観光客ごっこ2019春
年に一度くらいは、やってみたくなる。シニアのそれではなく、最近の若い観光客のマネをして、観光客になりきって、金沢の街をひたすら歩くだけなのだが、これはこれで楽しい。街歩きをしていると、小さな変化に気が付く。古い何かが無くなっていたり、そこに新しい何かが誕生していたり、集う観光客の年齢や服装や行動様式が、どんどん変わっていったり、売っているものが、どんどん変わっていくことに気が付く。和服姿の観光客を見ても、もう違和感はなくなった。毎回のことだが、そんな「観光客ごっこ」は、金沢駅まで電車で向かい、改札を出て、構内を歩くところから始める。10連休の後半戦のピークだからだろう、駅構内は人でごったがえしていた。当たり前だが若者ばかりだ。
近江町に向かうバスは、猛スピードで交差点を曲がる。急いでいるのか、運転手はけっこう乱暴な運転をする。近江町の魚屋さんの店頭に並んでいるのは、いつもの地魚ではなく、プラ容器に入ったウニとかボタン海老とか、高く積まれた殻付きカキばかりだ。陳列は休日型バージョンなんだな。そこに観光客が群がっている。みんな楽しそうだ。
近江町から尾張町の裏通りを進み、主計町をぷらぷら歩いた。さらに中の橋を渡って、東山へ向かった。狭い路地にも、小さな坂道にも観光客がいて、驚いていた。ひがし茶屋街には、今年もたくさんの新顔がオープンしていて、どこも忙しそうだ。和服姿のカップルや女性グループが多いのには、いつも驚く。そんな人混みを避けて裏通りを歩き、一軒の新しいカフェを見つけた。ウリは金沢のクラフトビールで、複数のブリュワリーのビールが飲める。ビールは美味しかったが、カレーパンとか能登牛コロッケには、あいかわらずガッカリさせられる。ここもかよ、などと毒を吐く(笑)。
兼六園は新緑がとてもきれいだった。八重桜も終わり、アヤメはまだだったが、ツツジの鮮やかな色が新緑に映えていた。金沢城公園も、毎年、改修や復元工事が進んでいて、観光地らしくなっていた。
何年かぶりで、長町の武家屋敷へ向かってみた。野村家の庭園を観たかったからだ。実は初めてだった。中は一種の美術館で、贅を尽くした上段の間から、曲水の庭のあたりは、たしかに見事な出来だった。外国人も多かったが、みんなマナーが良かった。むしろ日本人の方が態度が悪い(笑)。武家屋敷の景色として有名なのは、大野庄用水まわりの景色だが、観光客は少なかった。むしろ、せせらぎ通りの方が観光客だらけだ。かつては僕の通勤路だったのだが、知らない間に観光地へと変貌していて驚いていた。
今回は、ただの散策だから、宿泊するわけではないのだが、どんどん増える新しいホテルは、どれも個性的で、どこも金沢での体験を提案している。本音を言えば泊まってみたい。4時間ほどの観光客ごっこは終了だ。こんな日の晩ごはんは、金沢おでんかなぁ。