集団(コンランとスーパーポテト)が手掛けた本館と新館はそれぞれ個性的で美しい。4万坪の敷地には川が流れ、散策路に沿って歩くと、ホテル専用の水田や野菜用の畑、露天風呂などが配置されている。パークHホテルや六本木H倶楽部で腕を振るった有名シェフの料理はカリフォルニアスタイルのフレンチで美味しく美しい。
ここ、那須高原の個性的なリゾートホテル「二期倶楽部」がクローズした。2~3年前のことだ。直後に所有権が変わり、今では某リゾートホテルの傘下になったようだ。初めて訪れた時、その個性的な建築や内装の驚き、料理の独創性に驚き、もう一度訪ねたいと思わせる魅力的な宿だった。しかし2度目に訪れた時は、古い本館の建物の老朽化が目立ち、改修された様子もなく、とても残念な気持ちになっていた。だからクローズのニュースをみた時も驚きは少なかった。

老齢の有名シェフによる夕食のフレンチも秀逸だったが、一番のおすすめは、メインダイニング「ラブリーズ」での朝食の方だった。フロント階からダイニングを見下ろすと、大きな下り階段の先には、吹き抜けの広い空間に朝日が降り注ぎ、外に続く大型のデッキにパラソルが並び、宿泊客たちが朝食を楽しんでいる。デッキの下に流れる川のせせらぎの音とともに、那須高原の朝の風が、吹き抜けのダイニングにスーッと流れて、とてもすがすがしい気持ちになれる。
テーブルに着くと、2mほどありそうな大型のワゴンがテーブル横に運ばれる。そこにはアイスベッドに並んだ、フレッシュジュースや新鮮な牛乳、シャンパンや白ワイン、そしてロンググラスを使った様々な野菜スティックなどから、好みの商品を選ぶことができる。そして、フレンチレストランには珍しく、土鍋の炊き立てごはんが運ばれ、テーブルの「卵」を好きなだけ使って、卵かけご飯を楽しむことができる。食事が終わると、席をデッキに移して、食後のコーヒーとデザートを楽しむ。

こんなに素敵な時間を提供できるホテルは多くない。那須高原には2度行ったのだが、ともに、このホテルが目的だったので、ほかの観光地は観たことがない(笑)。新しく所有したのは、事業再生で有名なリゾートグループだから、おそらく驚くような復活を遂げるのだろう。新しく生まれ変わったら、再び訪れたいと思っている。いろいろ変わるのだろうが、あの「卵かけご飯」だけは、どうか継続して欲しいものだ。

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