最近は、にほんじん
みんなと会えるようになったら、また「日本酒の会」を開こうと思っている。だから、専門店に行くと、次は何にしようか、これは面白いから「会」に出してみようか。などと考えることになる。とはいえ、最近の日本酒は、新商品とか限定品、季節品が圧倒的に多くて、そうそう簡単に決められるわけでもない。定番は減って「今しか飲めない酒」が多くなったのだ。まぁ個人的には面白いし楽しいから、ついついあれこれ買いたくなる(笑)。
これは、専門店の策略ではなく、業界全体のトレンドなのだ。若い経営者、SDGs、農業革新、マーケティング、業界を取り巻く環境の変化が著しいからだ。それは若い世代には大事なキーワードばかりだ。だからそこに新しい日本酒の姿が、大げさに言えば「新しい日本の文化」になっていくのかもしれない。
そんな「今の酒」の多くは四合瓶で売られるようになった。ワインとほぼ同じサイズだ。店の冷蔵庫に並ぶラベルのデザインも多彩になった。そして「それぞれの違い」が大事になった。ヨーロッパや北米など「世界」を視野に入れた日本酒も多くなった。僕のような「昔気質のファン」は、そんな変化に慣れていかねばならない。
とある酒の席で、日本酒好きの友人の一人が「酒は大関こころいき」という曲を気持ちよさそうに歌い、聴かせてくれたことがある。あのK林亜星さんが作り、K藤登紀子さんが歌ったCMソングなのだが、実はそのフルコーラスの歌詞が素晴らしくて驚かされた。T宮二郎さんの顔が浮かぶから、もうずいぶん昔の歌だ。昔の日本人の心を打つような曲で、昔の日本酒好きに支持されたのだと思うが、いま聴いても、いいなぁと思ったりする。やはり僕は古いタイプの日本人なのだ。
さて、そんな僕が日本酒に興味を持ったころは、というより、ついこの前まで、日本酒は一升瓶で買うものだった。そもそも、一升瓶は大きいので、冷蔵庫に入れるのはしんどい。昔の安い酒ならば、そのまま室温で放置してもいいのだが、最近の日本酒は品質維持のため冷蔵庫が必須なのだ。わが家の場合は、一升瓶を冷蔵庫の野菜室に横に寝かせて入れていた。すると、ときおり「栓」がゆるんで外れ、気づくと野菜が酒の海の中で泳いでいたりした(笑)。長い付き合いだから、そんな失敗は1度や2度ではない。微発砲の生酒なんかは要注意だ。ポ~ンと音を立てて栓が抜けることがある。
この問題は、四合瓶には関係ない。ワインを冷やすときのように冷蔵庫にも簡単に入る。ワインみたい横にする必要もないから、栓が外れても大丈夫だ。だから最近は、野菜室に立ったままの四合瓶が、いつも「2本」入るようになった。一升瓶で1種類より、四合瓶で2種類の方が楽しいからだ。量は少々減ってしまうが、同じ値段で2本買える。支払額はあまり代わらないから反対もされない(笑)。僕が紹介する酒の写真がいつも2本なのは、そんなことなのだ。
一緒に買う2本には何の関係性もない。酒屋の冷蔵庫をあちこち探して、気にいったやつを選ぶだけだ。夕食が終わると、テーブルに2本を並べる。使う盃は一番小さいやつを二つ用意する。少量入れて、まぁ利き酒するように味わうのだ。全く違う2本の酒を、ひと口ずつ交互に飲むのだが、これが意外に楽しい。1種類を飲むより、その酒の特徴がよく分かる。飲み切るのも2本同時だから、買うときも2本だ。まぁ大関を買うことはないが、日本人に生まれてよかったなぁ、と思う瞬間でもある(笑)。
あぁ、そうだよ。タイトルの「にほんじん」ていうのは、日本人と「2本人」をもじったんだ。まぁオヤジギャグのつもりだったけど、書いてしまうと、それなりに、結構、やっぱり、恥ずかしいね。