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2019年02月09日

散歩の途中で「東京おっさんぽ」

僕は食いしん坊だ。食いしん坊の旅は、行き当たりばったりで、興味本位に食べたいものを選ぶので、半分以上は失敗に終わる。だから、誰かと同行するときには気を使う。なるべく失敗しないようにと考えてしまう。そんな僕のことをよく知るK中くんは、散歩の目的地を任せてくれた。行先が失敗に終わっても、それはそれで、楽しい旅なのは間違いないからだ。さあ、幼なじみ二人の東京おっさんぽの始まりだ。夜の東京27期の新年会まで、あちこち散歩しながら楽しもう。大手町のホテルに荷物を預け、僕たち二人は日本橋へ向かった。チェリー嬢(Hさん)が到着・合流するまで時間があるから、コレド室町の近隣をぶらぶらすることにした。

ビルの谷間の福徳神社
二人がまず向かったのは茅乃舎(かやのや)。色んな「だし」の専門店だ。真っすぐ「ミックス塩」の売り場へ向かい、お目当ての「バジルとガーリックのソルト」を買った。所要時間わずか3分、これで東京土産が完了した(笑)。そして日本橋ランチの穴場を探して、裏通りへ向かった。さっそく店頭の行列を見つけた。古くから愛されているレトロな下町の洋食屋「桂」だった。サンプルケースには色あせたハンバーグやオムライスが並んでいて、食いしん坊には妙にそそられる。近くのビルの谷間に新しい神社がある、すごい存在感だ。福徳神社と書いてあった。たしか復活した、富くじで有名な神社のはずだ。お参りすれば宝くじの運気が上がるのかもしれない(笑)。K中くんはここでも御朱印をゲットしていた。彼は御朱印帳を持参する本格派だ。

はせがわ酒店の博多うどん
福徳神社の境内の横に、ガラス張りのカフェのような店を見つけた。看板サインには「はせがわ酒店」とある。日本各地の地酒の蔵元が、取り扱いを求めて集う、日本一の酒屋さんだ。例えるなら「地酒日本酒の甲子園」のような聖地だ。あのおしゃれなカウンターで、地酒の利き酒ができるはずだ。さらに店頭には「博多うどん」の登り旗が立っていている、おしゃれな酒屋がランチにうどんを売っている様子だ。合流したHさんを伴い、三人はさっそく興味本位で中に入った。細長い店内は、壁面に冷蔵ショーケースが延々と並び、中に並んでいるのは日本全国の地酒などが700種類とか、どれも旨そうに並んでいて圧巻の景色だった。
日本橋で、日本一の酒屋で、なぜ博多うどんなのか、疑問は残るのだが、3人それぞれ別のうどんを注文し、おすすめの地酒を選んだ。「ごぼ天うどん」は名前の通り、太いゴボウの天ぷらが乗った熱々のうどんだ。博多うどん特有の、腰のない柔らかなうどんと、少し甘めの出汁が優しい味だった。飲んだ地酒は、山形の上喜元(じょうきげん)の中汲み雄町生酛を冷やで、そして山梨の七賢(しちけん)純米のぬる燗だ。この場所で飲んだら、旨いに決まっている(笑)。

無機質なコンクリートの街
次の目的地は豊洲市場だ。新橋から何年かぶりで「ゆりかもめ」に乗り、行列覚悟で豊洲市場へ向かった。乗ったのは先頭列車の最前列で、レインボーブリッジ、フジテレビ、そして巨大なガンダム像など横目で見ながら、豊洲の市場前駅へ向かった。
日本全国に「魚市場」がある。どの市場にも、働く人たちの活気や掛け声が響いていて、その胃袋のための食堂や寿司屋がたくさんある。さらに一般客が、その店を目的に集まり、活気のある街になっていく。築地市場はその典型のようなところで、迷路のような奥にも人々の活気が充満し、独特の空気感となっている。
でも豊洲市場は違った。コンクリートの建物が並ぶ、無機質な街だった。巨大な建物の外にも中にも長い廊下が続き、その一角に、テナントとして整然と飲食店が並んでいる。新しくて、明るく清潔で、人もたくさん並んでいるのだが、とにかく静かなのだ。だから無機質な冷たい空気が漂っているように思えた。いわゆる「失敗」を自覚したのだが、僕たち3人は、隅から隅まで歩いて、まるで掛け合い漫才のように、文句を言いながら(笑)、でも楽しい時間を過ごしていた。

時代の代名詞となったカフェ
いったん門前仲町に降りて、その足で隣の清澄白河へ向かった。目的地は、珈琲マニア垂涎のカフェ「Bルーボトル」だ。シンプルな外観で、壁にロゴマークがあるだけ。まるで焙煎工場の中で、立ったままコーヒーを楽しむような店だ。
このカフェの価値は、僕たちオッサン世代には分からない。ストレートコーヒーは死語になり、ここではシングルオリジン(農園単位のコーヒー豆)が流行りだ。さらに、エスプレッソマシンによるバリエーションコーヒーもあるが、時代はハンドドリップなんだという(笑)。オッサンには昔のスタイルに見えるだけなんだけどなぁ。どうやら、売っているのはコーヒーという「モノ」ではなく、コーヒーを「観て」楽しみ、ディープなコーヒーの世界を語る「コト」なのだそうだ。旨いコーヒーではなく、コーヒーの個性を味わう、ということらしい(笑)。

そろそろ日が暮れてきた。珈琲のややこしい話に疲れてしまった。初日の「おっさんぽ」は終了だ。付き合ってくれたHさん、半日ありがとう。さあ門前仲町に戻って、27期の仲間と新年会を楽しもう。

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