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2020年07月24日

遠い記憶「カーホップのローラースケート」

こんなご時世だからか、ドライブスルーという言葉を見聞きすることが多くなった。クルマに乗ったまま〇〇ができる、というのが共通の意味で使われているようだ。先日も、野菜の無人売り場に「ドライブスルー」の看板を見た(笑)。駐車場を弁当売り場にしているところもある。ラスベガスではドライブスルーで結婚できるらしい。自宅の近くの石材店は、ずいぶん昔から「ドライブスルー展示」をやっていた。とはいっても、敷地にクルマで入っていくと、お墓のサンプルとか石の灯篭や仏像なんかが並んでいるだけだった(笑)。まぁ何でもありだな。
今日も、マクドナルドのドライブスルーのレーンには長蛇の車列がついている。敷地だけでなく道路にも列がつながっていて、ここだけ渋滞だ。個人的には、外食の業界人だったから、ずいぶん昔からドライブスルーに馴染んでいた。いまでは当たり前の光景だが、あの「インカム」と呼ばれるヘッドセットを付けて、作業するのは、なかなか大変なことだった。

ドライブスルーが登場したのは1930年代のアメリカと言われているから、僕たちが生まれるずっと前のことだ。その後、某ハンバーガーチェーンが標準装備して、全米に普及したのが1960年代からなのだそうだ。若い頃のアメリカへの旅のとき、客としてドライブスルーを使おうと思っても、下手な英語の僕たちには、なかなか使いこなせないシステムで、注文も難しかった記憶がある。注文には指さすメニューと「表情」が必要だったからだ(笑)。
車から降りることなく何々できるのは便利だ、と解釈されているが、犯罪の多いアメリカで生まれた独自のスタイルなんだと思う。ガソリンスタンドがセルフになったのも、アメリカ的スタイルのような気がする。たしかにアメリカのスタンドには危険な空気があって、従業員はワイアーが入った窓ガラスや鉄格子の向こうにしかいなかった(笑)。

当時のアメリカには「ドライブイン」というスタイルも、まだ残っていた。ドライブスルーが普及する前の注文スタイルのことだ。コトバは同じだが、日本のそれとはまったく違うものだ。日本では道路横の飲食施設の呼び名になってしまう。本場アメリカのドライブインは、建物の外にクルマを止め、そこで注文すると、商品が運ばれてくるスタイルのことだった。
広い駐車場には、質素な屋根が付いた長いアーケードみたいなものがある。そこには何台かの「電話」が、駐車区画ごとに横一列に並んでいて、利用客はその電話の前に車を止める。車から出て、ぶら下がっているメニューから商品を選び、その電話で注文するのだ。しばらくすると、店のスタッフがやってきて、商品を渡し、その場で会計をする。まぁそんなスタイルだった。実際には、スタッフはローラースケートを履いた若い女性たちで、笑顔でさっそうとやってきて、商品を手渡す。彼女たちは「カーホップ」と呼ばれる人気の職種らしく、ミニスカートもローラースケートも、ポップでド派手だった(笑)。

10年ほど前のこと、沖縄の本島をドライブしているときに、そんな懐かしい「ドライブイン」を見つけた。A&Wというハンバーガーチェーンだったと思う(A&Wはハンバーガーより「ルートビア」の方が有名かもしれない)。このときは見ただけで使わなかったから、ローラースケートを使っているのかどうか分からない。だがとても懐かしい気分だった。
沖縄には、琉球由来の古い文化の中に、米軍基地の人たちの普段の生活を支える、いわゆるアメリカ文化が入り込み、両立している。今でも、まるで時間が止まったままの古い風景を観ることがある。今のハワイやグアムでは見かけなくなった古いアメリカが残っていたりするのだ。ここのドライブインもそんなひとつなのだろう。
最近になって、日本のマクドナルドが「パーク&ゴー」という名称で、このドライブインサービスを開始した。とはいえ、これは事前のモバイルオーダーの商品を、駐車場でクルマから降りずに受け取るだけのサービスだ。便利だし、コロナ対策の一環なのだろう。まぁ、スマホなどのデジタルデバイスの進化についていけない僕のようなシニアには、無縁のサービスかもしれないな(笑)。

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