しっぽの回し蹴り
ゴジラの靴を履いて授賞式の壇上に立った山崎さんは、とても嬉しそうだった。そんなニュース映像が大量に流れてた。その後しばらくの間、山崎さんは引っ張りだことなり、盛んにメディアでインタビューされていた。
予告編のワンシーンが繰り返し流れ、視覚効果賞の解説や、制作の舞台裏とか苦労談が続く。まぁどこも同じような視点だが、概ね受賞を称賛する内容だった気がする。
そもそもゴジラに興味のない僕は、その映画を観にいく理由もきっかけもなかった。とはいえ、米アカデミー賞ノミネートの話題が沸騰した頃から、万が一受賞したら観にいこうか、などと思うようになっていた。
そんな心境の変化は庵野さんのシン・ゴジラからかな。あのときも遅れて観に行くことになった。話題作だから、と言ってしまえば、まぁそんな単純な理由だ。たくさんのファンがいる映画は、ファンのために頑張るから、きっといい作品に仕上がるはずだ。
そういえば山崎さんは、庵野シンゴジラを強くリスペクトしていて、その作品を越えたかったと語っている。やっぱりそういう気持ちが作品のレベルを上げていくのかもしれない。
そんな受賞フィーバーが落ち着いた頃、ようやく僕も観に行くことにした。これがけっこうおもしろかった。
ちなみに山崎監督のゴジラは「マイゴジ」、庵野監督のそれは「シンゴジ」と、ファンは呼ぶのだそうだ。春休みにやってきた幼い孫たちがそう教えてくれた。マイゴジ?、あぁマイナス・ワンのゴジラってことね笑。
マイゴジの映画を観てきたんだと言うジイジに、孫たちはさかんにマイゴジとシンゴジの違いを説明する。それは専門家みたいな解説だからジイジは話についていけない。特にゴジラの武器のことなどはチンプンカンプンだ。ジイジは「しっぽの回し蹴り」しか記憶にない。
驚いたことにマイゴジは戦争の映画、シンゴジは自然災害の映画らしい。なるほど、そうかもなぁ、君たちの知識には脱帽だ。
それ以外にもアースゴジラってやつがいて、こいつはさらに凄いらしい。体長や体重のスペックを駆使しながら、孫たちの熱弁が続いた。彼らはYouTubeを駆使して、シリーズゴジラの比較研究をしているようだ笑。恐竜がとても好きなだけだと思っていたのだが、どうやら次々に登場するゴジラキャラも新しいキングギドラも、恐竜博士にとっては同類なのかもしれない。
シネコンでは、1日1回だけの上映が細々と続いていた。観客は意外にもシニアのご夫婦が多かった。こんな時期の観客だから、理由は僕と同じではないかと思う。たぶんアカデミー賞効果ってことだ。
すでにメディアでいろんなことが公開されているから、ここで何を書いてもネタバレにはならないのかもしれないが、マナーとして内容は伏せることにする。
ゴジラは「ファンタジー」なのだが、それ以外はリアリティーを大事にした映画でもある。だからVFXをはじめ楽しめる要素やシーンはいくつもある。けっして子供向けのそれではない、ということかな。
ちなみに「しっぽの回し蹴り」以外に、僕の記憶に残っているのは、実はエンドロールだ。最後の最後まで山崎さんの企みが散りばめられていて、とても印象的だった。