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2019年12月27日

ただ食べたくて「讃岐うどんのブログ」

夏のある日のこと、山側環状の移動の最中に昼ごはんを食べることにした。あまり時間もないので、有名な讃岐うどんのチェーン店に入った。間違いなくテレビCMに影響されたのだ。この店は繁盛店らしく、駐車場には誘導員のオジサンがいるのだが、やる気の見えないオジサンで、何の誘導もしてくれない(笑)。時刻のせいか、客席は空いていて、オーダーの行列も短かった。しばらくぶりなので、注文の仕方は忘れてしまっていたが、前の若者たちを観察しながら思い出すことにした(笑)。何やら写真でお勧め商品を訴求している。とても旨そうなので、それを注文することにした。正確な名前は忘れたが、肉玉のぶっかけだ。それに海老天と鶏天を追加で選ぶことにした。
汚い店だった。床もテーブルも、トイレもひどかった。そして何よりドブ臭い(笑)。繁盛しているのはいいが、もっとキレイならいいのになぁ。肝心のうどんは、ただ太くて硬いだけで、讃岐独特のツルツルやモチモチとは程遠い。本場の讃岐うどんは決して太くはない。太いことをウリにするのは勝手だが、コシがあることと硬いことは、似ているが全くの別物だ。お店で毎日、粉から作る、というCMはウソじゃないのだろうし、チェーンだからダメとも思わないが、今日のこれはひどいよなぁ。

秋のある日のこと、懲りずに讃岐うどんが食べたくなって、今度は高柳にある「Kむぎ」という、カウンターだけの小さなうどん店へ向かった。7~8年前のことだろうか、初めて訪ねたときに、本物だ、と驚いた。だしは少し違うが、麺は本場の讃岐で食べたあのうどんだった。以来「旨いうどん」が食べたくなると、ときどき行くようになった店だ。始めて行った直後、興味を持った僕は、気になって、この店のホームページを探した。見つけたホームページには、ブログがついていた。いかついオヤジ(失礼)とは不似合いな、優しい文章だったから、奥さんが書いているのかな?と一瞬思ったのだが、内容からすると彼(店主)の作だと確信した。
最初の方から読み進めると、まじめな「うどん」づくりへの情熱が、延々とつづられていた。だしの材料や配合のこと、使う小麦粉、仕込み水温や水へのこだわり、練りから熟成、打ち方や切り方、ボイルの工夫・・・毎回毎回ていねいに、手の内をさらして懸命に工夫を繰り返す様子が書かれていた。最初のうちは毎週1回、その後は月に1~2回のペースで、彼の「うどん愛」が延々と続いている。下手なノウハウ本より、リアルで工夫があって応援したくなる内容だった。

当たり前だが「うどん」は「麺」と「だし」の組み合わせだ。こんなことを言ってはプロに叱られるだろうが、素人の僕が個人的な好みで言えば「麺」は讃岐、「だし」は大阪や博多のやつが旨いと思う。彼によれば、ここの「麺」は讃岐の製法で、そして「だし」は地元の人に合わせたものらしい。だから、彼はそれを「金沢風」と呼んでいるようだ。ブログには「だし」に、あの「じろ飴」を使い、独特の甘みをだしていることが書かれている。さらに場違いなオリジナルうどんとして、タイ風カレーや担々麺うどんまで出している。きっと若い女性狙いなのだろう(笑)。どうやら、ただ純粋に「旨いうどん」や「現代の地元の人が食べたいうどん」を作りたくて一所懸命なのだ。そんな真面目な態度が貫かれている。
今日食べたのは天ぷらうどんなのだが、相変わらず、注文してから茹で始めるので、約15分はかかってしまう(笑)。そして水洗いして、再び温め、熱いだしを注ぐ。大きな海老の天ぷらがタイミングよく一緒に出てくる。丼を持ち上げてだしをすすり、透明で角が立ったうどんを一気にすする。やっぱり旨いなぁ。店主は、カウンターの奥でうどん(麺)を打っていた。客席には目もくれず、ず~っと麺とにらめっこしていた(笑)。帰りがけに、久しぶりに食べたけど、やっぱり旨いうどんだね、と店主に声をかけた。いかつい顔に少しだけ笑顔が見えた。

Kむぎ udon-komugi.jp

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