おでん、トスカーナ、イチロー、リモンチェッロ
僕が通う日本酒専門店(つまり酒屋さん)のオヤジが「このまえ行ってきたよ」と言う。みひろのことだった。そういえば色んな人から、同じような話題をもらうのだが、身近な僕は、実はご無沙汰していた(スマン笑)。移転オープンのときに顔を出してから、もう半年以上になる。
移転してからホントに忙しい毎日だと聞いていたこともあって、ちょっと遠慮していたかな。せっかくの悪友(僕だ笑)の問い合わせを満席で断るのは、きっと辛いだろうと思ったりしていた。
そんな酒屋のオヤジの一言がきっかけになって、ある日の午後、予約の連絡を入れてみることにした。まぁ彼との同窓会みたいな気分だ。平日の開店直後なら、もぐり込めるかもしれない。返信はOKだった。久しぶりに、みひろの「牛すじ」が食える笑、でも、開店時刻って何時なんだろう?。
向かう車の中で、僕と家内は「さて今日は何を食べようか」と、事前準備の作戦会議に入っていた(家内は3年ぶりらしい)。おでんはもちろんだが、今日は焼き魚かなぁ、そうそう、好物の小いか煮も外せない。ぬる燗のコップ酒や締めのラーメンの映像が浮かぶ笑。
用意してくれた席はカウンターの一番奥だった。いわゆる彼の立ち位置の真ん前の席だから、僕たちにとっては特等席だ。彼とは、いろんな話をしたいし、一緒に酒を飲みたい。まぁ、店主に酒をすすめるのはどうか、という考えもあるのだが、彼は喜ぶはずだ。
焼き魚を選ぼうと今日の黒板を探した。黒板はカウンターの反対側の壁に掛かっていて、老眼の僕には遠くて見えないから、席を立って黒板に向かう笑。最近の若いお客さんたちは、この黒板を写メして、テーブルで選ぶらしい、なるほどそれは便利だ笑。
久しぶりにじっくり眺めた黒板には懐かしいメニューが並んでいる。僕の世代にはご馳走ばかりだ。そして僕たちにとっての新作もたくさん増えていた。でも、こんな年齢になって胃袋は小さくなったから、欲張れないのが難点かなぁ。
青魚に目がない僕は、刺身にアジを、そして焼き物にはイワシを頼んだ。おでんは、つみれや大根や豆腐と、いつものやつばかりだ。彼から「ふき」の季節がもう終わるからと聞き、それも付け加えた。こうして、楽しい「みひろ時間」が始まった。
それなりに食べてしまうと、お腹いっぱいで、飲むしかなくなる。最近は調子に乗っていてちょっと危険だ。同窓会だから、という勝手なアクセルを踏んでしまう笑。ビールの次はワインを頼んだ。白のおすすめ(カリフォルニアのシャルドネ)のボトルが出てくると、一緒にワイングラスが「3個」並んだ。つまり彼も飲むということだ、仲間に遠慮はない笑。
互いの最近の話題や、それぞれの旅のハナシ、同級生たちの話題や神戸のこと、もちろん悪友たちの近況が一番盛り上がる。彼は、いつの間にか「トークの達人」になっていて、ハナシが面白い。話題はワイン談議になり、彼が先日、小松の駅前で飲んだという「ルーチェ」のハナシになった。トスカーナの(もう一方の)代表格、いわゆるスーパータスカン(スーパートスカーナ)のひとつだ。元祖のサッシカイヤ(懐かしい)のことや、DOCのこと、トスカーナ人気質の(僕が読んでる本の)ハナシになった笑。
まぁ、おっさん2人のテンションは上がり、やっぱり今夜も調子に乗ってしまう。ワインの次はウイスキーになり、彼が好きなイチローズのハイボールを重ね、なぜか最後はリモンチェッロが出てきた笑。もちろん僕は、福正宗のぬる燗コップ酒(僕にとってここの定番)も途中ではさんだから、いろんな記憶はもはや闇の中だ笑。
帰りの代行運転の車中の記憶もあいまいなまま、気づくと風呂で、最後に食べたラーメンのことを思い出していた。小いか煮もちゃんと食べたし、これで、作戦の食べ物は全部クリアしたはずだ、と、おかしなことに満足する。
昔のテレビドラマで、主人公たちが変なメニューをつぶやくと、バーのマスターが「あるよ」と言って、見事にそれが出てくる、ってやつがあった。今夜のリモンチェッロはまさにそれで、彼が「あるよ」と言って出てきたのだ笑。とはいえ、どうしてそんな展開になったのか、思い出せないままだし、そもそも彼の店にリモンチェッロがなぜ置いてあるのかも不思議なままだ。
そして、僕のスマホのスケジュールには、彼ら夫婦とのバーベキューの予定メモが、知らぬ間に入っている笑。「もちろん覚えてるよ」と答えて、家内の追及をかわしたのだが、ホントのところは分からない。今度こっそり確認しておこう。