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2020年09月25日

マルゲリータとマルガリータ

まだ20代前半の頃だと思う、当時は「パブ」と呼ばれた店で安物のウイスキーをボトルキープするのが、それなりの流行だった(笑)。片町のK会館にあった某パブは、おそらくイングランドパブを真似した店だったと思う。そんなパブの定番メニューは、チキンバスケットやフレンチフライ、そして「ピザ」だった。当時は、喫茶店のピザトーストしか知らなかったから、そんな「パブのピザ」は、それとなくホンモノっぽく思えて注文していたのだろう。その後、アメリカの宅配ピザが東京で流行し始めて、ドミノやピザハットの名前が知れ渡ったが、金沢に登場するのは少し後になる。
片町にはシェーキーズが登場し、金沢でも本格的なアメリカン・ピザが食べれるようになった。しかし、そんなレストランのピザは主役になれないまま姿を消していった。替わって普及し、主役になったのは「宅配ピザ」だった。宅配ピザの業界では、意外なことに「国産のピザチェーン」の方が人気があった。アメリカ直輸入のチェーンは苦戦したのだ。ピザは、まるで国民食のように、いつのまにか日本独特の味や品質になっていったのだろう。
そして、時は流れ、今度は「ナポリピッツァ」がブームになった。こっちはレストランの逆襲のようなもので、元気がなかったイタリアンに復活の風が吹いた。

今では誰もが知っていることだと思うが、初めて説明されたとき、僕は「そんなこと、どーでもいいじゃないか」と思ってしまった。その日、とある偉いオーナーさんが、上から目線で説明を始めた。ピザとピッツァは違うものなのだそうだ。ピザは「アメリカのピザ」のことで、イタリアの「ピッツァ」とは違う。アメリカのやつは「具を楽しむ」ものらしく、一方のピッツァは「生地の旨さを味わう」ものらしい。そして、イタリアのピッツァは、プロの職人たちが作るホンモノで、アメリカのそれは、チェーン店の大量生産品だ、と言っていたように思う(笑)。
特に「ナポリピッツァ」には正式なルールがあって、その品質と伝統を守っている。その違いを、説明するとね・・・・。そこまで聞いていたのだが、あとは全部、聞き流していた(笑)。上から目線の説明に興味はなかった。この、ありがたいお説教のような説明は、ナポリピッツァのブームが始まったころで、まぁ、食べると確かに旨かった。バブルの頃、その象徴だった「イタリアン」の有名店で食べた「本気のピッツァ」の味だった。そしてブームは広がり、それが、身近な場所で食べれるようになっていった。

ナポリピッツァの代表格は「マルゲリータ」だ。最初の頃は、しばしば「マルガリータ」と読み間違えた(笑)。「ゲ」と「ガ」のひと文字違いなのだが、「ガ」つまりマルガリータは、カクテルの名前でピッツァとは関係ない。マルゲリータは、イタリアのかつての王妃マルゲリータに由来するものらしい。ある日、ナポリを訪れた王妃に、職人が献上したピッツァは、イタリアの三色旗(赤白緑)に見立てて、トマト(赤)、モツァレラ(白)、バジル(緑)のシンプルなもので、王妃が大変気に入った、というお話だ。
一方のマルガリータは、アメリカのバーテンダーが、亡くなった恋人マルガリータの名前を新作カクテルに付けたのだそうだ。カフェバーブーム全盛の頃、トロピカルカクテルってのが人気で、マイタイとかチチに並んで人気だったカクテルだ。チャラい男はみんな知っている(笑)。ちなみに、マルゲリータはイタリア読み、マルガリータはスペイン読みで、それぞれ英語の「マーガレット」のことなのだそうだ。一見地味で可憐な感じの花だから、ふたつの由来の物語が、少し優しいお話に感じてしまう。

この日、自宅の台所に立った僕は、この話を思い出して、あるパスタを作った。どうでもいいが、作品の名前は(赤白緑の)マルゲリータと名付けた。しかしウケ狙いなので、赤は「明太子」、白は「やりいか」、緑は「大葉」、つまり、いか明太の和風パスタだ(笑)。でも出来上がったパスタは、明太子に火が入って薄いピンクになるし、ヤリイカは明太子だらけで白くない。大葉は黒くなってみっともないから、上に大量のバジルを乗っけることにした。そして、写真のような、何だか得体のしれないパスタになった(笑)。
まぁ、味の方はお褒めをいただいたので安心している。だから、次回は「すき焼きのマルゲリータ」にしようと目論んでいる(笑)。赤は「トマト」、白は「玉ねぎ」、緑が「バジル」の、いわゆるトマトすき焼きだ。いわばトマトが主役で、安い肉でも旨くなる。大阪の「Bサラ」という店まで食べに行って、気に入って、わが家なりのアレンジで定番になったメニューでもある。何度もトマトでヤケドした。でも旨いから外せない。

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