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2020年07月10日

とんこつの記憶

ふと、コンビニに寄ろうと思った。遅い昼メシを探そう。特に希望はないが、何でもいいわけではない。このコンビニは、在庫管理が徹底しているのか、こんな中途半端な時間には、食べたいものがほとんどない(笑)。残っている弁当や丼は、陳列量も少なくて「売れ残り」に見えてしまう。まぁ、文句を飲み込んで、何となく「チルドのラーメン」を買うことにした。豚骨スープで人気の某有名ラーメン店とコラボしている商品だ。僕が「とんこつ」スープのラーメンを買うなんて、とても珍しい。実は、あの匂いがダメなのだ。そんな僕でも、この人気店のラーメンは、そんな苦手の「臭い」が抑えられていて、僕でも食べれることだけは知っていた。今日は、豚骨ラーメンの「練習」だ。
ラーメンは、塩、醤油、味噌しか知らないまま生きてきた。どこかの食堂の中華そばしか知らない少年にとって、中学生の時に出会った8番らーめんは衝撃的だった。いまでも塩が一番だ。そして、個人的には北海道(特に札幌)と縁もあったし、札幌ラーメン店でバイトしていたことも、大きいと思う。だから、とんこつスープがラーメン業界を席捲している頃も、まったく興味がなかったのは間違いない。

そんな僕が、初めて博多に滞在したとき、せっかくだからご当地グルメを体験したいと思っていた。水炊き、もつ鍋、焚き餃子、鶏皮串など、どれも興味深かった。もちろん夕食の後は屋台に行こう。どこかの屋台に入って地元の人と交流し「博多ラーメン」を食べようと思っていた。キャナルシティーのホテルに荷物を置いて、博多の街を歩くことにした。昼だから、まず天神エリアへ向かった。ホテルの前の運河?を渡ると、そこは公園で、屋台の準備がポツポツ始まっていた。そこは有名な屋台ストリートだという。
さらに進んで、繁華街をアチコチ歩くとき、換気扇から吐き出される、その強烈な「臭い」の洗礼を受けた。初めて体験した、あの「豚骨」の臭いだった。歩くたびに、そんな臭いに出会ってしまう。みんな夜の準備のために豚骨スープの仕込みをしているのだろうか、あまりの未体験の異臭に思わず顔をしかめた(笑)。今から思えば、博多の人には失礼な態度だったと反省するのだが、当時の僕には、ご当地グルメが全部「とんこつ風味」に思えてきて、腰が引けてしまった(笑)。まるで「とんこつ」が天敵に思えてしまったのだ。

その晩、どこで何を食べたのか、記憶はない。ただ、夕食の後に歩いた中州エリアは、想像より地味だった記憶だし、あの運河の横の屋台街のあたりには「とんこつ」の臭いが充満していて、とても楽しめなかった。テンションは最低だったのだ。
後年、とんこつスープは日本中に広がり、博多的な商品の数々は、現代を代表する居酒屋メニューになっていった。だから、もちろん僕も、今では当たり前のように食べるし、身近な味として受け止めている。でも博多ラーメンだけは、いまだに苦手だ。現在のラーメンブームを支える「スープ」には、豚骨が組み合わされたものが多い。だから僕は、いまでもラーメンのトレンドに乗れないままだ(笑)。
久しぶりに食べた今日のラーメンは、とても旨かった。固めの細麺も、きくらげの食感も楽しい。そしてスープは、なめらかで美味しい。でも、あの時の強烈な臭いを思い出してしまい、スープは残してしまう。好きになるのは、まだ先だ。またこんど練習だな。

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