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2022年06月10日

BARの夜話「父の日に贈るCM」

最近の「母の日」がうらやましい。父の日はその脇役のような位置づけで、ちょっと悲しい(笑)。でも子供に使った時間や手間や、注いだ愛情の深さを考えると、ぐうの音も出ない。
今回紹介するのは「テレビCM」のハナシだ。まぁ読み返すと結果的に古い古いウイスキーのCMのハナシばかりだ。そうだ、多分こんな年齢の酒飲みはきっと同じだと思う。それは洋酒メーカー「S社」のCMだ。

CMは広告のひとつだから、きっと新聞広告も雑誌広告もあったのだと思うが、テレビCMの記憶しか残っていない。最初に思い出したCMは、女優のO原麗子さんのやつ、つまりあの「レッド」だった。大好きな彼の登山用のリュックを、彼女が勢いよく蹴り上げるシーンがあったと思う(笑)。
考えてみれば、ウイスキーの名前(ブランド)ごとに広告があって、当時の俳優や女優さんを起用したドラマ仕立てで、ブランドごとに独特の世界観を訴求していたのだと思う。レッドで言えば、少し愛して長~く愛して、のようなキャッチフレーズとともに、世のおじさん達はそんなCMに魅了されていた。
僕の叔父さんもそんな一人だ。叔父さんは無骨な職人肌の人で、愛する奥さんと一緒に小さな工務店を営んでいた。奥さんは若くして亡くなり、3人の子供を育てた(娘2人は母親によく似た女性に成長した)。いつだったか忘れてしまったが、結婚式のスピーチに立った叔父さんが、なぜかこの「長~く愛して」のフレーズを入れたことがある。身近な家族からは失笑を浴びたが、若い僕にとってはとても印象深くて、叔父さんらしくて、いいスピーチだったと思っている。
このCMを観てほしいのだが、色々あるのでリンクは貼らず、アドレスだけ紹介することにする。アドレスをスマホの「検索」にコピペすればすぐに観れると思う。もしだめならYouTubeに入ってからコピペ検索すれば大丈夫。シリーズが順に観られる。https://youtu.be/ihGyD8PzTHc

S社のたくさんのブランドの中でも、一番記憶に残っているのは「オールド」だと思う。オールドは、僕たちの父親世代の高級ウイスキーだった。まだ輸入ウイスキーが高額で憧れだった頃、S社が総力を挙げて売り続けたブランドだ。
日本橋に支社があったS社が「二本箸作戦」と称して、寿司、割烹、料亭などの和食店に、オールドを浸透させていった逸話は有名だ。水割りとか、ホットウイスキーとか、そんな日本人的な「飲み方」がテレビCMで普及していったのだろうか。
昔のわが家の棚の中にもオールドがいつも1本だけあって、親父が大事にちょっとづつ飲んでいた。たぶん、僕が初めて飲んだのもオールドだと思う。親父に飲んでみろ、とストレートを渡された記憶がある。
日本の親父にとってのオールドは、大事な日に息子や娘と一緒に飲む酒だったに違いない。見つけたCMシリーズの親父役は渋い演技のK村準さんで、嫁ぐ娘とのエピソードがモチーフのシリーズだった。いいCMだなぁと素直に思う。ぜひ、このCMも観てほしい。https://youtu.be/ejU2a91y3YU

若い頃に粋がって飲んでいたウイスキーは、当然のことだが国産の安いやつで、映画か何かのCMの真似をして「ロック」で飲んでいた。だから社会人になって、カラオケスナックで出される水割りや、上司が頼むハイボールは、どれも「おっさんの飲み方」に見えて好きになれなかった。ところが10年ほど前から、これまたS社の奮闘によって「ハイボール」が、今度は若者の飲み方として大ヒットした。角瓶のCMでは女優の〇川遥さん(魅力的なママ役)がカウンターで作り、美味しそうに飲む姿がステキで、若い人にも受けたのだと思う。
このCMはみんなよくご存じだと思うが、あらためて観ると、グッとくるよ。https://youtu.be/Z3bhyn90ngk
実は去年の父の日のN経新聞?に、角瓶を抱いた彼女(〇川遥さん)の一面広告が掲載された。コピーは「お父さん。あのね、」で始まるショートストーリーで、最後は「父の日、角の日。好きでしょ角ハイボール」で締まる。いい広告だった。
若者にとっての素敵なママは、今のシニアたちにとっての娘、という設定だと思う。娘二人の僕は、こうしてすぐにひっかかった(笑)。でも娘からこんなことは言われないし、角瓶が届くこともない(笑)。まぁ、息子がいたなら、O栗旬くんがボトルを持って父(H野正平さん)を訪ねるあのCMに心惹かれるってことだろうか。

いろいろあって、僕は最近、ウイスキーのソーダ割り(ハイボール)を飲むようになった。好きじゃなかったハイボールを飲むようになったのには理由があるのだが、面倒くさい話なので割愛する(笑)。僕のハイボール専用の銘柄はDewar’s(デュワーズ)という、ずいぶん安いスコッチだ。ちなみにS社の商品ではない。
ある日、ハイボール党の某から「ハイボールに使うウイスキーは、特徴のない安めのやつの方が旨いんだよ」と、このウイスキーを教わったのがきっかけだ。こんな古いCMのことを思い出してからは、大好きなアイラのシングルモルトはお休みして、角瓶とかオールドを買って、ハイボールを作って遊んでいる。でもCMのように美人ママが作るハイボールとは違って、オヤジが台所で作るわけだから素敵なシーンになるはずもない。
ロックグラスにたっぷりに氷を詰め込んで、ギリギリまでソーダを注いで、口を近づける。カッコ悪いが僕はそんなコップ酒みたいな飲み方が好きだ。そうそう、オールドを試すのなら「お湯割り」を薦める。なぜか抜群に旨いのだ。僕ももうオヤジ臭くなった証なんだろう。
たまたま今月は、亡くなった父親の命日だから、墓参りにオールドでも持って行ってやろうか、などと考えたりする。

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