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2024年04月26日

発泡のロケット噴射

この日の夕方、近くの酒屋さんで1本の日本酒を買ってきた。ちょっとした訳ありの酒だ。その酒はいわゆる微発泡酒というタイプで、発酵由来の炭酸ガスが残ったやつ、しかも生酒だった。知らない人にとっては「シャンパン」をイメージすればいいと思う。
買った1本は、ラベルも派手なオレンジ色だから、見た目も日本酒らしくない。出来立てのフレッシュ感を楽しむタイプの酒だ。シャンパンは蓋のコルクがポ~ンと強く発射するから注意が必要だが、日本酒の場合はプシューっと音を立ててガスが抜ける程度だから、普通に扱えば心配はない。でも、この日の僕は、この酒に対して「普通ではない扱い」をしてしまったようだ。

食卓で、いざ封を切るとき、いつものようにガスを抜こうとした。ところが、ガス圧は想像以上に高かったらしく、蓋はロケットのように一気に天井まで吹っ飛び、ぶつかって勢いよく落下してきた笑。おまけに、瓶をドスンと置いてしまい、今度は中の日本酒が吹き出してしまった。
まぁシャンパンでの失敗に似ているが、缶ビールを2~3度振ってから開けたような感じに近い。そんなに乱暴に扱った訳じゃないのになぁ。こんな時はもう笑うしかない。むしろ楽しい科学実験だったと言い聞かせることにした。
たまたまこの日は、串本町(和歌山県)のロケットの発射失敗のニュースで沸いていた。過去にもコロナやウクライナ問題(部品調達)で何度も延期を繰り返した民間ロケットだが、前回も今回も不運としか言えないニュースだった。そんな大事件と僕の失敗を重ねるのは申し訳ないのだが、跳んだ蓋にロケットをイメージしてしまったのは、そんなことだった。
ちなみに、この日本酒の残りは、きちんと蓋をして冷蔵庫に立てて保存した。ところが翌朝になると再び蓋が跳んでいた。生酒だからかもしれないが、発泡のいたずらは翌日まで続いたようだ笑。

さて、この酒を買ったときのハナシに戻る。冒頭に述べた「訳ありの日本酒」のことだ。少し書いておこうと思う。
今日は何がおすすめ?、どんなやつが入荷してる?、そんな酒屋での僕と店主の会話は、いつもと同じセリフなのだが、実は意味していることが全く違っている。買い手の僕と売り手の店主が言ってるのは「復興支援関連の日本酒」つまり応援酒のことだ。
被災して大打撃を被った能登の造り酒屋(酒造メーカー)への支援は、あの直後から、店頭での支援金や義援金の募集というカタチで始まっていた。その後は助ける側の仲間たち(造り酒屋)が、たくさんのアイデアを独自に実行し始めた。各蔵それぞれの支援だ。
たとえばこの日、店主に教えてもらい、僕が買った微発泡の日本酒は、白山市のメーカーの商品だが、1本売れるたびに、売上から1000円(ざっくりいえば半額)を支援金にまわすという、驚くような試み(応援酒)だった。ラベルの表にも裏にもそんなメッセージが添えられている。

そして、最近になって「つなぐ石川の酒」というシリーズが酒屋さんや飲食店に並ぶようになった。ご存知の同級生もいるかもしれない。下の写真はそのパンフレットだ。要するに石川県のたくさんの蔵元がこのプロジェクトに参加して、被災した蔵元を支援する試みだ。
中身の酒は蔵元によるから酒質も本来価額も違うのだが、それに統一されたラベルを張って、ほぼ一律の売価で販売するものだ。そして1本あたり200円を見舞金として拠出するようだ。頑張ってほしい。
いま僕が飲んでいるのは大吟醸のそれだから、ずいぶん安く買っている気もする。ちなみに、こいつは火入れだから噴射の心配はない笑。

さて、被災地の支援について、とやかく言うつもりはない。さまざまな考え方があって当然だし、人によって思うところや「やり方」は違っていていいと思う。ここに書いたのはある業界のひとコマに過ぎない。みんな個人の立場でできることをすればいいよね。

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