ただ飲みたくて「いろいろ試してみたら」
かすかな流れに乗って、静かにプカプカ浮いてる「それ」を見ていて、あれだアレ、と言いたいのだが、急に名前が出てくるわけではない。最近はホントにそんなことばかりだ。
その昔、CMで有名になった、当時は流氷の天使?とか、氷の妖精?とか呼ばれた「クリオネ」のことだった。ようやく名前を思い出したのは何日も後のことになる、やれやれ笑。
とはいえ、目の前の「それ」は、そんなキレイでカワイイやつではない。なにより色が違う、茶色なのだ。フツーの人なら「茶柱」に似ていると言うだろう。お茶の表面に立ったまま浮かぶ(まぁ中に沈んでることもあるけど)そんなアレだ、お茶の木の茎かな?。でもこれは茶柱とはカタチが違う。何より太くて丸くて、浮いているアタマの部分が大きくて、ウデみたいな部分もあるのだ。つまり僕が「それ」を見てイメージしてしまったものは、クリオネのミイラ?、あるいはクリオネのサナギ?ってことだ。
そんな、四苦八苦しながら考える僕に、家内は静かに、なんか虫みたい、と言うだけだ。ま、まぁまぁ、そうかな、と僕の妄想はしぼんでいった。
茶色のそれ(クリオネのサナギ、または大きい茶柱、もしくは小さな虫)が浮かんでいるのは、大振りのロックグラスで、同色の液体の正体は、ホットウイスキーだ。「それ」の正しい名称はグローブ(丁子)、つまりハーブスパイスの一種だ。
やかんで湯を沸かし、それを注いでグラスを温め、湯を捨てて今度はウイスキーを適量入れる(僕の場合は45ml)、そこにグローブのホールを1個落として、再び湯を注ぐと出来上がる。量の目安は1:3~4くらいがいい。濃いめがいいなら湯を減らし、薄くするなら多くする。
注いだ熱湯の勢いで、グローブはグラスの淵あたりを静かに泳ぎ、熱いウイスキーに独特の「丸み」を加えてくれるのだ。これが旨い。
ウイスキーとお湯の割合のことを書いたのだが、実はお湯の温度も大事な要素で、まぁ大げさに言えば、それに至るまで、いくつもの実験プロセスがあった(まぁお笑いだけどね)。僕は、こういうことを突き詰めてやってみるのが好きなのだ。
実験とはいっても、ホットウイスキーを飲むのは真冬の時期だけだし、飲むのは1杯(まぁ2杯のこともあるけど)だけだから、その場でAとBを比較したりはできないわけで、あくまで感覚的なことばかりだ。なにしろ前日に飲んだ味など覚えているわけがない笑。
それでも、ウイスキーはサントリー「オールド」に行きついた。だから、わが家にはオールドがある。言ってしまえばホットウイスキーのためだけに買ってあるのだ。アイラ中心のシングルモルトや他のスコッチ、バーボン、ちまたで推奨される角瓶とか、いろいろ試した結果がそうなった。
グローブ以外には、シナモンスティックやジャムやはちみつ、レモンや生ライム、自宅にあるものばかりだが、ほぼ失敗を繰り返した。まだ試してないのはバターと胡椒くらいかな。で、ここまでに2~3年かかっている笑。
そして今年の冬は「温度」を試している笑。世の中では80度くらいがいいとなっていると知り、さっそくデジタル温度計を引っ張り出して、あれこれ測ってみることにした。自宅にはいわゆるウオーターサーバーがあって、そのHOTの方はズバリ80度だった。でもこれで作ると、ずいぶんぬるいと気づく。つまり冷めるのだ。それを知ってから、やかんを使って沸騰させた白湯を使うようになった。
やかんの熱湯は、理論的には100度だ(使うときにはもう下がっているけど)。グラスは温めてもウイスキーは室温だから、出来立てはちょうど80度前後になる。とはいえ、測ってみて知ったのだが、湯の温度というものは、秒の単位でどんどん下がっていく。つまり、僕のホットウイスキーは作った直後がベストで、あとはどんどんぬるくなるのだ。そんな熱いやつを一気に飲むわけもないから、飲んでる大半はぬるいやつ、ということかな。まぁこれが今のところの到達点だ、だから今年の実験はこれで終了だ。
今夜も、僕が懸命に作った渾身の一杯を、家内はすかさず手に取ってフーフーしながら、ひと口飲む。美味しいねぇ、と一言いうのだが、僕が台所であれこれドタバタやっていることには、もちろん何の興味も示さない笑。そんな「ベスト」を取られた後に飲むわけだから、僕が飲み始めるのは75度くらい、ってことだ。まぁそれでも十分旨いけどね。
さて、次の実験は何にしようか。目の前には、先日もらったばかりのチョコレートがあるのだが、そうだ、次は合わせる「つまみ」ってのはどうだろうか。僕の実験は、これでまた続くことになる。