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2022年03月04日

ファミレスのハンバーグ

いつだったか忘れてしまったが、まだ孫は生まれてない頃だと思う。里帰りした娘たちに聞いたことがある。せっかく帰ってきたんだから、何か旨いものを食べさせたい、そう張り切るオヤジを横目に、リクエストされたのは「わが家のハンバーグ」だった。
小さなハンバーグを何個も焼いて、大きな皿にど~んと乗っけて、ごはんと一緒に食べるやつだ。「一人何個食べていいの?」と、幼い姉妹がケンカ腰で取り合っていた気もする。行儀悪くごはんの上に乗せてパクつくような、そんな子ども向けのハンバーグだ。わが家の味、には間違いないが、ケチャップをウスターソースで割っただけだし、ひっくり返すと真っ黒に焦げてることもしばしばだったはずだ。
なるほど、思い出の味っていうのは、そういう風景のことなのかもしれない。

来る日も来る日もファミレスのハンバーグを食べていた時期がある。まぁそんなシゴトをしていたからだ。当時なら、これはどこそこのハンバーグだ、などと覆面審査で優勝できたかもしれない(笑)。
当時はファミレスの御三家ってやつがあって、でも金沢にはなかったから、名古屋や大阪まで車を飛ばして食べに行った。基本の味は三者三様で全く違っていた。すかいらーくのハンバーグ&エビフライというやつは不滅のヒット商品だったし、デニーズのデニーズコンボはアメリカそのものって感じだった。まぁ僕はロイヤルホストのやつが好きだったなぁ。
金沢で言えば、あっぷるぐりむのハンバーグが美味しかったと思う。それまでの地元のレストランは高くて行けなかったから、ファミレスが「家族のご馳走」の時代がすぐにやってきた。

いまのファミレスは、どこも元気がなくなった。栄枯盛衰の典型のような気もする。僕も使わなくなって久しい。でも、へそ曲がりな僕は、先日、近所のファミレス「C」で行ってみたくなった。ファミレスのハンバーグが食べたくなったからだ。実は、昔から食べているのに、ここのハンバーグに満足したことはない(笑)。僕が食べたいのはビーフ100%などという洒落たやつじゃなくて、豚の比率が高い(つまり色も白い)やつだ。やっぱりダメだったなぁ、と毎回のように思うのだが、何年か経つと、もしかしたら旨くなってるかも、などと無駄な期待をいだいて訪れることになる。で、今回もまた失敗したのだった。

このとき注文した「包み焼きハンバーグ」を食べながら、ある店のことを思い出していた。それは「つば〇グリル」という老舗洋食店で、そこの「ハンブルグステーキ」という代表メニューのことだ。
つば〇グリルは都内に何店かある。一番使ったのは品川のホテルの近所の店で、出張の時は昼も夜も通ったものだ。その後は恵比寿や丸の内の店にも行ったことがあるが、どこも昼時は行列の人気店だ。ハンブルグステーキは、いわゆるハンバーグのことで、メニューには何種類も揃っている。その代表が「つば〇風」という包み焼きのハンバーグなのだ。アルミホイルを切って開くと、たっぷりのビーフシチューが流れ出てきて、それをソースにして食べるやつだ。絶品だった。思い出すと、よだれが出てくる。
比較しても仕方ないのだが、ファミレス「C」は、それをパクったんじゃないのか?、などとファンが思っているに違いない(笑)。でも値段は違うから、どっちのやつがいいのかは、まぁ利用客が決めることだけど。
最近は、有名店の高級ハンバーグが再び大人気だ。オンラインで買うこともできる。でも、たまに食べたくなるのは、あのファミレスのやつなんだけどなぁ。

後日談だが、思い立って「つば〇グリル」の本物のやつをオンラインで買うことにした。まぁ冷凍品なのだが、ていねいな再現レシピも付いていて楽しい商品だった。ハンバーグだけじゃなくて、思い出したのは、なぜかニシンの酢漬け(ここの名物料理)や、丸ごとトマトのサラダだ。あぁ、またあそこでビールが飲みたくなってきた。僕の思い出の味というのも、そんな風景のことなんだなぁ。
この店 tsubame-grill.co.jp

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