めだか、万願寺、夏の空、夕焼け
この日もずいぶん多くの人が開店時刻を待っていた。店の前にはベンチやパラソルがけっこう並んでいて、誰もが座って待てるのだが、今日は明らかに人が多い。鶴来の山里だから草木も多くて、だから足元には蚊取り線香が焚かれている。あの豚のやつだ。
湧き水が流れる小さな用水路あたりに、水草が浮いたカメが置いてあるのだが、よく見ると水草の横を「めだか」が元気に泳いでいる。いまではもう珍しくなった夏の匂い、夏の景色なので、ちょっと嬉しかったりする。
蕎麦屋だから、そばと一緒にだし巻きとか天ぷらとかを注文すると、先にそれが出てきてしまう。それが蕎麦屋の流儀ってことかな。先に一杯やる人がいるから、そんな順番になるのだと思う。
車の僕はもちろん酒は口にしない。だからホントは蕎麦と一緒に食べたいのだが、注文の時にそれを言い忘れる。でもまぁ、前菜だと思って先に食べれば、変化があって豊かな蕎麦時間ということだ。
そういえば、今日の天ぷらには、「万願寺とうがらし」やオクラが入っていた。まぁ夏らしい野菜ってことだ。万願寺はもちろん辛くはないし、やっぱり旨味があって美味しい。そういえば今年初めて口にした。もしかすると高騰してるのかな?。
夏の楽しみは、茄子蕎麦だ。いわゆる冷たい「ぶっかけ」で、蕎麦の上に揚げた茄子とか大量の薬味(みょうがと大葉)が積み上げられている。茄子は冷たいオランダ煮のようなイメージだが、野菜感が残っていて美味しい。香りづけの胡麻油がいい仕事をしている感じだ。
帰路に見上げた夏の空に、無数の何かが浮かんでいた。一瞬、鳥の群れかなぁと思ったのは、すべてパラグライダーだった。近くの獅子吼高原のやつだろう。こんなにたくさん浮かんでいるのは見たことがない。
きっと上昇気流とかの条件がいいのかもしれない。想像するしかないのだが、あんな夏の空を飛ぶのは、きっと気持ちいいんだろうなぁ。
ちょっと興味がわいたからハンドルを切って、獅子吼高原のゴンドラあたりを目指して走った。山へと昇る途中、ランディングしてくる(降りてくる)やつもあって、なかなか見ごたえがある。飛んでるのはあんなに多いから、きっと空も、地上のランディング場も渋滞に違いない笑。
たしか1万円ほどの料金でインストラクターと一緒に体験フライトできるらしい。年齢制限とか体重制限とかあるのかなぁ。
こんな夏の日の夕方、庭に出ると、はるか向こうの山側の住宅地の家々が、やや赤く見えることに気付いた。陽が沈む海側とは正反対の方向だから、海の夕陽が照り返しているのかも、と気づいた。
玄関から出て海側へ歩くと、太陽はちょうど水平線に沈み始めたタイミングで、実はそれが一番きれいな一瞬だった。夕陽の撮り方はスマホの性能に任せるしかないのだが、スマホはその一瞬を上手に切り取ってくれたようだ。
昼間の真っ青な夏空も、この時刻の真っ赤な夕焼けも味わえて、今日はなんだか、とてもついている気がした。