大事なニュースのはずだから
今になって、終わってしまったオリンピックのことを、あえて書こうと思う。何年か経って振り返ったとき、そんな記事がないのは寂しい気がしてきたからだ。
そろそろ年末に向けて、この1年の編集後記の総集編のことを意識する。この1年のこととはいっても、世論という同調圧力に関する僕の意見を書くようなことはない。政治色や加熱した個人の意見が飛び交うような話題は、意識して避けている。ある意味で、そんな「世論に翻弄される65歳のオッサン」の日々を面白がって書くことがあるが、それは一人の同級生の「今」を、色々あるけど元気だよ、と同級生に伝えたい、そんな小さな願いがあるからだ。
今回のオリンピックは、報道≒世論という図式の中で、あおられていた。いざスタートすると、手のひら返しのように扱われることにも違和感があった。だから書かなかった。そんな違和感は同級生にも同じようにあったと思う。スポーツをお題にしたSNS企画の反応を、そう受け止めていた。
最近のことなのに、記憶に残っていることは少ないのだが、今年のオッサン(僕)の記憶として書いておこうと思う。ちなみに僕は、選手や関係者の努力に最大の敬意を払うタイプで、メダルの色とかはあまり関係がない。
前回の東京五輪のことを思い出してみた。1964年ということは8歳ということかな、その年、母親と二人暮らしのわが家にテレビが届いたから、その日は嬉しくてよく覚えているのだが、テレビ(NHK?)で競技の中継を観ていたのか定かではない。アベベやヘーシンクやチャフラフスカ、東洋の魔女とか、重量挙げの三宅さんとか、そんな記憶は、後々のニュース映像で記憶に刷り込まれた可能性がある。
そんな60年近く前と比較しても意味はないのだが、今回のオリンピックの情報量はとにかくすごかった。特に週末は、どの局もほぼ一日中オリンピックの競技中継やメダルシーンのニュースを放映していたような感じだ。元々、オリンピックにさほども熱を持たない僕も、そんな報道渦に飲み込まれて、あちこちザッピングするし、日本選手がメダルを取ると、スマホに速報が届いたりするから、テレビの前にいるときは、リモコンはずっと膝の上だった(笑)。
書き始めて自覚したのだが、僕の場合、記憶はほとんどテレビ報道のそれなんだね。まぁテレビっ子として育ったから、それが当たり前なのかもしれない。思い付くだけ列記してみたい。
■競泳はリレーを除けば個人競技の代表だが、日本選手たちの仲の良さや明るいムードが、いつもあるような気がする。まるでチーム競技のような雰囲気だ。女性メダリストが若い男子選手のことを、まるで自分の弟のように語るシーンがとても印象的だった。
■女子バスケのHーバスヘッドコーチの熱いキャラが印象的だった。通訳ではダメだ、自分の言葉で気持ちを伝える指揮官だ。なんで頭使ってないの?、という叱責が選手の心に響く。オブラートに包むことが要求される時代に、とても新鮮だった。
■いわゆる、知らない競技の「解説」が面白かった。中継のアナウンサーではなく、ゲスト解説者の、あの興奮しながらの解説のことだ。自分の後輩たちの勝負どころでは、ほぼ絶叫になる。それが楽しい。スケートボードの解説者は、ここぞというときに「ヤバい」と言う。凄いトリックは名称ではなく「鬼ヤバいやつ」とか「ビッタビタにはめて」と言う。技の解説をするのは、もっぱらアナウンサーの仕事で、解説者はまるで視聴者の代表みたいに「ヤバイ」を連発していた(笑)。
■うっちー(〇田篤人)のインタビューが一番良かった。答える選手たちの方が、現役時代と同じような距離感で彼に接してくるから、双方の素顔のコメントが引き出せたのだと思う。彼が真面目にやればやるほど、選手たちにいじられているように感じた。チーム競技の良さが伝わった。
■開会式の、あのピクトサイン系の時間は楽しかった。〇~まるちょばはやっぱりすごい。閉会式のDJ松〇君もカッコよかったよ、と誉めてあげないとね(笑)。
■スケボーのパーク決勝の出場選手の年齢に驚いた。10代の人ばかり、中には13歳もいて、まるで孫たちだ。チャレンジのトリックに失敗して転倒した選手に、周囲の外国選手たちが駆け寄り、ハグや肩車で健闘を称えるシーンがあった。今まで観てきた光景とは少し違う感じがした。彼らはメダルを競うライバルという前に、上を目指す仲間たち、という意識なのかもしれない。うまく表現できないが、一番印象的なシーンだった。
■テレビのこととは違うのだが、石川県らしい報道もあった。ある朝の地元新聞を手にして驚いた。それはラッピング紙面?とかいう見開きの4ページを全部使ったカラー紙面で、地元出身選手の金メダルを報道していた。これぞ地元紙って感じだ。全国の地方紙も同じやりかたをするのかなぁ(笑)。そして、それが2日連続になったから、2度目はちょっと苦笑いした。
65歳のオッサンの記憶はこんなレベルだ(笑)。そういえばテレビでの「ニュースの鮮度」はとても短い。今ではもう、バラエティー番組に出演するとか、引退する選手の最後の雄姿としてオンエアされるとか、そんな感じになった。どれくらい人々の記憶に残るのかは分からない。
ちなみに今回の公式記録映画の監督は、あの河瀨N美さんらしい。記録というより彼女が手がけるドキュメンタリー作品として、とても興味深い。前回の市川K監督のやつに比べると制作費用も配給収入も、きっと桁違いになるんだろうなぁ。僕はこっちの方が一番楽しみだ。