冷やしぜんざいと焼き団子
軽井沢のメイン通り「旧軽通り」の週末は、午後になるとヒトであふれる。これが夏休みになると一気に過激になり、自分のペースで動けなくなるほどだ。しかしこの日は、まだ午前中だからか、人はさほど多くない。初夏の軽井沢は天気も良くて絶好の散策日和だった。旧軽通りは観光地であるとともに、地元住民の普段の暮らしを支える商店街でもある。
地元の人たちの所作は何かとカッコよく見える。大きな2匹のゴールデンレトリーバーを連れたご夫婦が、何気なく道端で休憩している姿は堂に入っているし、その毛並みに触ろうとヨチヨチ歩きの子どもが近づく光景もほほえましく見える。古いミニクーパーで駆けつけた美女がパン屋に入っていく。パンを買うのだって、いちいちカッコいい。ベビーカーを囲んだファミリーが出てきたのは、セピアの写真を飾った、とてもレトロな写真館だったりする。そんな普段の光景に旅人も溶け込んでいく不思議な観光地だ。
旧軽通りの終点あたり、有名な老舗「つるや旅館」の近くに、「ちもと」という和カフェがある。和カフェといっても、峠の茶店みたいな風情だ。ずいぶん昔、ここで食べた「豆かん」のことを覚えていたので、今日は休憩に立ち寄った。ちなみに「豆かん」は、フルーツもアンコも乗っていない「みつまめ」のことだ。
ひなびた風情は昔のままだが、老若男女で一杯だった。隣のテーブルでは女性たちが地ビールを飲み、後ろの席では若者たちが「天然氷のかき氷」に歓声を上げ写真を撮っている。どうやら今は、それが一番人気のようだ。
シニアの僕は「冷やしぜんざいと焼き団子」で軽井沢の雰囲気を味わった。目の前の道は旧中山道のはずだ。遠い昔、中山道の難所「碓氷峠」を越えた旅人が、目の前の、この道を歩き、軽井沢に今夜の宿を探したのだろう。旅の目的やスタイルが変わっても、峠の茶屋の役割は変わらないんだろうな。