優しい気持ち
朝7時すぎのことだ。小学校への通学路にある横断歩道には、ボランティアのおじさんが立っていて、今日も子供たちの横断をサポートしている。おじさんは僕と同じくらいの年齢なのだが、雨の日も風の日も休むことなく、黄色の旗を片手に、子供たちの横断を見守っている。
もちろん大雪の朝も、白い息を吐きながら、スコップで歩道の雪をかいていた。そんな姿を見ているから、彼のいる横断歩道に差し掛かると、いつも徐行して、フロントガラス越しに彼に、ご苦労様、と黙礼する。彼も僕の方に目をやって、黙礼を返す。
互いに名前は知らないが、元気に横断する子供たちへの愛情は同じなんだと思う。出勤を急ぐ車が多いのだが、信号機のない横断歩道で子供たちを見かけると、かならず止まって、心の中で、子供たちに声をかけるようにしている。子供はペコリと頭を下げて、元気に走って渡っていく。
「横断歩道での一時停止率」の都道府県ランキングが発表されていた。長野県が全国1位で、石川県は3位だった。石川県は横断歩道のマナーが良く、歩行者を優先している、ということらしい。最下位の某県の停止率は、なんと0.9%、つまりこの県では、信号機のない横断歩道では、誰も車を止めない、そんなクルマ優先の風土なのだということだ。とても意外な数値だった。1位の長野県の小学校では、横断歩道で一時停止してくれる車に、かならず「ありがとう」を言うことを指導しているらしい。
今日は、よく晴れていて気温も上昇し、春を実感していた。もうすぐ昼というとき、市内の横断歩道の近くで、小さな帽子の列を見かけた。道路わきの歩道を歩く幼稚園児の列だった。みんな揃いの制服姿で、二人ひと組で手をつないでいる姿を見ると、かわいくて思わずキュンとする。赤や黄色の帽子をかぶった集団を、先生が誘導しているようだが、なかなか言うことを聞かなない様子だ。横断歩道の信号は青になったのだが、園児が並ぶまで、先生は歩道を渡らない。どうやら次の信号まで、我慢するようだ。幼稚園の先生は、みんな大変なんだろうなぁ。そんな幼稚園児の行進を見ると、とても優しい気持ちになる。自分の孫と同じ年齢だろうか、今日のようなポカポカ陽気の日には、きっとみんなで散歩しているのかもしれない。