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2019年09月20日

阿波おどりで町おこし

この日は丸ノ内線の新高円寺駅から、JR高円寺駅へとつながる商店街を、ちょうど南から北へと、少し歩くことにした。17時の一斉スタートまでまだ時間があるのだが、高円寺の周辺は、どこも阿波おどり一色で活気づいていた。
高円寺にはたくさんの個性的な商店街がある(10か所くらいあるのかな)。庶民の店だけでなく若者文化の象徴のような店も多い。阿波おどりはこれらの商店街や南北に走る大きな道路を使って、8か所の演舞場を設け、それを順に回っていく本格的なもののようだ。
商店街の店の前にはたくさんの屋台が出ていて、すでに生ビールやつまみを売っている。イメージで言うと、飲食店が店頭に屋台を出しているような感じなのだが、肉屋も八百屋も、アクセサリーや古着の店も、この日だけは店頭の屋台でビールを売っている様子だ。

すでに場所取りが終わっていて、まるで公園でのお花見の光景に似ている。もちろん観るのは桜ではなく阿波おどりなので、観客はみんなビール片手に、道路にかぶりつくような光景だった。本番を前にした踊り手たちの集団が、チームごとに独特のコスチュームを着て、商店街を歩いている。スタート地点の演舞場への移動だろうか、まるで参加チームごとの「顔見せ」デモンストレーションのようだ。
JR高円寺駅は、構内が一方通行になるらしく、南口から大量の観客を吐き出していた。初心者の僕たちもにぎわう商店街の人波を泳いで、ビールを片手に、唐揚げやメンチカツを買い込み、準備完了だ。

途中でもらった立派なパンフレットによると、正式名称は「高円寺阿波おどり2019」。昭和32年に若者たちが始めた町おこしは、僕たちと同じ60年余の月日を刻んで、約1万人の踊り手と100万人の観客が織りなす夏の風物詩になったのだそうだ。
踊り手たちのチームは、連(れん)と呼ばれる。地元の連をはじめ本場徳島から参加する連も加わって、合計100以上の連が登場するようだ。そういえば街のあちこちに〇〇連と、染め抜いたのぼりなどが立っている。
17時ちょうどに、8か所の演舞場から、一斉にスタートしたようだ。終了の20時までの間に、踊り手たちは演舞場から次の演舞場へとどんどん会場を変えて踊りを披露する。観客たちの目の前を次々に連の踊り手たちが進んでいく。どの連にも個性があって、ものすごい熱気だ。

演舞場では、〇〇連と書かれた提灯を先頭にチームごとに整列し、スタートのキメポーズを整え、鉦(かね)の音とともに踊りがスタートする。チーム編成は概ね「女踊り、男踊り、鳴り物」のみっつだ。
女踊りは、浴衣姿に編み笠をかぶり下駄をはく。つま先立ちの足さばきが妙に色っぽくてカッコいい。男踊りは浴衣やハッピ姿で足袋をはき、大胆に大きく踊る。踊り手は男というより、むしろ女性も多くて、若々しく自由な感じに見える。連ごとの特徴が出るのは男踊りの方だ。
鳴り物は三味線、横笛などから、鉦(かね)や小太鼓、大太鼓など、連によって様々だが、鉦や太鼓の単純なリズムが、速くなったり強くなったりと、踊りの激しさをコントロールしているようだった。あの単純な2拍子は、なぜか日本人の魂を揺さぶるリズムなのだろう。観客にはお気に入りやご贔屓の「連」があるようで、スタート前の拍手の大小で人気が分かったりする。人気の連には追っかけまでいるらしい(笑)。
■下手な写真だが何点かスライドで(矢印をタップ)

一見、古い祭りのように見えるが、観客はみんな若者ばかりだ。まるで野外コンサートや夏フェスのような熱気と空気感に思える。そういえば屋台の売り子も、会場を支えるスタッフも、みんな若者たちだった。町おこしは新しい世代にゆだねるものなんだと、実感していた。その時代の若者たちがタスキをつないで100万人規模のイベントに育ったのだろう。年寄りの発想や行動力ではこうはいかない。
初めての経験で分からないことだらけだったが、踊り手の楽しそうな表情につられて、なぜか一体感が生まれる。そんな不思議な祭りなのは間違いない。あっという間の3時間だった。でも観ているだけで、こんなに疲れる祭りも珍しいよなぁ。レモンサワー飲みすぎたかな。

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