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2020年04月17日

ただ食べたくて「不機嫌なフレンチ」

カウンター席で食べるのが好きだ。何より気軽な感じだし、身近に調理やキッチンのライブ感を味わいたい。できれば料理人と話もしたい。この店にもカウンター席があって、希望するのだが、スタッフは、さかんに奥のテーブル席を薦める。前回も今回もそうだから、どうやら店側はカウンターを使いたくないのかもしれない。でも、そんなことはお構いなしだ、さっさと自らカウンターに座った(笑)。
キッチンの中には2人の料理人がいるのだが、カウンターの僕たちに笑顔を向けるわけではない。けっして怒っているわけではなさそうだが、不機嫌そうでウエルカムな感じはしない。ああ、そうだった。と前回のときのことを思い出していた。前回もそんな第一印象だったっけ。

初めて使ったのは1年くらい前のことだ。下手な手書き風の折込チラシで、自宅の近くに新しいレストランがオープンしたことを知った。どうやらビストロ(フレンチ)らしい。でも、チラシの印象が悪くて、全くそそられなかった。
ある日、なじみのイタリアンで食事をしながら、いつのもようにオーナーシェフと話すうちに、その店(フレンチ)の話題になった。彼にとってはライバル店の出現らしい。忙しくて行けそうにないから、替わりに偵察に行ってよ、とシェフに頼まれ、しぶしぶ敵情視察に出かけることにした(笑)。僕にとっては敵でもライバルでもないのになぁ。

敵情視察のそのときもカウンターを希望し、不機嫌そうに迎えられたのだった。しかも僕がアレコレ話しかけるから、店にとっては、馴れ馴れしいいオヤジとか、面倒くさそうな客に思えたことだろう(笑)。利用客は少ない夜のことだったが、オープンしたばかりで、不慣れな接客だった。しかし、出てきた料理には驚きがあった。
前菜は、大きな皿を大胆に使って、たくさんの小さな冷菜や、細かな野菜などをふんだんに使って飾られていて、見事な出来だった。しかも、大きな松茸を軽くあぶって、大胆に乗っけてある(笑)。原価無視の、やけくそのような前菜だった(笑)。そして魚料理は、エイヒレのムニエル。エイヒレとは言っても、オジサンの酒のつまみのあれとは違って、ちゃんとした魚の料理だ。札幌の有名な三ツ星レストラン「M」の代表メニューだから、きっと、それをリスペクトしているのだろう。
後日、くだんのイタリアンで敵情視察の報告会を開いた(笑)。けっこう料理は良かったよ。勉強している感じで頑張ってた。と話を盛ったのがいけなかった。イタリアンのシェフはむくれて不機嫌になった(笑)。

一年ぶりのこの日、そんな不機嫌の応酬(笑)を思い出しながら、あの「やけくそ前菜」を少し期待して注文してみた。やはり松茸は乗ってなかった。あれはオープン時の広告替わりだったのだろう。料理人は、今日も無表情で不機嫌そうな感じだったのだが、帰りがけの僕たちに小さな笑顔を見せた。一年経って、すこし余裕ができたのかもしれない。

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