モーツアルトを聴いてる「うどん」
店の駐車場に着いたのは10時半くらいで、まぁ狙い通りだった。すでに4台ほど停まっていた。そして順番待ちのボードに名前を書く。これは6番目だった。開店時刻まで1時間弱あるのだが、そうしないと1回転目には入れない。
週に4日しか営業しないという不思議な店で、日曜日はなぜか「キーマカレーうどん専門店」になる、という謎の店だ笑。店名は、讃岐饂飩宏〇輔という。名前の通り、美味しい讃岐うどんの店だ。
先週の福井の蕎麦では炎天下のベンチで待つという失敗をしたから、今日は準備万端だった。今日も暑いのだが、車の中でこのまま待つことにした。まぁ快適な待ち時間だ笑。
開店の15分くらい前になると、一人の女性スタッフが駐車場に出てきて、ボードの名前の順に注文を取り始める。店頭にメニューボードが貼ってあるから、そこで選ぶ感じだ。そして定刻、やはりリスト順に店内に誘導してくれる。
そもそも僕は「うどん」に目がない。いろいろ訳あって、30代後半の頃、うどんにハマっていた。全国にうどん文化があるのだが、行きついたのは結局ベタに讃岐うどんだった。
まぁ変わり者だから、ハマる=旨いうどんを「サイエンス」する、まぁそんな感じになった時期がある。だから今でも語ろうと思えば語れるかもしれないが封印している。だって友人は失いたくない笑。
40代になるころから、興味は「蕎麦」の方に移っていった。理由のひとつは単純で「身近に旨いうどんがない」というだけだった。旨い蕎麦店は次々に見つかった。お気に入りの鶴来の某は、もはや僕たち老夫婦の暮らしの一部だ笑。金沢もそうだが、蕎麦は上手に探せば「旨いやつ」を全国どこでも食べられる。
そののち、ときどき思いついたように旨いうどんが食べたくなると、高柳にある「香〇ぎ」という讃岐うどんの店に向かった。まぁ「そこ」と今日の「ここ」の2店が、金沢の旨いうどんの双璧らしい。
ちなみに、旨いというのは個人の主観に過ぎないから、あんまり店をおすすめすることはない。だって、僕は変わり者だからね、その自覚は持っている笑。
さて、カウンターの席に座ってから15分、ようやく注文の品にありついた。事前注文は、先に作り始めるためではなく、段取りのためだったようだ。うどんも天ぷらも鮮度が命だ。出来立てを出すのが店の信条なのだろう。
店内には、たくさんの情報が貼り出されている。そのほとんどがメニューだ。まぁ町中華みたいなイメージかな笑。今のうどんチェーンなら、並んでいる天ぷらなどを皿に取る仕組みだが、つまり揚げ置きってことだ。この店の場合は、それがすべて単品注文で、つまり揚げたてを出す。
そして大事なのが「うどん」だ。少し変わった表現かもしれないが、ここのやつは実に「ちゃんとした」うどんなのだ。つるつる感や、しこしこ感にはファンそれぞれの好みがあるのだが、いわゆる王道のそれは、やっぱり美味しい。変に個性に走らないのが嬉しかった。
それは店全体に言えることで、店主が大事にしている基本的なことを、スタッフもみんな大事にしている気がする。そんな店はやっぱり、いい店だ。見つけたサイトには、この店は「海水でこね、足踏みを加えて、モーツアルトを聴かせて一晩熟成する」と書いてあった。真偽はわからないが、店主の心構えみたいなものを感じる。まぁ民謡や演歌だったらちょっと困る笑。
帰りがけのとき、玄関を出た軒下の土間のあたりに、小さな箱が置いてあることに気付いた。中にはドライフラワー?みたいな、枯れた草木の切り枝が入れてある。いったん外へ出たのだが、ふと気になって振り返ったとき、しゅ~っと目の前を通って飛び去る影があった。つばめだ。
軒下に戻って上を見上げたら、つばめの巣があって、ひなのくちばしが動いていた。真下の箱は汚れの対処なのだと気づいた。飲食店としての賛否はあるのかもしれないが、きっとこの店には、そんな優しい店主のファンが多いのではないかと思った。
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