toggle
2020年07月03日

笑うスマホ「雑草との戦い」

ご主人は、さっきまで私(スマホ)のアプリでニュースを見ていたはずなのに、何を思ったか、急に、庭の写真を撮り始めた。そんな雑草だらけの写真を撮っても仕方がないのに、とは思ったものの、たぶん「あれだ」と思い出した。ご主人は、きっと今から、庭そうじを始めるつもりだ。そうじの大半は芝刈りで、一緒に植栽の剪定なんかもやる。そして、今度は掃除が終わった後の写真を撮るはずだ。ビフォア・アフターを気どって撮影した写真が、私のフォルダーの中にたくさんある(笑)。
庭そうじは、冬が終わって春になると始まる作業だ。長い梅雨の前にはいったんやっておかないと、一年中苦労するらしい。これから先、庭が雪に埋もれるまでの間、何回も繰り返される、ご主人だけの「孤独な戦い」でもある(笑)。今流行りのガーデニングなどというカッコいいものではない。ひたすら雑草を抜き、芝を刈るという肉体労働に過ぎない。とはいえ、写真を撮るのは「今」だけのこと、つまり年に1回しかない。伸びた雑草が傍若無人に庭にはびこる景色は、この時期しか撮れないからだろう。以降は、少し伸びただけで、すぐに刈られてきれいになる。

この家の庭の主役は、今でも「老いた芝生」だ。この家を建てた30年ほど前に、庭の全面に植えたようだ。その当時は、緑の芝生でパッティングの練習をしたり、犬を走らせるのがイメージだったかもしれない。ちなみに飼っていたのは「しば犬(豆しば)」だった。芝生を手入れしようとベンキョーして、いや、ほぼ自己流で、エアレーション(フォークやスパイクみたいな道具で地面に穴をあけ空気を入れる作業)とか、目土を入れるとか、肥料を撒くとか、さんざんやっていた時期もある。当初は雑草の駆除に苦労していた。芝は、刈れば刈るほど強くなると知って、雑草は芝と一緒に刈り込めばいいんだ、と途中で気づいた。たしかに芝は元気になり、雑草に勝つことを実感していったようだ。
とはいえ実際には、ゴルフ場のようなきれいなグリーンになるはずはなく、犬はマーキングのたびに、盛んに地面を掘り返すから、芝はガタガタにされていった。当初は一年中、若々しく緑を保った芝も、年月とともに衰えて、今ではハゲハゲだ。庭の水はけも悪くなって「苔」が一面に広がるようになった。老いた芝は、まだ雑草には勝てるようだが、最近は、新興勢力の「苔」に負けるようになった(まぁ苔は苔で美しいのだが)。ご主人は、そんな老いた芝生が愛おしいのかもしれない。

さっそく、庭そうじキットを運び始めた。芝刈り機や裾刈り用バリカン、剪定ハサミ、名前は知らないが雑草を抜く道具などが順に並ぶ。この芝刈り機はご主人の愛機だ。長年の庭そうじの功績が認められて、ようやく装備された最新鋭機で、音も静かで何より切れ味抜群だ。でも先代の古い芝刈り機も現役で併用している。ご主人は、古い道具が捨てられないたちなので道具ばかりが増えていく(笑)。何でもどんどん捨てる性格なのに、道具だけは例外のようだ。壊れたり動かなくなるまで使い続ける。
戦う相手は芝生の雑草以外にもたくさんある。田んぼ側の土手とか、公園側のフェンス周りとか、玄関側の植栽あたりとか、場所に合わせて戦術を変えているようだ。雑草にも流行があるようで、敵の特性を知った上で戦っている(笑)。腰を悪くしてからは、薬剤も上手に使うようになった。なんと3種類の除草剤を使い分けている。以前は熱湯で枯らしていたのだが、自然にやさしいやつを見つけたようだ。

あれから2時間、ようやく戦闘が終わったようだ。庭も周囲も見違えるほどきれいになった。汗だくで息を切らしながら写真を撮っている(笑)。いつだったか熱中症みたいな症状が出てからは、準備体操や小休止に気を付けている。もちろん水分補給も欠かさない。まぁ歳も考えて気を付けてほしいところだ。いつか、スマホの私に優秀なAI機能が搭載されたら、ご主人の写真に「いいね」とか「がんばったね」とかのコメントを付けてあげたい。

Other information