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2020年03月27日

ホテルの時間「今のところ最強のホテル」

33階の客室のドアを開けると、奥のガラス窓一面に東京の大都会の眺望が広がっていた。左手にはスカイツリーがある。本当なら5㎞ほどの距離なのだろうが、すぐそこにあるように見える。窓に近づいて真下を見下ろすと、さっきまで歩いていたコレド室町の横路の提灯や福徳神社の赤い鳥居が、小さいミニチュアのように見えた。仕事がてらとはいえ、窓際のカウチソファーに寝転んで、コーヒーを飲み、部屋の中を眺めると、なぜか懐かしい気分で、心が優しくなるのがわかる。やっぱり気持ちいい。

この日の日本橋は人だかりだった。ちょうど前日にオープンしたばかりの「室町テラス」という商業施設は、ひときわ多くの利用客で沸いていた。このホテルは、日本橋三井タワーという、日本橋のランドマークのような高層ビルの30~38階に入居している。あの高級フルーツの千疋屋(せんびきや)本店が1階に入っているビルだ。表通りから少し入ったところに正面の車寄せがある。いつもなら表通りの喧騒から離れた静かな小路なのだが、室町テラスの正面入り口が、小路の向かい側にできたこともあって、とても賑わっていた。

ホテルの名前はMンダリンオリエンタル東京、僕にとっては今のところ最強のホテルだ。ミシュランをはじめとする様々な世界の格付け機構が最高評価を付与する、まさにベストオブベストのホテルで、泊まってみると素人の僕でも、その良さを実感できる。全体設備も、客室も、眺望も、サービスも、雰囲気も断トツにいい。
館内にレストランはいくつもある(たしか12のレストラン)のだが、どれも素晴らしい店ばかりだ。もちろん星付きの一流レストランもあるのだが、中には、わずか9席の寿司、8席のタパスバー、カウンター8席のナポリピッツァなどもある。極め付きはワインセラーの中の1組レストランだ。大きくても小さくても、それぞれが個性的で楽しく、目移りする。
何度か滞在で使った記憶では、良いのはもちろんだが、ダメだと思った経験が一度もない。本当にNGが少ないホテルだと思う。決して褒めすぎではなくホントの話だ。東京の別の一流ホテルで働くホテルマンが、モデルとしてライバルとしてリスペクトする。そんなホテルなのだそうだ。

1階の車寄せから入ると、大きな吹き抜けのレセプションがある。そこで名前を告げると、対応するベルスタッフが自分の名前を述べ、38階(最上階)のフロントまで、一緒にエスコートしてくれる。エスコートのエレベーターの中で、僕が宿泊するのは、今回が4回目だと、スタッフから教えてもらった(笑)。利用履歴を上手に使った会話だ。リピーター扱いされると気分はよくなる。そういえば、かれこれ3~4年は来ていないんだ、などと会話が弾んでしまう。
38階のフロントデスクは、大きなガラス窓を背にしていて、東京タワーが見える。フロント手続きは、とてもシンプルで短時間だ。単に雑談しながら簡単に終わった。リピーターへの対応は抜群だと感じた。後から分かることだが、過去の利用履歴は、館内のレストランの履歴までカバーしているようだ。好みの飲み物や朝の新聞など、かつてリクエストしたものが、当たり前のように用意されている。この最強のホテルは、そんな個人の小さな出来事を、データ化するだけでなく、当たり前のように使っているように思えてしまう。

この日のウエルカムスイーツは大きな梨だった。下の千疋屋のやつなのかなぁ、確かに美味しい。でも、驚いたのは冷たい烏龍茶のほうだ。口に含んだだけで、素晴らしい香りが鼻腔に広がる。旨い。オリジナル品らしいが、1階のホテルショップで売っているようだ。そろそろ、出かけてみようか。室町テラスの誠品生活は台湾初の書店だが、フツーの本屋とは確かに違いそうだ。少し歩いてみたい。
ちなみに、このホテルで「ベビーカー」を借りることができる。独特のデザインで、とても軽くて、最高のサスペンションが装備されているらしい(笑)。宿泊客が望めば用意するようだ。借りれば、きっとこれも履歴に加わるんだろうな。スタッフたちの小さな努力や対応の記録が地道に蓄積されていくのだろう。最強のホテルは、こうやってファンを離さない存在になっていく。きっとこれからも最強を続けていくのだろう。
Mンダリンオリエンタル東京 mandarinoriental.co.jp/tokyo

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