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2020年05月22日

青春のかけら「ある日のフォトフレーム」

ひょんなことから、屋根裏の収納庫の奥の方に「赤い風呂敷づつみ」があることに気づいた。そもそも風呂敷なんて最近見ることもない気がする。とはいえ、赤い風呂敷ということは、昔の結婚式の引き出物でも入れてあるのだろうか。
屋根裏に中腰になって座り、奥に向けて片腕を目いっぱい伸ばして、そんなホコリだらけの赤い風呂敷を引っ張り出した。結婚式の引き出物の大皿なんかをイメージしていたのだが、大きい包みで案の定、重い。結び目は固くて簡単にほどけない。仕方ないから両手で触って探ってみたが、でこぼこしていて何個かの硬い箱みたいな感触もある。少し触っていてピンときた、これは額縁(がくぶち)かもしれない。

下におろして、固い結び目を、なんとかほどいて、風呂敷づつみを開けた。中身は何個かの薄い紙の箱や、何枚かのフォトフレームだった。サイズはまちまちで、どれもA3サイズくらいあるから箱に入らず、風呂敷を使うことにしたのだろう。上から順に見ていった。潰れたような箱からは、何かのセミナーの終了証や、立派な額に入った研修会の集合写真などが順に出てきた。背広姿の僕を見つけて、若かったなぁなどと笑ったが、もはや今では必要のないものばかりだった。
そして、風呂敷の一番下にあったのは、4枚のアルミ製の大きなフォトフレームだ。そして中に入れてあったのは、大きく引き伸ばしたスナップ写真だった。なんと、いつもの悪友たちと過ごした若い頃の写真だ。驚いた。4枚の写真は、それぞれ別のものだが、若い頃の僕と彼らが笑顔で写っていた。そんな思いがけない写真が、こんなところから出てきたのだった。今では大事な大事な青春のかけらだ。30年ほど前の引っ越しのドサクサや、当時はシゴトシゴトと言って突っ張っていたから、放置したのかもしれない。薄情な(笑)僕らしい気もする。

1枚目は、悪友Kと僕の二人が並んだ写真で、笠をかぶって露天風呂に浸かっているシーンだった。あぁ、あの新穂高の旅館の露天風呂だ。2枚目の写真は、どこかへの旅のときに、河原でとった5人の集合写真だ。なぜか全員がカッコつけてポーズを決めている。みんな若くて細い(笑)。
3枚目のこれは、どこかの高原みたいだ。4人が次々に「おんぶ」するから、重さにつぶれて苦しい表情で笑っている。顔がよく分からないやつもいるが、きっと彼だろう(笑)。そして最後の4枚目は、何年も続けたクリスマスパーティーのひとコマだ。年に一度、この日だけは子供を預けて、夫婦二人だけで参加するルールだった。少しおしゃれして参加するのもルールだった気がする。仲間も若いが、奥さんたちも若い(笑)。

そしてなぜか、高校時代の僕のスケッチブックが一緒に出てきた(笑)。古くてボロボロのスケッチブックだ。作品展に出す前のスケッチのようだ。作品の小さなパーツの下書きかもしれない。どれも稚拙な絵だ、これは恥ずかしい。
4枚のフォトフレームも、同様に汚れていた。ガラスのやつと、透明アクリルのと2種類あるのだが、透明アクリルは陽に焼けて、ホコリも溜まって不透明のアクリルに変身していた。セピア写真だと勘違いしたくらいだ(笑)。汚れてボロボロのフレームから写真を出そうと思ったのだが、写真はフレームにくっついたまま、外れそうにない。でもそっと拭いてやると、ホコリの下の写真はカラーで、昔の記憶を色鮮やかに思い出させてくれた。

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