toggle
2019年05月31日

表参道の判官びいき

押し寿司はお祭りの時の食べ物のような気がする。笹で巻いてあって、それを開くと、赤い干し海老と青いテングサ?(紺のり?)が貼りついていて、ひっくり返すと、鯖の切り身が、酢飯にめり込んでいる。酢飯には刻んだガリが入っていたような気もする。芝寿しの前を通ると、ときどき笹寿司が食べたくなるのだが、個人的に好きなのは、タマばあちゃんが作っていた素朴な押し寿司だ。毎年毎年楽しみしていて、だけど毎年その味が違っていて、気分屋の彼女の人柄のような気がしていた。

白山比咩神社の表参道の駐車場に「おはぎや」というお土産もの屋さんがある。昔から参拝客の休憩所として活躍しているのだろう。地元周辺の地酒や山菜などの食品が売られていて、中では蕎麦が食べれたり、好物の「とち餅」が売られていた。変わった種類のソフトクリームも売っていたように思う。ここの押し寿司(笹寿司)を買うのが楽しみだった。「ほうらい寿司」という名前らしいから、鶴来のお祭りの食べ物なんだと思うが、いつも午前中で売り切れてしまうような、人気商品だ。

ある晴れた風の強い日、この表参道の駐車場に向かった。目印の桜の大木が満開で迎えてくれた。昔の人は、加賀一の宮の駅で降りて、この表参道の長い石畳の階段を登り、白山比咩神社へ向かったのだろう。参道の木々は大きくて階段から見上げると、神々しさを感じる。
この駐車場の左手の「おはぎや」の並びに、新しい施設が誕生した。店名がよく似ていてややこしいのだが「おもてや」と言う名前だった。この新しい店は洒落た建物で、メニューボードも今風でカッコいい。とにかく、たくさんの利用客であふれている。中は食堂で、外では大判焼きを売っている。この大判焼きは、白山吉野の有名な大判焼き「山法師」の姉妹店らしい。なんでも有名なテレビ番組で紹介された大判焼きらしくて、皮が薄く、あんこがパンパンに詰まっているのが特徴だ。中のつぶあんが輝いていて、思わず買ってしまった。

新しい「おもてや」にはたくさんの人がいるのに、古い「おはぎや」の店内に人はいない。閑散としている。ライバルの出現で、「おはぎや」は分が悪いようだ、ライバルに比べると圧倒的に劣勢だ。レジのおばちゃんがぼーっと立っている。負けているからだろうか、品ぞろえの中にはジビエのカレーとか、金沢カレーも加わって、もう何が特徴なのか分からなくなっていた(笑)。古いが、なじみの店が負けそうなのを見ていて、判官びいきの気分になっていった。「おはぎや」に協力するつもりで、並んでいる中から、好きな「とち餅」と、あの「ほうらい寿司」を買うことにした。いつもなら売り切れのなのに、今日は残っている(笑)。久しぶりに食べた押し寿司は、あいかわらず素朴で、鶴来の雪解けの香りがした。がんばれ、おはぎや。

Other information