散歩の途中で「旅の初心者だった頃」
秋の日光ぶらり旅その1
日光にやってくるのは、ざっと50年ぶりだった。正確に言えば20歳そこそこの若造だった頃に来て以来だから、計算すると46~7年ぶりということかな(まぁ四捨五入の50年だ笑)。いきさつは覚えていないが、初めての京都も同じころだったから、旅の初心者だったのは間違いない。
京都は若くてもちゃんと遊べる街だったが、日光には全く歯が立たなかった。覚えているのはベタに東照宮と華厳の滝、そして何より、間違えて泊ってしまった日光K谷ホテルのことだ。このホテルは格式も高く雰囲気も重々しくて若造の知らない世界だった。だから若い僕たちはおちおち食事もできなかった笑。つまり良い思い出がない。
こんな年齢になり、それなりの場にも慣れたから、当時のリベンジを果たそうと思って調べたのだが、この老舗ホテルにはもう当時の栄華は感じられず、興味を持てなくなってしまった。だから宿は別に選ぶことにした。いまさら初心者に戻れるわけもない。
当時の記憶は全くないし、観光スポットのイメージも、ほぼメディアに紹介されるものしかない。つまりここ日光は、ほぼ初めて訪れる有名観光地に過ぎない、そんなことになる。
この日着いたのは13時ごろだった。あいにくの雨ということもあって、日光の駅(JR日光駅)はとても質素で活気がないように見えた。日本有数の観光地なのに不思議な第一印象だった。それはメイン通りも同じで、とても地味で人影もまばらなのだ。日光は、おそらく様々な建築規制や景観条例が厳しいのだと思う。なにせ世界遺産の街だからね。
駅からタクシーで10分ほどで、この宿に着いた。いずれ泊ってみたかったブランド宿が、日光にもあったのだ。宿の敷地は元御用邸の関連施設の跡地らしく、木々に囲まれたとても静かな場所だった。
正面から見えるのはエントランスだけだが、期待させるような雰囲気があった。敷地は広いが、わずか24室のラグジュアリーな宿らしい。その広いロータリーの車寄せに車が進むと、若いスタッフが走り出てきて笑顔で迎えてくれた。
まず荷物を預けようと思っただけなのだが「どうぞこちらへ」とラウンジへ案内された。部屋へは入れないがチェックイン手続きはできるらしい。香りのいい冷茶が供されて、ひと息つくことができた。
みごとな庭に面したラウンジで、一服しながらの手続きが終わり、タクシーを呼んでもらおうとしたのだが、とても時間がかかるという。後から知ることなのだが、週末の日光は「大渋滞」で有名らしい。しかも紅葉の時期のそれは半端ないのだそうだ笑。遅い理由もそれらしい。
旅の初心者のころは、ほぼ無計画だった。まぁオトコの旅は無計画の方がカッコイイと勘違いしていたのだ。それがこんな年齢になると、今回が人生最後の訪問かもなぁと思うようになって、なぜか事前にいろいろ調べるようになった。
旅先での様々な出会いは一期一会だから、無駄に過ごしてはいけないと思うようになったのかな。昔に比べれば知的好奇心が旺盛になったとは思うが、こんな年齢だから欲張らず、ほどほどに、だ。
旅の経験値は増えたが、まだまだ上級者という訳でもない。まぁ「初心者の旅」は、長い年月を経て「高齢者らしい旅」になったのかもしれない笑。
今から向かうのは、ユネスコ世界遺産、登録名称で言えば「日光の社寺」いわゆる日光山内(さんない)だ。事前にちゃんと時間をかけて予習してきた笑。とはいえ様々な文化財が目的という訳でもない。最近は「隠れた歴史」や「怪しい伝承バナシ」の方に興味がある。
今日はず~っと雨らしい。初心者だった若い頃は「傘をさす」のが嫌いだったから「散歩はやーめた」となったかもしれないが、今では「そんなこともあるよ」と受け入れる。雨なら雨で、普段と違った楽しみ方もあるものだ。
さて、ようやくタクシーが到着したようだ。そうだ、トランクから折畳み傘を出しておかないと。傘嫌いだった僕だが、最近になってそんな準備をするようになった。これも歳ってことだ笑。