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2020年01月17日

おせちが怖い

明日の朝の予約は何時にしたんだっけ?、忘れてしまったからドタバタしたあげく、夜のイベントに参加する際に、宿のスタッフに確認することにした。忘れたのは朝食の時間だ(笑)。この宿の朝食は、いわゆるルームサービスで、客室にスタッフが朝食を運び、テーブルをセッティングしてくれる。まぁぜいたくな朝を楽しむことができるスタイルだ。しかも、2020年の元旦の朝だ。だから、いつもと違って少し身なりを整えて、しっかりとした新年の朝を迎えたい。その1時間ほど前に起きれば、身支度も、ちょっとした部屋の整頓も間に合うだろう(笑)。オーダーしたのは「元日特別朝食・祝い重」という、いかめしい名前の朝食だ。

祝い重は、簡単にいえば「雑煮」と「おせち」だった(笑)。雑煮は、鰹だしのすましに、鶏肉、青菜、角餅という、おそらく関東風のスタイルで、香り高くとても美味しい。昨年は京都風の白味噌仕立てだったので、どちらも地元のそれと違っていて美味しくてぜいたくな気分になる。おせちは、いずれも定番料理ばかりだが、金目鯛の幽庵焼きはやはり関東ならではの料理だと思う。去年の京都は鯛の幽庵焼きだったし、おととしの信州は、なぜか鰤だった(笑)ことを思い出していた。

年末になるとデパ地下には「おせち」売り場が設置され、サンプルやカタログが山積みされる。何年かのあいだ、まるで正月の「おみくじ」のような気分で「運だめし」していた時期もある。しかし「今年のおせちは失敗だったな」、そんな記憶の方がはるかに多い。
毎年毎年12月になると、約束があるわけではないのだが、馴染みの店とか、シェフの個人的なお願いとして「おせち」を買ってほしいなぁ、という「圧」を感じながら過ごすことになる(笑)。クリスマスケーキはもはや下り坂だが、おせちは洋も和も、いまだに絶好調だからだ。
おせちは怖い。中には、料理人が魂を込めるおせちもある。ある年「私が命懸けで作るので」と料理人から真剣に言われたことがある。僕のために命を懸けられても困るのだが、熱意に押されて買うことにした。大雪の大晦日にその店の女将が届けてくれた彼のおせちは、確かに凄かった(値段も凄かった)。そして、一度買うと、今年もぜひ、と言われるようになる。断れずに買ってしまう自分にも自信がなくて、だから年末になると行きたかった店に行けなくなる(笑)。何度も言うが、おせちが怖くなるのだ。

断り始めたころは、「年末年始は二人しかいないから、食べれない」という理由を使っていたが、最近は立派な小型おせちも開発されて、そんな理由が使えなくなった(笑)。だから断るのが煩わしくて、ついには「年末年始は不在だから」という、断り文句を使うようになった。
そしてウソはつけないから、怖いおせちから逃げるように、ここ数年は、別の場所で年末年始を過ごすことになった。そして、そんな旅にハマった。年越し蕎麦にも、宿の正月の料理にも、その土地の風習や歴史が詰まっていて、食べるたびに地理や歴史を勉強しているみたいな気分になる(笑)。
今年は4年ぶりに東京での年越しだった。年末年始にかけて東京を歩くと、普段は感じない空気感に包まれる。東京の正月には江戸情緒が、今も貫かれているんだなぁ。そんなことを実感することができる。

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