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2023年06月02日

ハッピーフライトってやつ

いつだったか、ユニークな企画を連発する「バス会社」を紹介するテレビ番組を観た。最初に引っかかったのはスカイバスという、2階建てバス(オープンエアのやつ)の映像だ。最近、国内のいくつかの観光地の「商品」として登場しているバスだった(確か富山のアルペンルートにも就航したはず)。
知ったのは2年ほど前のことだ。見つけたのは紅葉の奥入瀬渓流を走る企画で、手が届くほど近くで紅葉を楽しめるやつだった。すげ~、と思った。2階席には屋根がなくて、風を感じながら走るバスだから、こんな「コロナの時期」に面白いバスが登場したなぁ、などと(仕事柄だが)興味を持っていた。
その後、日本各地の観光地で同じバス(ある意味で特殊な車両だ)の企画が登場したから、このバス車両は(たぶん高額なのに)売れてるんだ、と思っていた。つまり車両を「販売」している自動車メーカーをイメージしていたのだ。でも違っていた、このバス会社が貸し出していたのだ。このレンタルは、おそらく大当たりしている笑。

こんなバスを使った面白い企画やコース設定がたくさんあるのだが、なぜか興味を持ったのは「空港の制限エリア」に観光バスで乗り入れる、というやつだった。空港は(建物以外は)入れないし、間近で見れない場所やモノも多い訳で、やっぱり興味をもってしまう笑。
格納庫も整備エリアも、タグ車でけん引される荷物の行方も面白そうだ。空港にしかない特殊な車両はどれも興味深い。いつだったか、幼い孫たちと一緒に開いた「はたらくくるま」図鑑の空港編は、ジイジにとっても面白いのだ(孫の反応は薄かったけど)笑。
東京を訪れるインバウンドには(いや日本人もそうかな)、あの「はとバス」が人気らしいが、団体客が消滅して、個人旅行が主体になった現代では、こんなユニークな企画こそ観光なんだと思う。

その日は、羽田空港で乗り継いで三沢空港まで向かう旅だった。羽田着から、三沢便までちょうど30分だから、乗り継ぎの無駄な待ち時間もないと思っていた。
しかし、小松の搭乗待合室で、羽田便の出発時刻が遅れることを知った。たしか10分ほどの遅延だったから気にしなかった。機材の到着が遅くなってるとかいう理由だった。まぁ、小松ではよくあることかもしれない。もしかすると、着いた羽田空港で少し早歩きしないとダメだめかなぁ。そんなことは、かつての出張族のときのアルアルだった。
ところが、まずいことは重なり、小松空港の滑走路が混んでるとかの理由で離陸が遅れ、乗った便が羽田に着いたのは、結局、三沢便の出発時刻の10分前だった。つまり乗客の搭乗時刻を過ぎている。アウト?ギリギリセーフ?、おそらく地上係員と一緒に全力疾走かもなぁ、などと笑うしかなかった。
シートベルトのサインが消え、乗客が立ち上がった頃、やっぱりアナウンスが流れた。「乗り継ぎで三沢空港へ向かうお客様は、地上係員にお申し出ください」、ある意味で、よく聞くアナウンスだが、今日の当事者は僕たちだ笑。ハッピーフライトという古い映画を思い出した。

空港の建物と飛行機をつなぐ橋のような通路を「パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ」というらしい。遅れて申し訳ありませんと笑顔で繰り返す客室乗務員を横目に、ブリッジを2mほど進んだところで、地上係員の女性が待っていた。おいおい全力疾走はここがスタート地点か?、66歳なんだけどなぁ。
ところが彼女は想像してない行動をとった。すぐ後ろのチェーンを外して「こちらから進んでください」と言う、そこは真下に降りる階段だった笑。下では男性職員が扉を開けて待っていた。出た場所はコクピットの真下あたり、ブリッジの車輪の真横で、そこに1台のバンが待機していた。この車で三沢便に乗り付けるらしい。
空港にはたくさんの車両が走っているが、もちろん信号機はない。交差点らしき場所もあるから、何らかのルートや秩序(約束事)があるのだろう、走行はスムーズだ。もちろん追い越しは禁止らしくて、前方を走る大きな車両に追いついても、そのあとをノロノロついていくしかないようだ笑。
右へ左へと進むうちに、観たことのない場所を順に通った。車からの目線は低いから、こんなアングルで空港の設備を観ることもなかった。そうだ、あの「観光バスの企画」ってのは、きっとこんな感じなんだろう、などと子供のように車窓を眺めていた。こんなハプニングなら楽しい笑。

ほどなく僕たちは、今度は三沢便のブリッジの下に着いた。着くなりドアが開き、外へ誘導された。再びブリッジの階段を登り、いったん搭乗口でQRコードをかざすのだが、「走らなくても大丈夫です」と、さっきの彼女が笑顔で声を掛けてくれた。そして何事もなかったようにシートについた。
その昔、羽田空港(建物)と小松便(機体)間の移動はバスだった時代がある。タラップを使っていた時代だ。だからバスの車窓から空港の景色を観ていたはずだが、こんなに快適だった(今回は楽しかった)訳ではない。今日のように、便の遅延が多いのは変わらないが、乗客への配慮(ある意味で気付かないサービスかな)は格段に向上したのかもしれない。何度も空港ロビーを走った経験を持つ者にとっては、ちょっと嬉しい出来事だった。
ちなみに、乗継便はほぼ定刻に(だったと思う)三沢空港に到着した。ちょっとドキドキしたが、小松で預けたトランクは、ちゃんとターンテーブルから出てきた笑。こんなトラブルがあっても、人間だけでなく荷物もちゃんと運んでくれるのだ。海外では何度も痛い目に合ったのだが、日本の航空会社はさすがだなぁ。
もしこれが「サービス」なら、あのドライバーさんに、空港施設や特殊車両のことを教えてもらえば良かったかなぁ。特殊車両の名前が思い出せないから、また「はたらくくるま」図鑑を観なきゃならない笑。

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