散歩の途中で「地下率が高い日に」
方向音痴を自覚する身としては、地下街ほど厄介なものはない。実際のところ地下鉄の駅に降りたら、どこの出口を使うのか、案内板を探してから動くことになる。そして進むにつれ、今度は案内看板の矢印に注意しながら歩く。田舎者にはつらい作業だなぁ、といつも思う。さらに地下鉄や地下街には、もとより縁がないので、とりあえず地上へ出ようとする。外に出れば何とかなるという古い経験値がそうさせるのだと思う。まるで地下の空気は薄いと勘違いしているようだ(笑)。
ある夏の日、宿泊したのは東京駅の丸の内北口の、丸の内ホテルという比較的小規模な老舗のホテルだった。客室はコンパクトだが、いいホテルなので使うのは2回目だ。泊まった11階の窓からは、東京駅が真下に見下ろせるから、新幹線をはじめ多くの電車が行き来する様を見ることができる。鉄道ファンなら喜んで何時間でも眺めていられるのだろう。僕はファンではないから関係ないが、そんな便利な場所にあるホテルだ。
この日の東京は、ひときわ暑かった。いや日本中が猛暑日だったから、まだビルの日陰がある分、丸の内のビル街は楽なのかもしれない。いつものこととはいえ、こんな暑い日に散策するのはおっくうだ。きっと2分で汗だくになる。
だから珍しく地下街を使おうと思った。地下なら猛暑が避けられる(笑)。今日は「地下率」を高くしよう。ホテルは丸の内オアゾという商業施設にあるので、この真下から丸の内の地下街に入った。ず~っと工事中だった丸の内の地下街は、工事も終わりすっきりしていた。ランチの予約時刻まで時間があるので、例によってあちこちの商業施設をブラブラすることにした。いつもと違うのは、地下部分だけの散策だ。色んな店があるのだが、ゆっくり見たのは初めてだ。快適だった。通路はともかく施設近くは冷房が効いている(笑)。
結局この日は地下街とか地下通路ばかりを狙って歩くことにした。目指すのは日比谷方向だ。でも途中で迷子になり、いったん地上へ出たのだが、知らない景色で、なぜかベンチの横にリーチ・マイケルのブロンズ像が立っていた。似てはいないのだがタイトルにそう書いてある(笑)。そのリーチ君が、その後、あんなに話題の人物、いや日本一のチームキャプテンになるとは、思ってもみなかった。
その後も地下に降りたり、地上に出たりしながら、知らない裏通りの散策を楽しんでいた。明治生命記念館?という建物が重要文化財として保存されていた。その昔、GHQが接収して司令部として使っていたのだそうだ。正面に出て「ああ、この建物か」などと再発見していた。なるほど、地上にいるだけでは見過ごしたり、知ることのない場所もあるんだな、と感心していた。でも帰り道は分からないから、地下鉄の入り口を探さなくては。