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2021年02月05日

蜃気楼に似てる?らしい

1月の中旬ごろのことだ、富山でのシゴトはほぼ1か月ぶりだった。明日はクルマで富山へ向かう日程だからと、少しだけ富山県の天気予報が気になっていた。ここ数日は冷え込んだが、幸いにも明日の予報に雪マークはなく、雨のようだし、むしろ日中の気温が上昇するような予報になっていた。ひと安心だった。気にしていたのは、今年の富山の雪はものすごい、と地元の人から聞いていたからだ。テレビに映る大渋滞のニュース映像や「ホワイトアウト」というコトバが、僕には刷り込まれていて、何なら新幹線で行こうか、などと考えていた時期もある。
金沢の雪は、いくぶんか解けてしまって、市内の道路の路肩に残骸が残っている程度なのだが、どうやら富山は違うらしい。
除雪車は動いていたんですけど、幹線道路は大量の雪に覆われていて、まるで「雪の大谷」の光景でしたよ。41号ですら全く動かない大渋滞で、駅まで3時間、歩いて向かいました・・・。などと地元の人は笑って話してくれた(もちろん富山弁だ)。雪の大谷というのは、立山黒部アルペンルートの春の名物で、室堂付近の除雪の際にできる高さ20mほどの切り立った壁(両サイドにあるから谷なのかな)のことだろう。そんな話を聞いて、あの有名な映像が頭に浮かんだ(笑)。

天気予報を信じて、北陸道を富山へ向かった。小雨の道路の路肩には多くの残雪はあるものの、何の心配もいらない。路面には圧雪も残っていないし、気温も高い日中だからスリップの心配もなかった。いつものように高速を走り、小雨の県境に向かった。そして、倶利伽羅のトンネルの中に入ったときに、異変に気付いた。トンネルの中が「ガスっている」のだ。いわゆる「霧」に包まれている状態だった。
嫌な予感が当たった。トンネルを抜けると、一面は「濃霧」に包まれている。カーブが続く山の中の霧は、ところどころに濃淡があって、前方の車の輪郭は、かすかだが、まだ見えるので何とかなりそうだ。山道を過ぎて平野に出れば大丈夫だろうと思っていた。しかし、そんな予想は大きく外れた。砺波平野に出てからの方が、霧が深いのだ。道路の両サイドに広がる散居村の田園風景は、まだまだ雪に覆われていて、さらに濃霧にも包まれて、まるで吹雪の大地のように見える。真っ昼間なのに夕方のように暗い。
そして、小矢部川SAを過ぎたあたりで、前方が全く見えない「ホワイトアウト」みたいな状態になってしまった。40代の頃に何度か体験した、あの「名物の濃霧」に突っ込んだようだ、万事休すだ・・・。

まぁ結局、いま、この原稿を書いているわけだから、僕は無事に生還している(笑)。ちなみに富山の某ショッピングセンターの駐車場には、たくさんの除雪の山があちこちに残っていたのだが、いちばん端っこには、ゆうに3mくらいの雪の壁が出来ていた。
もう、ずいぶん解けたんですよ、一番多い時は、あの看板まで埋まっていたので・・・、と地元の人が言う。ということは、あの壁は、5m以上はあったことになる(笑)。除雪車が、どうやって5mの壁を作ったのか僕には想像がつかない。富山の除雪車は違う機種なのだろうか。
濃霧の正体は「雨」なのだそうだ。雪が多く残ったままの冷たい大地に、気温差のある「暖かい雨」が落ちるとき、雨は霧になって大地を覆うものらしい。それは北アルプスの冷たい雪解け水が、春に富山湾に注いで、蜃気楼が発生するメカニズムに、どこか似ているらしい。地元の人の言うことだから、そういうことなのだろう。
夜の7時ごろ帰ることになった。今日は風がないから、霧は晴れないと思いますよ、気を付けて・・・。という暖かいアドバイス(笑)に見送られて帰路に就いた。たしかに霧は、まだ続いていた。雪の大谷?状態といい、蜃気楼みたいな?あの濃霧といい、大自然は人間の前に、ときおり牙をむいて現れる。この日は、それを笑って話す地元の人たちが、みんなたくましく思えた。

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