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2019年04月12日

映画の時間「ジャン・レノのサングラス」

加齢とともに眼鏡が合わなくなって、買い替えようと近くの眼鏡チェーン店へ向かった。接客してくれたのは、年齢的には相当ベテランの女性スタッフで、シニアの気持ちを理解しているらしく、丁寧に対応してくれた。だから、あまり迷うこともなく新しい眼鏡を買うことができた。会計を終え、眼鏡が入った紙袋を受け取り、外へ出ようとするとき、何気なく陳列を眺めているうちに、僕は急にサングラスが欲しくなった。サングラスはもう何年も買っていない。持っているやつは度が入っていないので、もう使えないからだ。
見送りで外へ出てきた彼女をつかまえて、サングラス売り場へ向かった。「ジャン・レノ」みたいなサングラスが欲しい、と言ってみた。正確に言えば、丸眼鏡がトレードマークのフランス俳優ジャン・レノが、映画レオンで殺し屋を演じていた時の丸いサングラス、という意味だった(笑)。彼女の年齢なら通じるかもしれない、と試しに言ってみただけなのだが、間違いなく通じたような反応だった。

丸いサングラスのジャン・レノの映画のポスターが目に浮かぶ。映画「レオン」は、リュックベッソン監督による、激しいアクションと、せつないストーリーが秀逸なフランス映画?(もしかするとアメリカ映画?)で、ストーリーもそうだが、出演する俳優たちがすごかった。もう四半世紀も前の映画なのだが、彼の前作「ニキータ」同様に独特の世界観でとても印象深い作品だった。
主演のジャン・レノが演じる殺し屋レオンの孤独感や純粋さは実にやるせなかった。助演なのに最も印象的な幼い少女マチルダを演じたのはナタリーポートマン、後にスターウオーズでアミダラ姫を演じることになる彼女の強い眼ヂカラは当時から凄かった。そして敵役の麻薬捜査官はゲイリーオールドマン、彼の狂気を含んだような演技は鳥肌もので、抜群の存在感だった。今でもテレビで再放送されれば、きっと観たくなるだろうな。
まあ、そんな映画やジャン・レノを、この女性スタッフが観ていたかどうかは分からない。ジャン・レノみたいなサングラスが欲しい、という、唐突なオッサンの言葉に、彼女のこう回答した。

ジャン・レノのサングラスはないのですが、「ジョン・レノン」のサングラスならございます・・・。ジョン・レノン?、ビートルズの?、と聞いた僕は、一瞬とまどったものの、すぐにビートルズのメンバーの映像を思い浮かべ、そして納得した。ただの言い間違いではない。彼女が見せてくれたのは、その店で売っている「ジョン・レノン・モデル」のサングラスだった(笑)。たしかにジョン・レノンも丸眼鏡だ。もはやレオンのそれにしか見えなかった。これだ、買います、、、。サンプルを手にした僕は、迷うことなく一発で気に入り、買うことにした。
彼女が出してくれた鏡の中に、丸いサングラスの僕が映っている。当たり前だが、映っているのはジャン・レノではないし、ジョン・レノンでもない。サングラスをかけ、鏡に映った一人のオッサンに過ぎない。うーん似合っている訳じゃあないよなぁ。たしかに勢いで買ってしまった。少しの後悔は残っているが、今度から大事に愛用しようと思っている。ドライブのためにクルマに積んでおくことにしよう。

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