散歩の途中で「獅子吼のキッシュ」
ある猛暑日の午後、「スカイ獅子吼」へのロープウエイに乗ろうという話になった。10年どころか20年以上は乗っていないだろう。4人掛けのゴンドラだった。こんな暑い日なのに、もちろん冷房が効いているはずもなく、透明なゴンドラの中はひたすら暑かった。座席にはちゃんと「うちわ」が2枚用意してあって、必死にあおぐのだが、暑い空気が対流するだけで効果はない(笑)。機械類はどう見ても古くて、ポールを通過するたびゴトゴトして肝を冷やす。でも景色は、思いのほか美しい。すぐ近くをハングライダーが飛んでいて、気持ちよさそうだ。
標高650m(笑)の山頂に着いた。獅子吼高原という名前の割には高原らしくなくて、涼しくもない。周囲を眺めてみたが、思い出がひとつも出てこない。昔はどんな景色だっただろう。山頂の施設はどこも老朽化していたが、高原のカフェとか、自動運転の高原カートとか、ドッグランやキッズスペースもあって、家族連れでとてもにぎわっていた。なによりハングライダーが目の前からテイクオフする姿は、とてもカッコいい。
山の上を「スカイ獅子吼」、下のすそ野の施設を「パーク獅子吼」と呼ぶ。パーク獅子吼へはときどきやってくる。敷地の中に地場産業や文化施設が入居していたり、レストランや和カフェなどもいくつかあって、それなりに楽しいからだ。いつものように休憩がてらに和カフェを目指して駐車場から歩くと、真新しい看板に目が留まった。以前からある古い民家のような建物が、新しい店に替わっているようだ。玄関先にポツンと黒板がでていて「QUI」とか「キッシュ」とか書いてある。
とりあえず食べ物屋さんのようなので、のぞいてみることにした。中はけっこう広くて、ゆったりと、とても素敵なカフェ空間が広がっている。人の良さそうなおじさんが笑顔で出てきて、ここがキッシュの専門店であること、このカウンターで先にキッシュや飲み物をオーダーするスタイルであることなどを懸命に説明してくれた。
キッシュは数種類あって、おじさんは丁寧に商品説明をしてくれる。おじさんの人柄が出ていて一生懸命だから、なかなかいい感じだ。しかし客は全くいないので、僕たちだけの貸し切り状態だった。一番人気ですというので、おすすめの海老とブロッコリーのクリームキッシュを食べてみた。一般的なものよりさっぱりしていて、クリームの切れもいい。特徴は小麦粉を使わず「米粉」で作っていることらしい。一緒に食べた黒ゴマのジェラートやアイスカフェラテは、それなりの味だったが、何となく健康的な気分に浸れる(笑)。とにかく店内には静かな時間が流れているので、読書や思索にはぴったりだと思う。
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